「歩行者は右側通行でしょ! アンタ法律知らないの?」。歩道を歩いていたオキノさん(法学部学生)は、前方から歩いてきた高齢の女性(推定・70代)に怒鳴られた。
オキノさんが歩いていたのは、大通り沿いにある幅の広い歩道だ。平日の昼間だったこともあり、人はほとんど歩いていなかった。
「たしかに、どちらかといえば歩道の左側を歩いていたと思います。ただ、『歩行者は右側通行』という表示もなかったので、あまり意識せずに歩いていました」とオキノさんは当時を振り返る。
女性は「最近の人はホント教養がないわね。法律を守りなさいよ」などとブツブツ言っていたという。オキノさんは思わず「すみません」と口にしたが、心に引っかかりを感じている。
●「右側通行」説と「左側通行」説…正しいのはどっち?
オキノさんと女性に限らず、ネット上の意見も割れている。
「歩行者は右側通行だと思っている人が多すぎるけど、『左側』ですよ」という指摘がある一方で、「『右側通行』をわかっていない歩行者が多すぎる」という声もある。
「右側通行」説と「左側通行」説の両方が出ているのだ。
●法的には「歩道ではどちらを歩いてもよい」
法律上、歩行者は「右側」と「左側」どちらを歩くことになっているのだろうか。
道路交通法は、「歩行者は、歩道又は歩行者の通行に十分な幅員を有する路側帯(次項及び次条において「歩道等」という。)と車道の区別のない道路においては、道路の右側端に寄って通行しなければならない。ただし、道路の右側端を通行することが危険であるときその他やむを得ないときは、道路の左側端に寄って通行することができる」と規定している(10条1項)。
つまり、原則は「右側通行」をしなければならないことになる。
ただし、これは「歩道等と車道の区別がない道路」の場合だ。歩道や十分な幅がある路側帯であれば、「右側通行」しなければならないという決まりはない。
そのため、歩道でやや左側を歩いていたオキノさんは、法律に違反していたわけではないということになる。
しかし、どちらを歩いても良いならば、人とすれ違うときにどのように避けるべきなのだろうか。このような疑問に対して、ネット上では「気配を読み取る」、「こちらはあえて避けず、突き進む」、「江戸時代に武士は刀を左にさし、刀がぶつからないように左側を歩いていた。なので、避けるときも左」という声がある。
近年は歩きスマホをする人や前を見ずに歩いている人も目立つ。どちらを歩いていても前方には注意が必要だ。