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亡き父の「タンス預金」を次々に発見! 兄との「終わりなき相続争い」に発展
写真はイメージです(天空のジュピター / PIXTA)

亡き父の「タンス預金」を次々に発見! 兄との「終わりなき相続争い」に発展

「父親が亡くなった後に次から次へとタンスから現金がみつかりました。兄と相続をめぐって揉めています」。弁護士ドットコムに、このような相談が寄せられている。

相談者によると、兄はこれまで父親と同居していたという。父親が亡くなった後、タンスから50万円の現金がみつかったことを兄から聞いた。兄と二等分する話になったものの、兄は全額をギャンブルで使い果たしてしまった。

相談者は納得いかず、調停を申し立てた。ところがその後、兄とやりとりするうちに、50万円のほかにさらに30万円のタンス預金がみつかったことも分かった。

「50万円のタンス預金については話がまとまりそうです。この場合、30万円のタンス預金について、もう一度調停を申し立てなければならないのでしょうか」と相談者は聞いている。

このように、次々と財産がみつかった場合は、そのたびに調停を申し立てなければならないのだろうか。染矢修孝弁護士に聞いた。

 ●基本的に「新たに判明した財産」については再度の遺産分割協議が必要

ーー相談者のように、財産が次々とみつかった場合、その都度二分の一の相続を求めて調停を申し立てなければならないのでしょうか。

今回のケースのように、相続人間で遺産分割協議や遺産分割調停などをおこなった後に、新たに現金や預貯金などが判明することがあり得ます。

特に、弁護士などが介入せずに、相続人間だけで遺産分割協議をおこなった場合などには、相続財産の調査が十分ではないなどの理由から、遺産分割協議後に新たに遺産が判明するという事態も生じ得ます。

このようなケースでは、基本的には「新たに判明した遺産」に関して、再度、遺産分割協議等をおこなう必要があります。

「新たに判明した遺産」の分け方について、相続人間で揉めて遺産分割協議がまとまらない場合には、遺産分割調停や遺産分割審判という流れになる可能性もあります。その意味では、まさにもう一度、遺産分割調停をおこなわなければならない場合もあるでしょう。

なお、例外的な場合(すでにおこなった遺産分割協議が錯誤で無効となる場合など)を除いて、すでにおこなった遺産分割協議は無効ということにはならないものと考えられます。

 ●遺産や相続人に関する調査はしっかりと

ーー相続人間での遺産分割協議等をおこなった後に、新たに現金や預貯金などが判明した場合、その都度、遺産分割協議や遺産分割調停をおこなわなければならないとすると、かなり負担がかかると感じる人もいるかもしれません。

そのように感じる方は少なくないでしょう。

そこで、実務では、万が一遺産分割協議後に、新たに遺産が判明してしまう場合に備えて、遺産分割協議書に「本遺産分割協議後に、新たに遺産が判明した場合には、金○○円以下の場合には、相続人○○が取得し、金○○円を超える場合には、相続人各自の法定相続分を基準に再協議する」という趣旨の条項を入れておくなどの工夫が一応考えられます。

いずれにしても、まずは遺産分けの前提として、しっかりと遺産の調査をおこない、いわば取りこぼしのない遺産分割協議をおこなうことが、後の法的トラブル防止等の見地からは極めて重要です。

亡くなった方との関係が希薄であったり、遺産の内容が多岐にわたるなどの事情から、相続人個人では遺産の全容が分からないおそれがある場合には、弁護士等の専門家に遺産の調査を依頼することも一考です。

また、今回のように遺産が後に判明するケースとは異なり、遺産分割協議後に「新たな相続人」が判明するケースでは、すでにおこなった遺産分割協議は原則として無効になりますので、この点も要注意です。

遺産分割協議等をおこなう場合には、まずは「遺産」(借金等のマイナスの財産を含む。)の内容の十分な調査や、相続人についての十分な調査が必要となることにくれぐれもご注意ください。

プロフィール

染矢 修孝
染矢 修孝(そめや のぶたか)弁護士 染矢修孝法律事務所
福岡市中央区六本松で、2016年1月より法律事務所を開設し、福岡を中心に一般民事から刑事事件まで幅広く事件のご依頼をいただいております。弁護士に相談して、本当に良かった、安心したと言っていただけるよう、日々の業務に取組んでおります。

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