トランスジェンダーで、性差別に関する数々の裁判で代理人をつとめる仲岡しゅん弁護士が7月27日、大阪弁護士会から受けた懲戒処分を不服として、日弁連に審査請求を申し立てた。
仲岡弁護士は、2024年にX上で匿名アカウントに対して投稿した内容について「品位を欠く」として、2026年4月に戒告の懲戒処分を受けていた。
同日、参院議員会館で記者会見した仲岡弁護士は「大阪弁護士会は、ヘイト発言を繰り返す人が腹いせ的におこなった懲戒請求を真に受けた。弁護士の品位とは、差別には時に荒々しく戦うこと。問題の本質を問いたい」とうったえた。
●「“屏風の中の虎”への対抗言論だった」
発端は2024年12月、トランスジェンダーへのヘイト投稿を繰り返していた「Akakuro」という匿名アカウントの投稿だった。
<なんでこういう人って言葉遣いが威圧的なんだろう。 結局「生得的女性」じゃないからだよね。性が「自認の性」になったら一番被害を被るのは身体的に弱い女性なのに、まったくそれを考慮しない。寄り添わない。 自分の娘が被害にあったらどうしようという切羽詰まった思いもない。>
これに対し、仲岡弁護士は次のように投稿した。
<Akakuroさんの中の人はわいせつ事件で前科のあるオッサンだとタレコミがありましたよ。自分のやましさをロンダリングするためにセクシュアルマイノリティに責任転嫁するのやめてくださいね。>
仲岡弁護士は、この投稿について「何の根拠もなく、性加害者のようにいわれてきた差別発言に対して皮肉を込めた対抗言論でした」と説明した。
「『故なく性加害者扱いされることを想像してごらん』と、差別の構造を裏返して見せるミラーリング手法です」
そのうえで、数々の差別アカウントがあるが、匿名の相手を選んで言い返しているといい「大阪弁護士会は、いわば屏風の中の虎に対抗した私に罰を与え、トランス差別を放置しているのです」と批判した。
●懲戒請求したのはAkakuro本人ではない
弁護士法58条では、懲戒請求は依頼者や相手方などの事件関係者に限らず、誰でもできるとされている。
今回、懲戒請求をしたのは「Akakuro」の運営者本人ではなく、「トランスジェンダー当事者の非難を繰り返している人」(仲岡弁護士)だという。
懲戒手続きでは、まず綱紀委員会が調査し、懲戒委員会に事案の審査を求めるかどうか決める。懲戒委員会が懲戒相当と認めれば、処分の内容を明示して議決される。

今回の懲戒審査は2026年2月8日に異例の公開でおこなわれ、定員30人を超える傍聴人が集まったほか、市民から抗議文や意見書が提出された。
その後、3月16日付で決定文が出され、4月28日に戒告処分が言い渡された。
仲岡弁護士は「追加資料の提出期限だった3月11日から5日後に決定が出たのは、あまりにも早く出来レースだったのでは。綱紀から懲戒に上がるのも早かった。審査では、懲戒委員の一人は居眠りしていました」と話し、日弁連の審査も公開でおこなわれるよう望んでいる。
●連帯する弁護士が90人超集まっている
会見には、代理人をつとめる神原元弁護士、橋本智子弁護士のほか、松本亜土弁護士も同席した。
神原弁護士は「大阪弁護士会の判断は法律的にも100%間違っている。匿名の相手に対して名誉毀損は成立しない。残念ながら法律家の世界は差別に対する認識が低い。できるだけ多くの人の目に触れ、公正な審理をさせたい」と話した。
大阪弁護士会所属の橋本弁護士は「品位という言葉は、伸び縮みする物差し。おっさんの論理が幅を利かせている弁護士業界は変わらなければならない」と指摘。全国で90人を超える弁護士が連帯を表明し、40人以上が代理人として加わることに名乗りを上げていると明らかにした。
松本弁護士は「『品位』などの基準で判断する弁護士法56条は懲戒権者による濫用もあり得る。この規定が妥当かを同時に考える機会にしてほしい」と語った。
●「弁護士の品位」とは何か
「弁護士の品位とは何か」が改めて問われることになりそうな今回の審査。
弁護士法1条1項「基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする」を引き合いに、仲岡弁護士は最後にこううったえた。
「品行方正にしていることが弁護士の品位でしょうか。弁護士の使命は、時に荒々しく戦うことです。それこそが品位です。バスの白人席にあえて座り続けた黒人ローザ・パークスのように、抗わなくてはならない時がある。それがマイノリティとしての品位です。間違った懲戒処分を覆すために戦います」