大手飲食チェーン「かつや」で働くアルバイト従業員が8月5日、運営会社(東京都千代田区)を相手取り、休業分の給与補償などをもとめて東京地裁に労働審判を申し立てた。
昨年のコロナ禍において、感染不安を払拭できない状況から出勤拒否(ボイコット)をしたところ、「会社から制裁的な休業やシフトカットを受けた」と主張している。
●コロナでボイコット
申立人は、都内の店舗で働く男性Aさん(40代)だ。2013年から雇用され、7年以上同じ店舗で働いている。2019年10月、無期雇用に転換した。
申立人側によれば、昨年4月25日、Aさんを含むアルバイトらは出勤拒否(ボイコット)を起こした。当時、1度目の緊急事態宣言が出された状況で、37度以上の発熱のある社員が複数回出勤していたため、感染への不安があったからだと説明する。
宣言の期限(5月6日)までの出勤拒否を予定していたアルバイトらに、会社は5月31日までの休業と、6月以降のシフトカットを伝えたという。その結果、月に200時間超あったAさんの労働時間は120時間程度にまで減らされ、収入も激減したという。
なお、このボイコットに関しては、申立人側と会社側に認識の相違があるという。
会社側はシフトカットについて、ボイコット期間中に、別のバイトを雇ったことなどを理由としているそうだが、制裁的な対応として受けとったAさんを含むアルバイトらは、飲食店ユニオンに加入のうえ、団体交渉をおこなってきた。
シフトの回復、休業と現在まで続くシフトカットに対する給与補償を求めたところ、応じられなかったという。
●労働審判を申し立てた
申立人側は、ボイコットは従業員や客への感染対策のための行為であり、正当な理由があると主張している。
労働審判では、シフト制とはいえ、月〜金の週5日、午前11時〜24時まで、労働日と時間が固定されている状態だったことの確認をもとめる(地位確認請求)。
そのうえで、店舗閉鎖した4月25日以降の休業分やシフトカット分の未払い賃金、報復的なシフトカットによる精神的な苦痛に対する慰謝料など、計約540万円を請求する。
店舗閉鎖や休業を申し出たのはAさん側だが、本来的にはそのような感染対策をおこなう責任は会社側にあると主張している。
●バイト男性「店に貢献してきた自負がある」
7年間、昇給なしの時給1050円で働き続けてきたAさんは「店舗従業員のなかでは勤続年数も長く、店の営業に貢献してきた自負もあります。しかし、ボイコットを主導したとする報復措置で、大幅にシフトカットされました。
給料は少ないときで従前の3分の1。現在も半分程度に減らされています。かつやの仕事だけで生計を立てているので、シフトカットは死活問題です。住居確保給付金、緊急小口資金、総合支援資金、使える制度はフル活用して、なんとか生活を維持してきました」と話す。
Aさんの代理人をつとめる川口智也弁護士は「シフトを休業前に回復させたい。シフト削減をおそれて、会社に何も言えなくなる労働者が少なくない」と述べた。
●かつや「労働審判の場でも話し合いを続けていく」
かつや社は弁護士ドットコムニュースの取材に「本件についてはこれまでも話し合いを続けてまいりました。今後は労働審判において裁判官をまじえながら、話し合いを継続してまいります」とコメントした。