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「休日に予定ない部下と親睦を」善意で食事会を企画する上司…どんな法的問題がある?
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「休日に予定ない部下と親睦を」善意で食事会を企画する上司…どんな法的問題がある?

休日に、職場の若いスタッフを食事に誘って、親睦を深めたい――。そう考えた夫を、全力で止めた妻のツイートが賞賛を集めた。

投稿者(妻)によると、夫は、同業者の仲間に感化され、「若いのには自分たちでは行かないようなお店を経験させてやろう」と考えた。なぜ、休みの日に呼びだそうと考えたかというと、若いスタッフたちが「休みは何もしていません。暇です」と答えたからだという。

投稿者は「喜ばないから、そういうの。休みは自由に過ごさせてもらったほうがありがたいから」と夫に計画をやめるよう諭した。一方、若者たちに向けて、「上司に聞かれたら当たり障り無い休日の趣味を偽装して答えておく」ことを勧めていた。

一連のツイートには、「奥さんGJ」など賞賛が寄せられた。上司から誘われら、休みであっても断れないという人もいるだろう。一般的に、会社組織で、上司が部下を休日の食事などに誘うことにどんな法的問題があるのだろうか。小沢一仁弁護士に聞いた。

●「労働時間」にあたる可能性がある

「考え得る問題点としては、会社組織で上司が部下を休日に食事などに誘うことについては、(1)休日に上司一緒に過ごした時間は『労働時間』にあたるのか、(2)休日に食事につきあわせた結果、部下に精神的な負担をかけたような場合、その上司や会社が法的責任を負うことがあるのか、というものがあります」

小沢弁護士はこのように述べる。 

「まず、(1)については、上司と過ごした時間が労働時間と評価されると、会社は、その部下に対して割増賃金を支払うことになる可能性があります。 

労働時間にあたるかどうかは、労働者の行為が、使用者(会社)の指揮命令下に置かれたものと評価できるか否かにより客観的に定まります(最高裁第一小法廷・平成12年3月9日判決)。

本件では、たとえば、誘われた部下が食事会への参加を義務付けられていたり、事実上参加を強制されていると評価でき、これが会社の業務に関連するといえる場合には、労働時間にあたると判断される可能性があります。

この場合、会社が割増賃金を支払うことになる可能性があります」

●会社が責任を追う場合も 

「(2)については、休日の食事会に参加させられたことによって、部下に精神的負担をかけた場合、上司の行為は、違法行為となる可能性があります。

裁判例は、他人に心理的負担を過度に蓄積させるような行為は、原則として違法であるというべきとしています(福岡高裁・平成20年8月25日判決)。

具体的には、行為の目的、態様、頻度、継続性の程度、被害者と加害者の関係性などを検討することになります。

たとえば、職場において上位の立場にある上司が、職務とは無関係に、無理に休日に部下を食事に誘うことを繰り返し、その結果、部下に精神的負担をかけたような場合は、違法行為となる可能性があります。この場合、安全配慮義務違反等により会社が法的責任(損害賠償責任)を負う可能性もあります。

このように、会社にも迷惑をかけ得るものですから、上司としては慎重に考えた方がよいと思います」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

小沢 一仁
小沢 一仁(おざわ かずひと)弁護士 インテグラル法律事務所
2009年弁護士登録。2014年まで、主に倒産処理、企業法務、民事介入暴力を扱う法律事務所で研鑽を積む。現インテグラル法律事務所シニアパートナー。上記分野の他、労働、インターネット、男女問題等、多様な業務を扱う。

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