
高い壁を乗り越えた時、その壁はあなたを守る盾になる
書面で人の心を動かせる仕事と知って、興味が湧いた
私は、母子家庭に育ちました。
母には苦労をかけましたので、将来は早く自立して親孝行をすると決めていました。
自分にはどんな仕事が向くか分からなかったのですが、中学生・高校生の頃、学校に提出した読書感想文を、国語の先生に褒められたことがありました。 単純な私は、その出来事を機に、なんとなく「将来は文章を書く仕事もいいかもしれない」と考え始めました。
高校生になって、具体的に進路を考えるようになり、自分でいろいろと調査をしたり、高校OBである弁護士と会って話を聞いたりする中で、書面を使って裁判官を説得するという弁護士の仕事に興味を持ちました。
自分が得意とする文章力を活かして、社会のために貢献できる弁護士の仕事は、一生の仕事として、きっと選ぶ価値がある。
そう信じた私は、迷わず法学部・法科大学院へ進学。
2015年に弁護士登録を果たしました。
弁護士になって初めて学んだ「交渉」の奥深さ
弁護士として働き始めると、裁判になるケースよりも,交渉に携わる場面が圧倒的に多く、弁護士業の魅力は「書面づくり」というよりも、むしろ「交渉ごと」に詰まっていると思うようになりました。
一口に「交渉」と言っても、その方法は、トラブルの内容や関係者の性格によって千差万別です。 そのため私は、初回相談にかなりの時間を割きます。 依頼者が何を求めているのかをヒアリングして、希望する結果を齟齬なく把握することが一番大事だからです。
ヒアリングが済んだら、相手方と交渉する順番や交渉内容などを考え、丁寧に書面を作ります。 書面の内容も、ただ言いたいことをつらつらと書き綴るのではなく、時間とお金のバランスやそれに伴う利益やリスクを導き出して、関係者双方の利益を考えて主張することを重要視しています。
書面作成にあたっては「何を書くか」よりも「何を書かないか」が重要であったりもします。書面は作成することに意味があるのではなく、交渉を有利に運ぶための道具・手段なのです。
また、交渉する場所にも気を遣います。 例えば、犯罪被害に遭った方との示談交渉では、法律事務所の相談室などの密室では行わず、カフェやファミレスなどをオープンスペースを利用する場合が多いです。
これは「威圧的な雰囲気の中で言いたいことが言えずになんとなく頷いてしまった」という人をなくすためです。
交渉の奥深さを知って、仕事にもっと精が出るようになりました。
これからも、常に関係者の事情や精神状態に合わせて交渉方法を模索し、フットワーク軽く、柔軟に対応できる弁護士であり続けたいです。
法律知識以外にも、必要な知識は山ほどある
弁護士の仕事をしていると、法律知識以外の知識も勉強しなければならないと実感することがあります。むしろ,純粋に法律のみで解決できる問題は、少ない印象です。
少し前に、ある不動産トラブルを担当した時にも、そう感じました。
それはいわゆる、投資マンション詐欺と呼ばれるものでした。
「絶対利益がでるからと言われ、住宅ローンを組んで、マンションを購入しました。しかし、投資を始めても利益は一度も出ず、赤字続き。これは詐欺なんじゃないかと思うんです」と、肩を落とす依頼者。
詳しくお話を聞いていくと、彼がサインをしてしまった大きな理由が、投資会社の「この物件を買うことは節税対策になる」という一言だったことが判明。
契約時に渡されたという、節税スキームを説明する書面が証拠として残っていました。
これはどうも怪しい。
本当に節税対策になるのだろうか。果たして節税スキームと言えるのだろうか。
隅々まで、くまなく調べた方がいいと思いましたが、当時の私は、税に対する知識に自信がなかったので、税金の専門家である税理士の先生に協力を仰ぎました。
調査の結果、一般的・常識的に考えて、節税のスキームとは言えないという結論が出たので、相手方には「早急に対処しないのであれば、こちらは裁判も辞さない考えである」という旨の書面を送りました。
すると、相手の態度は急激に軟化。最終的には、購入額の9割以上の値段で買い取ってもらうことで合意することができ、無事に解決いたしました。
住宅ローンを組んでいたので、解決した後に複雑な処理が重なって大変でしたが、このトラブルを担当したことは、法律以外の知識の重要性を学ぶ良いきっかけになりました。
さまざまなトラブルを体系的かつ根本的に解決できる弁護士として信頼されるために、法律に加えて、税金、会計、登記、社会保障、福祉などの知識も常日頃から勉強を続けています。
人を助けること、それは人間の本能なのかもしれない
「先生、助けてください」
少し前に、外国籍の青年が事務所を訪れました。
彼は憔悴した面持ちで、こう続けました。
「交通事故に遭い、麻痺が残る体になりました。後遺症があるだけでもこんなに不自由でしんどいのに、保険会社はそんな私の辛さを軽視するような発言ばかり。とても傷つきました。私にはどんな選択肢が残っていますか」
なんという偶然なんだ、と驚きました。
実は私も、昔、交通事故に遭い、似てたような経験をしたことがあるんです。 怪我の影響で不便な生活に戸惑っている中で、保険会社から何度もしつこく示談するように求められ、知識がなかった当時の私は、やむなく書類にサインをしてしまいました。
法律を勉強し始めて初めて学んだことですが、交通事故被害者には「逸失利益」といって、交通事故に遭わなければ本来もらえたであろう利益をもらえる権利があります。 多くの場合は、本来もらえていたはずのお給料から算出されることになります。
しかし権利があるとはいえ、簡単なことではありません。
しかも、この外国籍青年の場合、日本の大学を卒業し、日本での就職を考えていましたので、母国で働いた場合ではなく、日本で働いた場合に得られたはずの給料を参考にして、逸失利益を算定する必要がありました。
さまざまな難条件が重なっていましたが、「せっかく夢見て日本で勉強していた外国人留学生を、これ以上失望させたくない」という強い思いが溢れ出ました。
彼の母国語を話す知り合いに通訳を頼んだり、一緒に治療先の病院に行って医師と面談したりと、できることを確実に積み重ねた結果、1年半という長い期間を経て、後遺障害等級を7級から5級に引き上げることに成功。数千万円の損害賠償を獲得しました。
この経験を通して、私は「誰かを救いたい、守りたいと思うことは、人間の本能なのかもしれない」と考えるようになりました。 この交通事故案件でも、成功する保証はありませんでしたが、とにかく目の前の傷ついた依頼者に少しでも元気になってもらいたいと、その一心で仕事をしていたように思います。
使命感で動く時、人間は最も強く優しくいられるのかもしれません。
苦しみを経験するから、幸せの有り難みが分かる
生きていると、辛いことが起こったり、予測していなかったことが起こったりします。
また「泣きっ面に蜂」ということわざがあるように、悪いことが重なって起こる時もあります。
いま、辛く苦しい時期をお過ごしの方がいたら、ただ一言「私も同じだったよ」と伝えたいです。
私もこれまで生きてくる中で、悪い出来事が重なって、身体的・精神的に二重苦だった時期がありました。 でもそんな時、家族や友人の言葉や優しさに救われ、立ち直ることができました。
誰かが話を聞いてくれるだけでも、人は安心できて、一歩前に進む力を蓄えることができます。ひとりで塞ぎ込まずに、信頼できる人に悩みを共有してみてくだい。きっと心が楽になるはずです。
不安なことや実務的な質問がある場合は、先延ばしにせず、早めにご相談にいらしてください。私が全力でサポートいたします。