裁判所のウェブサイトになりすました「偽サイト」の存在が確認されたとして、最高裁が公式Xアカウントで「偽サイトにアクセスすると被害を受けるおそれがある」と注意を呼びかけている。
弁護士ドットコムニュースの記者も、気づかぬうちに「偽サイト」にアクセス。本物のサイトとほとんど外見上の見分けはつかなかった。偽サイトは閲覧者をチャットに誘導しており、実在する「女性弁護士」の名前と顔写真を悪用していた。
編集部が「偽サイト」を確認した4月16日以降、サイトを閲覧することができなくなった。最高裁が働きかけたのか尋ねたところ、取材に「なりすましサイトの存在は認識しておりますが、具体的な対応については回答を差し控えます」とした。
●すぐには異変に気づかなかった
弁護士ドットコムニュースの記者は4月15日夜、裁判所のウェブサイト(https://www.courts.go.jp/index.html)で調べ物をしていた。
翌4月16日、昨夜の続きをしようと、あらためてサイトにアクセスしたところ、ページの右下に「東京高等裁判所」のチャットができていることに気づいた。
あとでわかることだが、このサイトは前日にアクセスしていたサイトではなく、なりすましの偽サイトだ。本物のサイトとは、URLがことなっていた。
ただ、まだこの時点では記者は気づいていない。昨夜は閲覧できた資料にアクセスできなくなっていて、おかしいとは感じたが、なりすましサイトだとは思えなかった。
チャットでは、女性の名前を名乗る相手から「詐欺被害の資金回収や法律問題についてお困りの方へ、無料相談を受け付けております」として、あるURLが紹介された。
リンクをクリックすると、どうやらLINEの公式アカウントに飛ばされるようだ。
※なりすましサイトです(女性の写真と名前への加工は編集部)
多少の違和感はあったが、こうしたサポート用のチャットは、役所などの公的なサイトでもよく見かけるものであり、初めて見たときは完全に不審だとまでは感じなかった。
とはいえ、前日まで存在しなかった「裁判所のチャット」に関心をもち、反応などもみるため、投稿することにした。
記者:あなたは誰ですか? 女性の顔写真アイコン:「もしかして、詐欺に遭われたのでしょうか?」 記者:いいえ、◯◯(※女性の名前)さんのプロフィールを尋ねています 女性の顔写真アイコン:「高等裁判所の受付を担当しております◯◯◯(※女性のフルネーム)と申します。何かお力になれることがございましたら、お知らせください。」
流石に職員がフルネームを名乗ることは考えにくい。
女性の名前をネット検索すると、いわゆる「四大事務所」と呼ばれる大手法律事務所に所属する女性弁護士のページにたどりついた。チャットで表示されるプロフィール写真とも合致する。
大手法律事務所の公式サイトのプロフィール写真が、なりすましサイトでも悪用されていたのだ。
●幾重にもかけられた網
実在する弁護士にとっても迷惑極まりない。無断でなりすましサイトに顔と名前が使われることは、肖像権や著作権の侵害にあたりうる。
なりすましの偽サイトを見つけたのは4月16日午前中だったが、同日午後3時半ころには、サイトは閲覧できなくなっていた。
なりすましサイトは中国語(「管理者によって停止している」)が表示されるようになった。(4月16日午後3時台)
裁判所の公式サイトと、偽サイトを並べてみると、ほとんど見分けがつかない。偽サイトのトップページでは、「なりすましサイトへの注意」まで呼びかけていて、盗人猛々しい。
裁判所の公式サイト(https://www.courts.go.jp/index.html)
裁判所のなりすましサイト
裁判所のなりすましサイトは他にも存在する可能性がある。少しでも違和感があれば、URLを確認してみることが自衛となる。不用意にアクセスすると、詐欺などの被害に巻き込まれる可能性があり、注意が必要だ。
【重要なお知らせ】
— 最高裁判所 (@SupremeCourtJPN) April 1, 2025
現在、裁判所ウェブサイトになりすました偽サイトの存在が確認されています。偽サイトにアクセスすると被害を受けるおそれがありますので、ご注意ください。
裁判所ウェブサイトの正しいURLは、「https://t.co/mjUFP8UBG3」です。
ご利用の際にはURLを必ずご確認ください。
ちなみに最高裁の公式アカウントによる注意喚起は、4月1日のことだった。弁護士ドットコムニュースの中には「エイプリルフールかも?」と思ってしまった記者もいた。
(※4月17日:最高裁への取材内容を追記しました)