くまモンが怒られたーー。熊本県のPRキャラクター「くまモン」のプロモーション活動中の飲食費をめぐって、会計検査院が「目的外に使用され不当と認められる」と指摘した。
報道によると、指摘されたのは、くまモンのプロモーション活動にあたる委託先企業のスタッフが、2013年度に飲んだり食べたりした飲み物や弁当、レストランなどでの食事代約36万円。国の緊急雇用創出基金が使われていたという。
緊急雇用創出基金は、厚労省が管轄する緊急雇用創出事業臨時特例交付金を原資として、熊本県が設置。県が委託した企業が、新たに失業者を雇用することで、人件費などを基金で賄うことができる仕組みだった。熊本県は2013年度、熊本市のイベント会社に対して、関西地方のPR活動を約2380万円で委託していた。
今回、「人件費や交通費以外の支出は基金の趣旨にそぐわず、過大な取り崩しに当たる」として、指摘を受けることになった。
くまモンが今回、「ごめんなさいだモン」と反省しているのかは分からないが、くまモンを叱りつけた「会計検査院」はどのような組織で、どんな役割を担っているのか。会計検査院の「指摘」にはどんな意味があるのか。大和弘幸弁護士に聞いた。
●国の決算はすべて会計検査院が検査する
会計検査院とはどのような組織か。
「国の活動は予算の執行を通じて行われますので、予算が適切に執行されたかどうか検査することがきわめて重要となります。そこで、憲法は、国の収入支出の決算は、すべて毎年、会計検査院が検査しなければならないと定めています。
会計検査院は、国会や裁判所のみならず、内閣からも独立した地位を有する憲法上の機関であり、馴れ合いによる検査を排除して検査の実効性を高めています」
会計検査院はどのような検査を行うのか。
「会計検査院が行う検査の対象は、国の会計の全ての分野ですが、国が補助金等を与えている場合その都道府県や各種法人なども対象となります。検査により会計経理の法令違反や不当事項が認められた場合、会計検査院には、意見を表示し、改善の処置を要求する権限が与えられています」
●雇用創出のための事業で、対象は人件費や交通費に限定
今回指摘されたのは、くまモンが飲んだり食べたりした飲み物や弁当、レストランなどでの食事代。緊急雇用創出基金から支出されていたが、何がいけなかったのか。
「各都道府県は、厚生労働省からの交付金を原資として緊急雇用創出基金を造成します。そして、都道府県が企画した事業(例えば、県外でのPR活動)を民間企業に委託し、民間企業が雇用者を雇い入れて活動を行うに際し、基金から活動費を支払います。
この事業は、雇用創出のための事業です。そのため、事業の対象となる経費は雇用者の賃金など人件費や交通費等に限定されます。飲食費への支出は不当だというのが今回の会計検査院の指摘ですが、一般の給与所得者が勤務先から飲食費の支給を受けていないことと対比すれば、検査院の指摘はもっともといえます」
なるほど。飲食費は事業の対象となる経費にはならないということですね。
「はい。今回の報道では熊本県のケースのみが取り上げられていますが、11月8日に内閣に提出された平成28年度決算検査報告によると、緊急雇用創出事業等に関する基金の目的外使用は、全部で5道県、不当金額総額は5970万円であると、会計検査院は指摘しています」
【取材協力弁護士】
大和 弘幸(やまと・ひろゆき)弁護士
やまと法律会計事務所 所長
事務所名:やまと法律会計事務所
事務所URL:http://yamato-law-accounting.com