受刑者の約4人に1人が外国人──。
内閣府特命担当大臣の小野田紀美氏が7月24日の記者会見で、視察した府中刑務所(東京都)の状況に触れ、「外国人犯罪への厳格な対応の必要性を再認識した」と述べた。
府中刑務所でみれば、この数字自体に誤りはない。
ただ、この割合をそのまま外国人犯罪全体の実態として受け止めるには注意が必要だ。府中刑務所は、外国人受刑者を集中的に収容する施設の一つだからだ。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
●府中刑務所では「約4人に1人」は事実
小野田氏は7月22日に府中刑務所を視察したことを明らかにしたうえで、記者会見で次のように述べた。
「府中刑務所では施設内各所を見学させていただくとともに、受刑者の約4人に1人が外国人という状況の中で、言語や文化、風習の違いから受刑者の特性を踏まえた処遇をすることの難しさなど、貴重な現場の声をお伺いし、外国人犯罪への厳格な対応の必要性を再認識いたしました。 引き続き、外国人犯罪への対応も含め、総合的対応策に盛り込まれた施策の着実な実行を進めてまいります」
矯正統計年報によると、2024年末時点の府中刑務所の受刑者は1707人。このうち外国人は386人で、22.6%を占める。
このため、比較する年の違いはあるものの、小野田氏による「約4人に1人が外国人」という説明自体に明確な誤りはない。
●外国人受刑者を集中的に収容する施設
一方で、この数字を理解するうえでは、刑務所の役割を踏まえる必要がある。
刑務所は、受刑者の性別や特性、初犯か再犯かなどによって、タイプが分けられている。
外国人受刑者についても、日本語の理解力や生活習慣の面で日本人と同じ処遇が難しい人に対しては、これまで「F」という指標が付けられており、対応できる刑務所に集中的に収容されてきた。
2025年6月に拘禁刑が導入された後は、振り分けるタイプが変更され、「外国人処遇課程」として扱われるようになった。
法務省によると、この課程を設置しているのは、男性施設17庁、女性施設3庁のみで、府中刑務所もその一つだ。
つまり、制度上、外国人受刑者が集まる施設がある以上、外国人の割合が高くなるのはある程度当然の結果ともいえる。
●全国では外国人受刑者は6.6%
実際、矯正統計年報のデータから、2024年末時点の全国の刑事施設全体に占める外国人受刑者の割合を計算すると、6.6%になる。
施設ごとの差も大きい。
たとえば、多くの無期懲役囚を収容する千葉刑務所では、受刑者757人中25人(3.3%)、熊本刑務所では304人中3人(1%)が外国人だった。(いずれも矯正統計年報のデータで、2024年末時点の受刑者数)
刑務所ごとの割合は、その施設が担う役割によって大きく左右されるため、一施設の数字だけで全体像を判断することはできない。
「F指標」入所受刑者人員の推移(犯罪白書より)
●数字の背景を見る必要がある
もちろん、小野田氏が述べたように、「言語や文化、風習の違いから受刑者の特性を踏まえた処遇をすることの難しさ」は、現場の刑務官にとって大きな課題だろう。
一方で、外国人受刑者を集中的に収容する府中刑務所の状況を踏まえ「受刑者の約4人に1人が外国人」であることから、「外国人犯罪への厳格な対応の必要性を再認識した」と結びつけるのであれば、その前提となるデータの位置づけには留意が必要だ。
令和7年版犯罪白書によると、従来のF指標に該当する入所受刑者は2005年から減少傾向にあり、近年は400人台で推移していたが、2024年は574人となり、前年より25.1%増えた。外国人全体でも2024年に入所した受刑者は851人となり、16.9%増えている。
この背景には、在留外国人の増加があるのか、それとも摘発の強化など別の要因があるのか。数字だけでは判断できない。
外国人に限らず、犯罪の実態を議論する際には、数字の背景に何が隠れているのかを冷静に分析することが求められる。
●出典
・矯正統計年報(令和6年)表3「施設別 年末収容人員」、表12「施設別 外国人被収容者の年末収容人員(総数)」。比率は同表から算出
・「受刑者の集団編成に関する訓令の運用について」(法務省矯成第3315号)
・「受刑者の処遇指標の指定等に関する訓令の運用について」(法務省矯成第1382号)
・小野田大臣記者会見(令和8年7月24日)政府広報オンライン