海外での勤務中に死亡した会社員の遺族が、国内での勤務と同じように労災保険を適用するよう求めた裁判で、東京高等裁判所(杉原則彦裁判長)は4月27日、労災保険を給付しないとする労働基準監督署の決定を取り消す判決を言い渡した。
東京に本社を置く運送会社の上海支店に勤務していた2010年当時、45歳の男性が、急性心筋梗塞のため亡くなった。遺族が2012年に労災申請したが、東京の中央労働基準監督署は労災保険を給付しないとする決定を出した。
遺族は、この決定の取り消しを求める訴えを起こしていた。裁判では男性の所属が海外だったかどうかが争われ、1審は、男性の所属は海外だったとしたうえで、海外の社員を労災保険に加入させる特別の手続きも取られていなかったとして、遺族の訴えを退けていた。
東京高裁は、「国外での勤務実態を踏まえて、どのような労働関係にあるのか判断すべき」、という基準を示したうえで、死亡した男性は、「国内の事業場に所属し、当該事業場の使用者の指揮命令に従い勤務する労働者である海外出張者に当たる」として、「労災保険法上の保険給付の対象から除外することは相当ではない」と判断した。
遺族の代理人をつとめる川人博弁護士は逆転勝訴のポイントについて、「一審判決は、被災者が誰の指揮命令に基づき働いていたかという最大の論点をあいまいにして原告敗訴とした。控訴審では、被災者が東京営業所の指揮命令に基づき、仕事をしていたことを具体的に詳細に立証した。この控訴人(一審原告)の主張立証が逆転判決につながった」
また、今後の手続きについて、「被控訴人(国)側が、上告ないし上告受理申立をせず、本件が確定した場合には、中央労働基準監督署が過重労働と死亡原因との関係につき判断し、業務上死亡かどうかを決定することになる」と語った。