施術を受けに来院した女性の下着の中に手を入れて触るなどとして、接骨院を経営する40代男性が4月上旬、準強制わいせつの疑いで警視庁に逮捕された。
報道によると、男性は昨年6月と今年1月、経営する東京都内の接骨院で、20代と30代の女性に対して、施術中に下着の中に手を入れて触るなどした疑いが持たれている。女性2人がそれぞれ被害届を出したという。
警察の調べに対して、男性は「施術のためだった」と容疑を否認したということだが、はたして、このような言い分は通用するものなのだろうか。鈴木淳也弁護士に聞いた。
●「本当に施術だった」場合、罪に問われないが・・・
「まず、準強制わいせつについて説明します。この犯罪は、人の心神喪失もしくは抗拒不能(抵抗が困難)に乗じて、わいせつな行為をおこなった場合に成立します。
通常の強制わいせつは、13歳以上の男女に対する場合、『暴行または脅迫』を用いて、わいせつ行為をすると成立します。
これに対して、準強制わいせつは、『暴行また脅迫』を要件とされていないところに特徴があります」
今回のケースは、どう考えられるのだろうか。
「今回のケースでは、女性の『抗拒不能』に乗じて、わいせつ行為をおこなったとして、逮捕されたものと考えられます。
この『抗拒不能』というのは、心神喪失以外の理由で抵抗することが、物理的または心理的に、不可能または著しく困難な状態であることとされています。
そして、女性が、わいせつな目的がなく正当な診療・治療をおこうものと信じこまされていた場合、性的行為を拒むことが著しく困難な状態であったといえます。過去の裁判例でも、『抗拒不能』の状態であると認定されています。
今回逮捕された男性は『施術のため』に下着の中に手を入れたと供述していることから、被害者も治療と信じていたと考えられます。女性は『抗拒不能』な状態にあったと考えられることから、準強制わいせつで逮捕されるに至ったということでしょう」
下着に手を入れる行為が「本当に施術だった」という言い分は通じないのだろうか。
「本当に施術行為であれば、正当な業務行為であり、準強制わいせつは成立しません。
ただし、逮捕された男性がそのような主張を続けるのであれば、下着に手を入れた際の一連の具体的な言動や、被害者がどんな治療を目的に来院したのか、その行為が何の治療に有効であるのか、科学的裏付けがあるのか、などが問われることになるでしょう」
鈴木弁護士はこのように述べていた。