7月28日午後4時27分ごろ、熊本地方を震源とする地震があり、最大震度7を観測した。気象庁によると、地震の規模はマグニチュード(M)7.1。
熊本城の一部が崩れ、嘉島町のイオンモールで爆発事故が発生し、死傷者が出ている。
「令和8年熊本地震」と名付けられた今回の地震を受け、XなどのSNSには、人為的に引き起こされた「人工地震だ」とする科学的根拠のない投稿が相次いだ。
「上空に強力な電磁波をかけている」「震源の深さ10kmの浅いものは人工地震を疑ってよい」「雲が証拠だ」などのほか、高市首相の投稿に返信する形で、政府が引き起こしたと主張する投稿も拡散している。
こうした「人工地震」説について、公益社団法人日本地震学会は今年3月に公開したFAQで、人為的に地震を起こすことは「現実的ではない」と否定している。
●学会「人為的にM7級を起こすのは現実的ではない」
日本地震学会のFAQ「4-13. 大きな地震を人為的に起こして被害を生じさせることはできるか?」(2026年3月作成)は、「秘密裏に、人為的に大きな地震を起こして、特定の地域に被害を生じさせることはできますか?」という問いに答えている。
学会は、地表に大きな被害をもたらすM7以上の地震を想定したうえで、「このような地震を人為的に起こすのは現実的ではありません」と結論づけ、その理由として次の3点を挙げている。
(1)深さ10km以上の孔(あな)を掘るためには、多くの時間がかかり、巨大な経費が必要です。
(2)そのような深さの孔を秘密裏に掘るのは困難です。
(3)M7以上の規模の地震を起こすエネルギーを発生させるのが困難です。
●「掘れない」「隠せない」「パワーが足りない」
学会は、それぞれの理由について補足している。
まず「深さ10㎞以上の孔を掘るために多くの時間と経費がかかります。地表に被害をもたらし得る地震として、マグニチュード(M)7以上の地震を考えると、この規模の地震に関わる断層は一般に深さ数kmから十数km程度の領域に及ぶことが多く、深部へ到達する掘削が必要になります」と指摘する。
学会によると、人類が掘った最深の孔として知られるのは旧ソ連のコラ半島超深度掘削孔で、その深さは約12.3km。約20年かけて掘られたが、地中が高温で掘削の継続が技術的に困難となり、1992年に計画は停止されたという。
ドイツの超深度掘削孔(KTB)は1990年代に約9.1kmまで到達し、費用は当時の為替レートで数百億円規模(約350〜480億円)だったという。
また、深さ10km以上の孔を掘るには高さ数十メートルのやぐら(海上ならそうしたやぐらを持つ船)が必要になり、それが半年以上、場合によっては数十年にわたって特定の場所に立ち続けることになるため、学会は「このような状況を隠し続けることは困難です」としている。
さらに、大地震を起こすエネルギーは膨大で、それを用意するのも困難だとする。学会によると、火薬を用いて生じた最大クラスの人工地震は、1947年にイギリス海軍が6700トンの火薬を用いたもので、規模はM4.6と推定されている。
核実験によるものでも、1971年に米アラスカ州でTNT火薬換算500万トン近い核弾頭を用いた例でM6.9とされ、ようやくM7クラスに相当する。学会は、深さ10km以深の孔の底でこうした核爆発を起こす技術は確立されていないとしたうえで、これだけの核弾頭を秘密裏に準備するのも「極めて困難と考えられます」と指摘している。
●「地震雲」にも科学的根拠なし
今回の地震では、「人工地震」と関連して「地震雲が明らかな証拠だ」とする投稿も目立った。
これについても、学会はFAQ「2-12. 地震雲」(2019年10月修正)で、「地震研究者の間では一般に、雲と地震との関係はないと考えられています」との見解を示している。
●災害時のデマは法的責任に問われることも
災害時のデマは、投稿内容によっては法的責任を問われる可能性もある。
2016年の熊本地震では、「動物園からライオンが放たれた」とする写真付きの虚偽投稿をした男性が、動物園の業務を妨害したとして偽計業務妨害の疑いで逮捕された。
また、2024年の能登半島地震では、被災者を装って存在しない住所への救助を求める虚偽投稿が相次ぎ、救助活動の妨げになるとして問題視された。
デマの内容や生じた結果によっては、偽計業務妨害罪や名誉毀損罪、不法行為に基づく損害賠償責任が生じる可能性がある。
●確信が持てないときは「拡散」しない
総務省は7月28日、公式Xで「科学的根拠のない言説等の真偽不明の情報が流通するおそれがあります」として、ネット上の偽情報・誤情報への注意を呼びかけた。
本日発生した熊本県を震源とする地震に関し、SNS等のインターネット上で、科学的根拠のない言説等の真偽不明の情報が流通するおそれがあります。
— 総務省 (@MIC_JAPAN) July 28, 2026
インターネット上の偽・誤情報には十分ご注意ください。 pic.twitter.com/7eDQSmdoX7
あわせて、情報を確かめるためのチェック項目も示した。情報源が示されているか、発言者はその分野の専門家か、知り合いの投稿だからという理由だけで信じていないか、などを確認するよう呼びかけている。