共同親権で養育費はどうなる?法定養育費の仕組みと注意点

2026年4月に共同親権が導入され、「親権が半分になるなら養育費は減らされるのでは?」と不安に感じる方は少なくありません。

結論として、親権の形が変わっても養育費の支払い義務はなくなりません。

この記事では、新制度である法定養育費の注意点や、適正額の取り決め方についてわかりやすく解説します。

目次

  1. 結論:共同親権になっても養育費の支払い義務はなくならない
  2. 法定養育費とは?法改正で変わった養育費の新ルール
  3. 法定養育費だけで満足せず、適正額を取り決めた方がよい理由
  4. 共同親権での養育費の金額はどうやって決まる?
  5. 共同親権の養育費で想定される実務トラブルと対処法
  6. 万が一の未払いに備える「養育費保証サービス」という選択肢
  7. まとめ:不安がある場合は合意する前に弁護士へ相談を
  8. 共同親権と養育費に関するよくある質問(FAQ)

結論:共同親権になっても養育費の支払い義務はなくならない

まず結論として、2026年4月に離婚後の共同親権が導入されましたが、親権の形が変わっても、これまでどおり養育費の支払い義務はなくなりません。 共同親権になったからといって、免除されたり、自動的に減額されたりすることはないのです。 「共同親権」という言葉から、「親権が半分になれば、お金の負担も半分になる」と受け取ってしまう方は少なくありません。しかし養育費は、親権を持っているかどうかとは切り離された、親としての別の義務にもとづくものです。 まずはこの大前提を押さえておくことが、正しい知識で子どもの将来の生活を守ることにつながります。

親には子どもの生活を支える義務(生活保持義務)がある

養育費の根拠は、親が子どもに対して負う「生活保持義務」にあります。これは、「自分と同じ水準の生活を子どもにも保障しなければならない」という義務のことです。親権の有無や種類によって発生したり消えたりするものではありません。 実際の法律相談でも、離婚後の親の子どもに対する扶養義務(養育費の支払い)は、優先度が高いものとして扱われています。 たとえば自分の親へ毎月仕送りをしているといった事情があっても、未成熟の子どもへの養育費が優先されるのが原則です。共同親権が導入されても、この土台が揺らぐことはないと考えられています。

「親権が半分だから養育費は不要」という誤解について

離婚に関する話し合いを進めるなかで「親権を共同で持つのだから、お互い自分の生活費で子どもを育てよう。だから養育費のやり取りは不要だ」といった主張を相手から受けることがあります。しかし、こうした言い分は、法的には通用しません。 その理由は、養育費が子ども自身の権利だという点にあります。ポイントを整理してみましょう。

  • 養育費は子どもの権利であり、親が代わりに放棄する合意は無効と判断される可能性が高い
  • 「財産分与を請求しない代わりに養育費を払わない」といった相殺的な取り決めも認められにくい
  • 「共同親権だから払わない」という主張に法的な根拠はない


なお、共同親権という制度そのものの仕組みについては、別記事もあわせてご確認ください。
関連記事:共同親権はいつから?メリットや養育費・面会交流への影響をわかりやすく解説

みんなの法律相談に寄せられた相談

共同親権になることはできますか?

相談者の疑問 2025年から共同親権が導入された場合の親権について質問です。妻と別居して4年経ちます。>>> 質問の続きを見る

吉田 英樹の写真 弁護士の回答吉田 英樹弁護士 2026年ですかね。「共同親権 施行時期」で検索してみてください。審判で、共同親権と判断されるケース、されないケースがあり、>>> 回答の続きを見る

法定養育費とは?法改正で変わった養育費の新ルール

法定養育費と先取特権など2026年4月の新ルールを示した図 2026年4月の法改正では、養育費をめぐる新しいルールがいくつか導入されました。代表的なのが「法定養育費」と、未払いのときに相手の財産を差し押さえやすくする「先取特権」の仕組みです。 ポイントを、わかりやすく整理していきましょう。

取り決めがなくても最低限の金額を請求できる仕組み

法定養育費とは、養育費の取り決めをしないまま協議離婚(話し合いによる離婚)をした場合でも、最低限の金額を請求できる制度です。これまでは取り決めをしないまま離婚すると、後から請求するのに手間がかかりました。新しい制度には、その空白を埋める役割が期待されています。 金額は、法務省令で子ども1人あたり月額2万円と定められています。 ただし、月2万円はあくまで「最低ライン」の金額です。 子どもを育てる実際の費用としては足りないことが多いため、本来は、お互いの収入や子どもの人数・年齢に応じた金額(適正額)を、離婚時にきちんと取り決めておくことが大切です。 なお、法定養育費を請求できるのは、原則として2026年4月1日以降に離婚したケースです。

話し合いの書面だけで差し押さえが可能になる「先取特権」

もう一つの大きな変更が、ほかの債権者に優先して支払いを受けられる権利である「先取特権」の付与です。 養育費についてこの権利が認められたことで、未払いのときに相手の財産を差し押さえやすくなりました。 加えて、従来は、給与や預貯金を差し押さえるには、公正証書や調停調書などの「債務名義」(強制執行の根拠になる公的な書類)が必要でしたが、現在は、この仕組みが次のように変わっています。

区分 差し押さえに必要なもの
従来 公正証書・調停調書などの「債務名義」
改正後 双方が署名した合意書(債務名義がなくても手続き可能)

ただし、優先して差し押さえられるのは、子ども1人あたり月額8万円までです。合意した養育費がこれを超える場合、8万円を超える部分は通常の債権と同じ扱いになります。 この仕組みの対象となるのは2026年4月1日以降に発生する養育費に限られ、それより前の滞納分については、従来どおり債務名義が必要です。 未払いに悩む親にとっては心強い変化ですが、注意点もあります。差し押さえには、支払額や支払期限を明記した確かな合意書が必要です。また、相手が「そんな合意はしていない」などと争った場合には、手続きが止まってしまうこともあります。

法定養育費だけで満足せず、適正額を取り決めた方がよい理由

法定養育費は便利な制度ですが、「養育費がもらえるなら十分」と正式な取り決めを後回しにすると、本来受け取れるはずの金額が受け取れず、損をしてしまうおそれがあります。

適正額を取り決めないと、将来受け取れる総額に大きな差が出る

法定養育費(月2万円)は、あくまで応急処置としての最低限の金額であり、本来は、お互いの収入や子どもの人数・年齢をもとに、裁判所の「養育費算定表」にあてはめて金額を決めます。 法定養育費だけで満足して正式な取り決めを放置すると、本来受け取れたはずの適正額の養育費を手放すことになりかねません。

応急処置で終わらせず「公正証書」で適正額を決定する

そこで大切になるのが、相手と話し合って適正額を決め、正式な取り決めとして書面に残しておくことです。とくに、支払いが滞ったときに、裁判をせずに強制執行できる旨を記した「強制執行認諾文言付き公正証書」を作成しておくことをおすすめします。 先ほどの先取特権でも、合意書があれば差し押さえはできますが、優先されるのは子どもひとり当たり月8万円までの部分です。これを超える適正額まで確実に回収できるようにするには、公正証書にしておくと安心です。 養育費は長い期間にわたって支払われるお金です。だからこそ、受け取る側は「途中で払われなくなったとき」に備えておく必要があります。

共同親権での養育費の金額はどうやって決まる?

「具体的にいくらもらえるのか」は、多くの方が気になるところです。結論として、共同親権になっても、養育費の金額を決めるベースはこれまでと同じく、裁判所が公表している「養育費算定表」です。 ここでは金額の決まり方と、注意すべき例外を見ていきます。

金額の目安はこれまで通り「養育費算定表」をベースにする

養育費の金額は、算定表にあてはめて算出されます。主な判断材料となるのは、次の3つです。

  • 支払う側の年収
  • 受け取る側の年収
  • 子どもの人数と年齢


基本的には、これらの要素をもとに算定表から標準的な金額が決まります。
そのため、相手が算定表の基準を大きく超える額を要求してきても、原則として法的に応じる義務はありません。逆に、相手が減額を狙って一時的に収入を下げたような場合でも、本来の稼働能力(働く力)などを考慮して算定されるケースがあり、不当な主張がそのまま認められるとは限りません。

お互いの家で行き来する「交代監護」では減額されるケースも

一つ注意したいのが、共同親権のもとで子どもが双方の家を頻繁に行き来するような場合です。いわゆる交代監護に近い状況で、別居している親も日常的な生活費を多く負担しているケースでは、算定表の額から減額の調整が行われる可能性があります。 ただし、これは「共同親権だから一律に減額される」という話ではありません。あくまで、実際の監護時間や生活費の分担状況に応じた調整です。自分がどの程度の生活費を負担しているのか、相手はどうかを整理しておくと、話し合いの見通しが立てやすくなります。

大学の学費や医療費など「特別の費用」は別途話し合いが必要

毎月の養育費とは別に、次のような「特別の費用」についても取り決めが必要です。

  • 大学などの学費(授業料、通学定期代、教科書代など)
  • 高額な医療費
  • 入学や修学旅行などイベントごとにかかる費用


これらは金額が大きく、離婚時に明確なルールを決めておかないと、後でトラブルになりやすい費用です。
たとえば、大学生の子どもの教育費を誰がどの割合で負担するかを、あらかじめ協議書に書き分けておく方法があります。

これらの特別費用に関しては、一部の項目だけを先に合意する場合は注意が必要です。書面に「清算条項」(その合意で解決済みとし、以後はお互いに追加の請求をしないと定める条項)が入っていると、後から残りの費用を請求できなくなることがあるため注意しましょう。

みんなの法律相談に寄せられた相談

離婚調停における養育費算定のタイミングと年収について

相談者の疑問 別居中の夫と協議離婚中です。離婚調停を視野に入れております。>>> 質問の続きを見る

吉田 英樹の写真 弁護士の回答吉田 英樹弁護士 離婚調停にて養育費を算定する場合、いつ時点の年収となりますか。
(例えば11月に離婚調停申立、1月に第1回の調停など、年が跨ぐ場合はどちらの年収となりますか)
→基本的に離婚時の年収によると思います。>>> 回答の続きを見る

共同親権の養育費で想定される実務トラブルと対処法

共同親権を理由に、相手が養育費の使い方などに過剰に干渉してこないか不安に感じる方もいます。 ここでは、養育費をめぐって想定されるトラブルと、その法的な考え方や対処法を整理します。

使い道を監視するために「レシートの提出」を求められたら?

「共同親権なのだから養育費の使い道を毎月報告してほしい」「レシートを見せてほしい」と要求されるケースがあります。しかし、法的にこれに細かく応じる義務は原則としてありません。 その理由は、養育費の性質にあります。

  • 養育費は子どもの生活費全体を支えるものであり、同居している親の家計と明確に切り離せない部分が多い
  • 家賃や光熱費のように、子どもの分だけを1円単位で切り分けて証明するのは現実的でない
  • そもそも使い道を細かく報告する法的な義務はない


この点を知っておけば、相手からの過度な報告要求に対しても、冷静に対応することができます。

相手との直接交渉や不当な要求に悩んだときの解決策

問題は、相手が「報告しないなら払わない」「面会させないなら払わない」といった理不尽な取引を持ちかけてくる場合です。こうしたケースでは、当事者同士だけで冷静に解決するのは難しいことも少なくありません。 感情的なやり取りが続いたり、「サインしないなら話し合いを進めない」と迫られたりして、不本意な条件のまま合意してしまうと、後から変更するのは容易ではありません。 当事者同士での話し合いが行き詰まった場合や、相手の要求に法的な根拠があるのか判断に迷う場合は、家庭裁判所の調停を利用したり、弁護士を代理人に立てて交渉を任せることも有効な選択肢です。

万が一の未払いに備える「養育費保証サービス」という選択肢

厚生労働省の調査(※)によると、離婚後に養育費を継続して受け取れている割合は、母子世帯で約28%、父子世帯で約9%にとどまっており、途中で支払いが途絶えてしまうケースが少なくありません。(※令和3年度 全国ひとり親世帯等調査) そこで注目されているのが、将来の「未払いリスク」に備えられる、チャイルドサポートの「あんしんサイクル」といった、民間の養育費保証サービスです。 養育費保証サービスには、主に次のようなメリットがあります。

  • 相手からの支払いが途絶えたときに、保証会社が代わりに養育費を立て替えて支払ってくれる
  • 相手への督促や回収業務も保証会社が代行してくれる
  • 元配偶者と直接お金のやり取りをして揉めるストレスから解放される


法定養育費や適正額の取り決めができても、毎月の未払い不安から解放されたい方や、万が一に備えておきたい方は、このような保証サービスを未払いリスクに備える一つの手段として知っておくとよいでしょう。
ただし、保証の範囲や利用条件は事業者によって異なるため、利用前に内容をよく確認することが大切です。

まとめ:不安がある場合は合意する前に弁護士へ相談を

共同親権になっても、これまでどおり養育費の支払い義務は変わりません。 大切なのは、法定養育費という最低限の額で妥協せず、適正額をしっかりと公正証書などの書面に残しておくことです。 もし相手から「親権が半分だから養育費は減らす」「使い道を毎月報告しろ」などと不本意な条件を要求されている場合は、安易に合意する前に弁護士へ相談し、適正な条件を確認することをおすすめします。

共同親権と養育費に関するよくある質問(FAQ)

Q1. 既に離婚している場合、後から共同親権に変更されて養育費が減ることはありますか?

2026年4月より前に離婚して単独親権になっている場合でも、共同親権へ変更できる場合があります。

ただし、家庭裁判所に「親権者変更」を申し立て、子どもの利益のために必要と認められる必要があります。また、共同親権に変更されたこと自体を理由に、養育費が自動的に減額されることはありません。

Q2. 面会させないなら養育費は払わない、と脅されました。

面会交流と養育費は、法的に対価関係(交換条件)ではありません。そのため、面会をさせてもらえないことは、養育費の支払いを拒む正当な理由にはなりません。相手が「面会させないなら払わない」と主張しても、その言い分に従う必要はありません。

Q3. 法定養育費はいつから請求できるようになりますか?

法定養育費や先取特権といった新しいルールは、改正民法が施行された2026年4月1日以降の状況に適用されます。施行日以降に離婚したケースなどが、法定養育費の対象になります。

Q4. 相手(支払う側)が再婚して子どもができた場合、養育費は打ち切られますか?

相手(支払う側)の扶養する家族が増えた場合、養育費の減額が認められる可能性はあります。ただし、それだけで支払い義務が完全になくなるわけではありません。減額の可否や程度は、双方の収入や扶養状況をふまえて個別に判断されます。

この記事の監修者
佐々木 裕介弁護士のプロフィール画像
チャイルドサポート法律事務所
佐々木 裕介 弁護士
(第二東京弁護士会)
監修者のプロフィールを見る

この記事は、公開日時点(2026年08月25日)の情報や法律に基づいています。

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