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カーテンない家を「全裸」でうろつく女性、外から見えてしまっても「のぞき」になる?
写真はイメージです(PanKR / PIXTA)

カーテンない家を「全裸」でうろつく女性、外から見えてしまっても「のぞき」になる?

関東地方で暮らす70代男性には最近、悩みがあります。隣家の女性が、彼女の家の中を全裸、あるいはパンツ一丁で過ごしているそうなのです。

「別に家の中でどんな格好をしようが良いと思うのですが、困るのは、隣の家には窓にカーテンがないことなんです」と話す男性。自宅の窓と隣家の窓が近いため、カーテンを開けると「嫌でも隣の家の中が見えてしまう」そうです。

必然的に裸でうろつく女性の姿も見えてしまうため、困った男性は隣家のポストに「お互いのプライバシーを守るため、窓にカーテンをつけていただけないでしょうか」という手紙を投函したそうです。

しかし、隣家にカーテンがつけられた気配はありません。男性は「もし今後も、見えてしまった場合には、こちらがのぞきで逮捕されてしまうのでは…」と心配しています。

はたして、男性が罪に問われることはあるのでしょうか。逆に隣家の女性に法的な責任はないのでしょうか。鐘ケ江啓司弁護士に聞きました。

●隣家の女性を「公然わいせつ罪」で立件できるか?

――男性が隣の家を窓からのぞいた場合、罪に問われる可能性はありますか?

男性の話の内容からすれば、のぞき見にあたらないでしょう。

「『のぞき見る』とは、物陰や隙間などからこっそり見ることをいう。何の作為もしないのに、 自然に見えてしまったような場合は、 『のぞき見る』には当たらない」(伊藤榮樹・勝丸允啓『軽犯罪法 新装第2版』(立花書房)とされています。迷惑防止条例ではのぞき見を規制しているところもありますが、同様に解釈されるでしょう。

軽犯罪法23条には、「正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」とあります。

また、この「ひそかに」の要件も問題になります。「『ひそかに』とは、見られないことの利益を有する者に知られないようにすることをいう。」(同書)とされていますが、ご投稿の話では見えることを伝えて注意しています。

現実的には、撮影でもしない限り問題になることはないでしょう。

――カーテンをせず、裸でうろつく隣家の女性が罪に問われる可能性は?

理屈上は、全裸については公然わいせつとされる可能性はあります。公然わいせつは「公然」と「わいせつ」な行為をすることが要件ですが、「屋内であっても、窓や戸をすべて開放し、近隣の人の目に触れるような状態にあれば、公然性を有するといえよう」(藤永幸治編集代表『シリーズ捜査実務全書9 風俗・性犯罪(3版)』(東京法令出版)と解されています。

半裸の場合、身体露出の罪(軽犯罪法)も理屈上はありえます。公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり、 ももその他身体の一部をみだりに露出することが要件ですが、公衆の目に触れる場所については、「私人の居宅内であっても、容易に通行人の目に触れるような場所は、 これに当たるものといえる」(前掲『軽犯罪法 新装第2版』)。

実際に刑事事件として立件するのは難しい場合が多いと思いますが、もしあまり度重なるようでしたら、一度、警察に相談に行かれてもよいかもしれません。

プロフィール

鐘ケ江 啓司
鐘ケ江 啓司(かねがえ けいじ)弁護士 薬院法律事務所
刑事弁護、中小企業法務(労働問題、知的財産権問題、契約トラブル等)、交通事故、借地借家、相続・遺言、後見、離婚、犯罪被害者支援、等々幅広い事件を取り扱っている。執務のかたわら、条例による盗撮規制の研究をしており、全国47都道府県の警察本部が作成した迷惑行為防止条例の逐条解説、改正経緯の資料等を収集している。

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