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「5回も堕胎したのに...」不倫に溺れた29歳女性、別れた後に「慰謝料600万円」される。法的には?
写真はイメージです(Pangaea / PIXTA)

「5回も堕胎したのに...」不倫に溺れた29歳女性、別れた後に「慰謝料600万円」される。法的には?

「不倫相手の妻から、600万円の慰謝料請求をされました。減額はできないのでしょうか」。29歳の女性会社員から、弁護士ドットコムにこのような相談が寄せられました。

相談者は不倫相手である男性の「結婚する」という言葉を信じ、約6年間にわたって関係を続けてきました。男性は妻と何度か別居していましたが、結局離婚することはなく、今は同居して夫婦関係を続けているようです。

そんな男性とは、1年前に「手切れ金200万円」をもらって別れています。しかしその後、男性の妻から慰謝料600万円を請求されました。

相談者は不倫中に男性の子を5度も堕胎。心身ともに大きなダメージを負ったことから、すでに「制裁」を受けたと考えています。そのため、できるだけ金銭的な要求には応じたいとは思っているものの、600万円という金額には納得いかない様子です。

堕胎によるダメージが大きかったことを理由に、慰謝料の減額を交渉することは可能なのでしょうか。理崎智英弁護士の解説をお届けします。

●慰謝料に「制裁」の有無は影響しない

ーー相談者は「制裁」を受けていることを理由に慰謝料の減額したいと考えています。このような理由で慰謝料は減額できるのでしょうか。

不貞行為の慰謝料は、あくまでも「不貞相手の配偶者が、不貞相手及び配偶者の不貞行為によって、どの程度の苦痛を被ったか」という観点から、その金額が決定されます。

具体的には、婚姻関係の長短、不貞期間の長短、不貞行為の回数、不貞行為の態様等を考慮して慰謝料が決定されることになります。

つまり、不貞行為の加害者である相談者が、すでに何らかの「制裁」を受けているとしても、それによって不倫相手の配偶者が精神的に慰められるわけではありません。

相談者が心身ともにダメージを受けていたのだとしても、そのことを理由に慰謝料が減額されることはないでしょう。

なお、相談者が受けた精神的なダメージについては、別途、不貞相手の男性に対して損害賠償を請求することができる可能性があります。

●慰謝料600万円は交渉の余地あり

ーー相談者が請求された「600万円」という慰謝料額は高額といえるのでしょうか。

不貞行為が原因で離婚する場合としない場合とでは、当然、離婚する場合の方が慰謝料の金額は大きくなります。最近の裁判例では、離婚する場合の慰謝料の相場は約200~250万円であり、離婚しない場合の慰謝料の相場は約80~100万円となっています。

請求された600万円という金額は、この相場からいっても多額ですので、交渉によって減額する余地は充分にあります。

なお、男性が妻と何度か別居しているとすると、男性と妻との婚姻関係が破たんしているといえるかもしれませんので、その場合には、女性は妻に対して慰謝料の支払義務を負いません。

また、不貞行為は一人でおこなうものではありません。相談者に加えて、配偶者である夫も妻に対して慰謝料の支払義務を負います。

そして、相談者が不貞相手の妻に対して慰謝料を全額支払った場合には、相談者は、不貞相手である男性に対して、原則として、「(相談者が)支払った金額の半分を支払え」と要求することができます。これを「求償権」の行使といいます。

ーー負担する金額はどのような場合でも半分になるのでしょうか。

原則としては「半分ずつ」となりますが、責任の重さから個々のケースで異なります。

今回のケースでは、不貞相手の男性が相談者に対して将来の結婚をにおわせて不貞関係を継続していたこと、相談者が不貞相手の男性の子どもを5回も堕胎していることなどから、不貞行為についての責任は、相談者よりも不貞相手の男性の方が大きいといえます。

そこで相談者は、不貞相手の男性に対して、相談者が支払った金額の半分よりも多い金額を支払うよう求めることが可能だと考えます。

(弁護士ドットコムライフ)

プロフィール

理崎 智英
理崎 智英(りざき ともひで)弁護士 高島総合法律事務所
一橋大学法学部卒。平成22年弁護士登録。東京弁護士会所属。弁護士登録時から離婚・男女問題の案件を数多く手掛ける。

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