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「盗撮被害」にあい、容疑者逮捕…示談金を受け取ったら刑事責任の判断に影響する?
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「盗撮被害」にあい、容疑者逮捕…示談金を受け取ったら刑事責任の判断に影響する?

DVDレンタル店で盗撮にあったという女性から弁護士ドットコムの法律相談コーナーに投稿がありました。

相談者によると、DVDを借りようとしていたら足元が光ったので振り返ると、男性がいました。女性が「盗撮しましたよね」と声をかけると逃げたため、大声を出して近くの人につかまえてもらったそうです。その後、警察が来て、盗撮の事実も確認されたため、男性は逮捕されました。

警察には「罰金刑」で終わると説明をされたそうですが、相談者は「男の人に後ろに立たれるのも怖いし、安心して生活ができない」として、示談金か慰謝料を請求したいといいます。

盗撮にあった被害者は加害者に対して、示談金や慰謝料を請求することができるのでしょうか。大森景一弁護士に聞きました。

●示談金を受け取ると、刑事責任の判断にも影響する?

ーー今回の女性の場合、刑事責任だけでなく、民事上の責任も求めています

盗撮行為を行った場合には、刑事責任、民事責任、ともに発生します。まず、加害者には、各都道府県の条例違反として刑事責任。また、被害者の性的羞恥心やプライバシーを侵害した不法行為として民事上の責任、つまり慰謝料も発生することになります。

刑事責任については警察が捜査を行い、検察官が刑事裁判を提起します。一方、民事責任については、被害者が自ら弁護士を付けるなどして請求するのが原則です。

ただし、実際には盗撮のような比較的軽微な犯罪については、費用対効果の観点などから被害者が民事訴訟まで提起することはほとんどありません。多くの場合、加害者側からの示談の申し入れに被害者が応じる形で、裁判外の示談交渉により慰謝料等の支払いがなされているのが実態と思われます。

ーーその場合、刑事責任の判断にも影響はあるのだろうか

被害者が慰謝料や示談金を受け取ることで、何の支払いもなされなかった場合と比べると被害者の被害感情は一定程度緩和されているはずだとみなされます。すると刑事責任の判断にも影響することになります。

さらに、示談の際には、これ以上加害者に対する処罰を求めないことなどが示談金支払の条件とされるのが一般的です。このようなことから、示談に応じた場合、事情によっては、加害者が不起訴処分となり刑事責任を問われないこともありえます。

ーーなお、示談金額はどのように決まるのか

示談交渉において、示談金額は話し合いの結果で決まります。撮影された内容や盗撮の態様・回数などのみならず、被害者の意向や加害者の資力など、様々な事情が金額に影響することになります。そのため一概には言えないものの、示談金の額は10万円から30万円程度となっている例が多いと思われます。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

大森 景一
大森 景一(おおもり けいいち)弁護士 大森総合法律事務所
平成17年弁護士登録。大阪弁護士会所属。同会公益通報者支援委員会委員など。 一般民事事件・刑事事件を広く取り扱うほか、内部通報制度の構築・運用などのコンプライアンス分野に力を入れ、内部通報の外部窓口なども担当している。著書に『逐条解説公益通報者保護法』(共著)など。

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