参加者が金額を見ずに料理を注文していき、あらかじめ設定された金額に近づける。もっとも遠い金額になった者は、他の参加者の分まで「自腹」で食事代を支払わなければならない――。バラエティ番組『ぐるぐるナインティナイン』(日本テレビ系)の人気コーナー「ゴチになります!」でおなじみのゲームだ。
最近では、他のテレビ番組でも「負けたら全員分を自腹で支払う」ゲームを見かけるようになってきたが、よくよく考えてみると、金額を当てるというこのゲームはギャンブル性があるようにも思える。また、他人の分まで「おごる」というルールには相当な金銭がからむ話だ。これは刑法で禁じられた「賭博」にあたらないのだろうか。伊藤諭弁護士に聞いた。
●一見「賭博」にあたりそうだが……
「『賭博』とは、確実に予見できない事実に関して勝敗を決することで、お金や価値のあるものをやりとりすることをいいます。
最初から勝ち負けが決まっていなければ、それぞれの腕前や才能などによってその確率に違いが出ても賭博といえます(賭けゴルフや賭け麻雀など)。
賭博罪にあたると、50万円以下の罰金または科料(刑法185条)、常習賭博の場合は3年以下の懲役(刑法186条第1項)になります」
それなら、番組でやっている内容は、まさに「賭博」に該当しそうだが……。
●その場の食事や飲み物代なら賭けてもOK
「この番組は、頼んだ料理の値段を当てて、もっとも遠い金額になった人がその食事代金を支払うというものですので、この定義からすると『賭博』にあたることになります。
ただし、これには例外があって、『一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまる場合』は賭博罪にはあたらないのです(刑法185条ただし書)」
どういうことだろうか?
「わかりにくい言葉ですが、すぐに使ってなくなってしまう物、食事や飲み物などを賭けたに過ぎない場合には、賭博罪として処罰されないのです。
今回、番組で賭けている物は、その場ですぐになくなってしまう食事の代金に過ぎませんので、賭博罪で処罰されるようなことはなさそうです」
なるほど、関係者がその場で消費する食べ物や飲み物、その支払いを賭けて行うゲームは賭博罪にならないということだ。それでは、すぐなくなるような少額の現金だったらどうだろう?
伊藤弁護士は「現金を賭けた場合には、金額がたとえ少額であっても賭博罪に該当します」と注意を促していた。
法律上、現金を賭けることは、金額にかかわらず問題であるようだ。友人たちと興じたゲームでうっかり御用……という事態に陥らないため、このあたりの線引きはしっかりと把握しておくべきなのかもしれない。