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セクハラ疑惑の善光寺貫主、任期は「死ぬまで」…性善説の内部規定でドタバタ劇
善光寺大勧進

セクハラ疑惑の善光寺貫主、任期は「死ぬまで」…性善説の内部規定でドタバタ劇

1400年の歴史を誇る善光寺(長野市)が、住職のセクハラ疑惑で揺れている。傘下の寺院や信徒団体は「前代未聞の不祥事」として辞任を要求。一方、住職側は疑惑を否定し、「法的拘束力はない」と辞任要求をはねのけている。

渦中の住職は、善光寺大勧進の小松玄澄貫主(82)。善光寺は天台宗の大勧進と浄土宗の大本願で共同管理しており、小松貫主は天台宗側のトップ。「宗教法人善光寺大勧進」の代表役員でもある。報道によると、女性職員に対し、「執拗に食事に誘った」「被差別部落に関する差別的な発言をした」などの疑いが持たれている。小松貫主は10年ほど前にも、週刊誌で女性問題などが報じられていた。

●貫主を辞めさせることはできる?

貫主の選解任についてはどのような仕組みになっているのか。天台宗の寺を統括する天台宗務庁によると、天台宗には人事についての統一的な規則はなく、それぞれの寺院に一任しているという。

では、小松貫主のいる大勧進ではどうか。事務局に尋ねたところ、貫主職は傘下の寺院が合議で決め、その任期は「この寺院の住職の在任中とする」と規定されているそうだ。「つまり、自分でお辞めになるか、お亡くなりになるかしない限り、辞められないということです。すべて性善説で作られているといいますか…。それだけの高僧であれば、『そういうこと』はないだろうと」(担当者)

しかし今、その「性善説」が揺らいでいる。内部の規定では辞めさせられないため、傘下の僧侶や信徒らは7月13日、天台宗務庁に小松貫主の罷免を求める申告書を提出した。宗務庁には懲戒処分の権限があるからだ。

今後は宗務庁が内容を調査することになる。天台宗が規定した懲戒事由に該当する可能性が高いとなれば、宗務庁自らが処分を言い渡すか、僧侶で組織する審理局(天台宗の裁判所)で判断することになる。処分には拘束力があり、貫主職を辞めさせることもできる。仮に解任となれば、大勧進では貫主が代表役員を兼任するため、代表役員も退くことになる。ただ、宗務庁の担当者は「通例ない、特殊なケース」と困惑した様子だった。

宗教上はこのような決まりになっているが、裁判で辞任を要求したらどうなるのか。宗教問題にくわしく、曹洞宗の僧侶でもある円城得寿弁護士によると、貫主職の解任は難しいという。信教の自由を守るため、法に反しない限り、宗教団体の内部規定が尊重されるからだ。


円城弁護士は、仮に裁判に発展したとしても「今回の場合だと、宗制(宗派が定めた決まり)に明確な規定がなければ、『国家不介入』のような形になって、解任が認められないのでは」と話していた。

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