スキマバイトアプリで決まっていた仕事が事業主によって直前にキャンセルされたにもかかわらず、休業手当が支払われなかった──。
東京都内の保育所で働く予定だった30代男性保育士が労働基準監督署に申告したところ、事業主に是正指導がおこなわれ、休業分の賃金が支払われたことがわかった。
男性が7月28日、東京・霞が関の厚労省記者クラブで会見を開いて明らかにした。スキマバイトで同じような問題が広がっている可能性があるとして、「諦めず請求してほしい」とうったえた。
●労働基準監督署へ申告→是正指導で支払い
男性は2025年7月から2026年2月にかけて、スキマバイトアプリ「タイミー」を通じて、東京都内の保育所で働いていた。この間、少なくとも3件で事業主側から直前に仕事をキャンセルされた。
このうち、都内の社会福祉法人では、今年2月27日午前9時15分から午後1時15分まで勤務する予定だったが、3日前になって「お任せする仕事がなくなってしまった」として、一方的にキャンセルされたという。
男性は3月30日、法人に賃金請求書をファクスで送付。しかし翌日、「24時間前(のキャンセル)ではないため休業手当は支払わない」という趣旨の回答を受けたという。
労働基準法26条は、使用者の責任による休業の場合、平均賃金の6割以上の休業手当を支払うよう義務付けていることから、男性は4月3日、渋谷労働基準監督署に申告した。
その後、5月25日に法人へ是正指導が入り、6月23日には休業分として3740円が男性に振り込まれたという。
また、別の企業では、男性が問い合わせフォームから賃金を請求したところ、タイミーから9740円が支払われたケースもあった。
●「諦めずに会社側へ請求してほしい」
男性は会見で、直前キャンセルによる収入減の深刻さをうったえた。
「現在の物価高騰という状況の中で、直前キャンセルによって半日分、1日分の収入が減ってしまうことは、ワーカーにとっては死活問題です」
そのうえで、スキマバイトの運営会社に対し、事業主が直前にキャンセルした場合の補償について、労働基準法に基づく適切な周知を求めた。
「スキマバイトを利用しているワーカーで、直前キャンセルにあった人は、私以外にも多くいると思います。 しかし、労働基準監督署などを利用しながら請求をすれば、賃金を支払ってもらえるので、諦めずに請求をしてほしい」
●「保育の仕事を『スキマバイト』でいいのか?」
会見では、保育や介護などケア分野でスキマバイトが広がっていることへの懸念も示された。
男性は、タイミー経由で保育士として働いた際、事前の打ち合わせがないまま当日初めて職場を訪れ、子どもの障がいや注意事項などについて十分に情報共有がないまま、保育を任されたことがあったという。
こうした経験から、子どもと信頼関係を築くことが必要な保育士の仕事に、1日限りの就労が前提となる「スキマバイト」を通じて関わること自体に疑問を持っていたという。
「スキマバイトは、保育のほか、福祉や介護などの領域にも拡大しています。毎日求人を出している事業所もあり、慢性的な人手不足というケア産業全体の問題を反映しているといえるでしょう」
●実態調査アンケートと無料相談を実施
男性を支援した「介護・保育ユニオン」と「NPO法人POSSE」は、保育・介護分野のスキマバイトでどのような問題が起きているのかを把握するため、働く側と事業主の双方を対象に実態調査を実施すると発表した。
アンケートは専用フォームで受け付ける。
また、未払い賃金や労災など、スキマバイトで働く労働者からの相談を受け付ける無料相談ホットラインも開設する予定だ。