わざと穴をあけたコンドームを使って、交際相手の女性と性行為をした男性が、裁判所で有罪判決を受けた。そんなカナダ発のニュースが話題になっている。
ロイター通信によると、カナダの最高裁は、女性が「コンドームを着けたうえでの性行為」には同意していたが、「無防備な性行為」には同意していなかったと判断。男性に対して、「性的暴行の罪」で禁錮18カ月の刑を言い渡したという。男性は「相手女性を妊娠させて、交際関係の悪化を防ごう」と考え、行為に及んだとされている。
もしも日本で、今回のようなケースがあった場合、同じように「性犯罪」として処罰されるのだろうか。冨本和男弁護士に聞いた。
●「準強姦罪」の成立が問題となる
「今回の事件に直接あてはまるような、そのものズバリの罪は、日本にはありません。もっとも近いものは『準強姦罪(刑法178条2項)』でしょうか・・・」
冨本弁護士はこのように切り出した。準強姦罪とはどんな犯罪だろうか。
「準強姦罪はざっと説明すると、酒や薬などによって、正常な判断ができなかったり、抵抗できなかったりする状態の女性を姦淫するという犯罪です。
この行為を罰することで、刑法が守ろうとしているのは、被害者の『性的意思決定の自由』といえます。準強姦罪の典型例は、女性が酒に酔って抵抗できなくなっていることに乗じて、性交渉をするような場合です」
今回の「穴あきコンドーム」のケースは、典型例とは少し違う気がするが、準強姦罪が成立した事例で、近い内容のものはあるのだろうか。
「似たような事例では、加害者が被害者に病気の治療と誤信させて、性行為に及んだというケースで、準強姦罪の成立を認めた裁判例があります。
被害者の知識や性格にもよるでしょうが、このケースでは、治療行為のために必要だと信じさせられた被害者が抵抗・拒絶できない状態になり、性的意思決定の自由が侵害されたと判断されたわけです」
●女性は「抵抗や拒絶ができない状態」になっていたか
では、今回の「穴あきコンドーム」の事例で、準強姦罪は成立するのだろうか?
「もし裁判になった場合は、判断が分かれるかも知れませんが、私は準強姦罪は成立しないと考えます。
単に『女性に正常なコンドームを付けたと思い込ませたこと』をもって、『女性を抗拒不能(抵抗や拒絶ができない状態)にした』と評価するのは難しいでしょう。
女性は性行為自体には同意していますので、女性の性的意思決定の自由が侵害されたとまでは言いにくいと考えます」
冨本弁護士はこのような見解を述べていた。