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「私たちは日本にいていいのか」経営・管理ビザ厳格化、リトルインディアの父が語る「外国籍経営者」の危機
ジャグモハン・チャンドラニさん(撮影/塚田恭子)

「私たちは日本にいていいのか」経営・管理ビザ厳格化、リトルインディアの父が語る「外国籍経営者」の危機

「店を閉めるしかないかもしれない」「日本にいていいのかわからない」。全国で外国籍の経営者から、そんな切実な声が相次いでいる。

背景にあるのは、2025年10月に大幅に厳格化された「経営・管理ビザ」の新たな要件だ。

資本金の引き上げに加え、日本語能力や学歴・職歴などが新たに求められた結果、新規のビザ申請件数は月平均約1700件から約70件へと96%減少した。

「今回の変更は、外国籍者にのみ関わることです。突然、要件を厳しくされたことで、これまで日本で努力してきた多くの人は、『私たちはここ(日本)にいていいのか』と、不安になっています」

そう話すのは、江戸川インド人会の会長で、インド料理店が立ち並ぶ東京・西葛西「リトルインディア」の父として知られ、長年、多文化共生を推進してきた実業家のジャグモハン・チャンドラニさんだ。

チャンドラニさんに寄せられる相談から見えてきたのは、一部の問題事例ではなく、真面目に商売を続けてきた小規模事業者ほど苦境に立たされている現実だった。(取材・文/塚田恭子)

●「零細の飲食店経営者が痛い目に遭っている」

経営・管理ビザは、2015年4月の入管法改正で、それまでの「投資・経営」に代わって新設された在留資格だ。当時は、外国人による起業を後押しする「日本再興戦略」の一環として位置づけられていた。

法務省は、制度変更の理由を「実態のないペーパーカンパニーの設立や偽装起業など、制度の悪用を防ぐため」と説明しているが、今回の件について、チャンドラニさんはこう話す。

「これまで日本は、海外や在留外国人の投資・就労を歓迎してきました。もちろん法律を遵守したうえで、経営・管理ビザを得るわけですが、要件の厳格化によって、実態のあるビジネスをしてきた零細の飲食店経営者が痛い目に遭っているんです」

●資本金3000万円以上の企業は「8.7%」にすぎない

「インネパ」と呼ばれるインド・ネパール料理店は、利益率が高い業態ではない。円安に加え、ホルムズ海峡封鎖の影響などによる物価高で仕入れコストは上昇している。

それでも値上げすれば客足が遠のくため、価格を据え置いて営業を続ける店も少なくない。

社会保険料を分割払いしながら店を守ってきた経営者もいる。そうした厳しい状況に追い打ちをかけたのが、資本金の引き上げをはじめとする今回の制度変更だった。

「3年間猶予があるとはいえ、零細飲食店にとって、資本金3000万円を工面するのは容易ではありません。個人間で貸し借りする額ではないし、銀行から借りることも難しいでしょう」

総務省統計局の2024年経済センサスによると、資本金3000万円以上の企業は日本全体でも8.7%にすぎない。国は小規模な外国籍の経営者に、こうした厳しい条件を求めているのだ。

●退路を断たれ、自死を選んだ経営者も

起業当時から、ここまで大きく制度が変わったことの影響は、申請件数の減少や閉店、帰国という選択だけにとどまらない。退路を断たれ、自死を選んだ経営者は1人、2人ではないという。

「外国で仕事をするには、それなりの覚悟が必要です。築いた店を閉じるのは、自分の身を削るようなものですし、店は借りるよりも返すほうが大変なんです。

行政側は書類で判断するしかないのでしょうが、その人の人生に関わることなので、経営実態のある店には、配慮があればと思います」

どうすれば店を守ることができるのか。窮地に置かれた当事者の誰もが、そのことを考えている。

「複数の経営者が資本を合わせてホールディングスカンパニーにして、支店として営業するという考えもあるかもしれません。

とはいえ、店の少ない地域で一緒にやる相手を見つけるのは難しいでしょうし、現実的に可能かどうかもわかりません。ただ、みなさん、そこまで考えざるを得ない状況に置かれています」

制度変更は今後さらに続くのではないか──。そんな不安も広がっている。

「がんばって厳しい要件を乗り越えても、制度がさらに厳しくならないとは限りません。先が見えない状況に置かれると、人間は誰でも心配になるものです。

厳格化は『もう来ないでほしい』というサインなのか。私たちは日本にいてもいいのか。みなさん、そんな不安を抱えています」

●選択肢が減ることは「街のバラエティ」に影響する

貿易業や飲食業に携わる一方、西葛西で半世紀近く地域との交流を続けてきたチャンドラニさんは、日本社会の変化をこう見つめる。

「大きな波であることは間違いないです。みなさん、風当たりが厳しいと感じていますが、家族がいて、子どもが学校に通っている以上、何とか乗り越えようとしています」

実際、人気店であっても閉店を余儀なくされるケースが出始めている。

「日本社会の土台を支えているのは、中小零細企業です。飲食店に限っても、どんな地方に行っても安心して食事ができる食堂があります。一方で、高齢化によって畳むお店もあり、そこに外国の人たちが入っていきました。

エスニック系料理店がなくなっても、新たな動きは起こるでしょう。ただ、選択肢が減ることは、街のバラエティや生活の豊かさに影響します。不動産のオーナーにとっても家賃収入がなくなるわけですし、シャッターを下ろす建物が増えれば、街は殺風景になります」

●外国籍者を排除して「日本のため」になるのか

来日から半世紀近く。これまで経験したことのない排外的な空気について、チャンドラニさんは「本当に不思議です」と話し、こう続けた。

「かつて日本が不景気だったとき、外国籍者が日本人の仕事を取っていると非難されたことがありました。ただ、今は仕事があるのに働く人がいない状況です。特定の業種での圧倒的な人手不足は周知のとおりで、企業は困っています。

誰が、どういう意図で訴え出したのか。外国籍者を排除したい人たちは、排除は『日本のためだ』と言います。でも、その主張のどこが日本のためになるのか。私にはわかりません。

出生率が下がり、寿命が延びる中、介護人材が求められています。同じ国の人のほうが安心という気持ちはわかりますし、(人材が)間に合うならそれはよいことです。でも、実際はどうでしょう。現実をよく見たうえで、辻褄の合う話を聞きたいです」

【プロフィール】ジャグモハン・チャンドラニ/1953年インド・コルカタ出身。デリー大学卒業後、1978年に来日。貿易業の傍ら、1979年から拠点を置く西葛西で、インドと日本の草の根交流を進めると同時に、2000年頃からIT技術者として日本に駐在し始めたインド人をサポート。在日インド人コミュニティのリーダーとして、地元住民との共生に尽力している。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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