2016年7月に神奈川県相模原市で起きた障害者施設殺傷事件をめぐり、放送法改正に伴って惜しまれながら公開を終了したNHKの特集サイト「19のいのち」が、事件から10年となるのに合わせて新たに公開された。
弁護士ドットコムニュースの取材に対し、NHK広報局は「前に公開していたサイトの再開ではなく、今回新たに制作しています」と回答した。
●被害者の多くが匿名、NHKが生きた証を残すサイト立ち上げ
事件は2016年7月26日に発生。神奈川県相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」に、元職員の植松聖氏が侵入し、入所者19人を殺害し、26人に重軽傷を負わせた。その後、植松氏は死刑が確定した。
事件をめぐっては、殺された入所者の名前を神奈川県警が発表せず、裁判でも多くの被害者が匿名とされた。
こうした中、亡くなった被害者の生きた証を残そうと、NHKは特集サイト「19のいのち」を立ち上げ、犠牲者19人の似顔絵、遺族が語る思い出、裁判の詳細、関係者へのインタビューなどを掲載していた。
そして、トップページに次のような文章を掲載していた。
<"残虐な事件を、思い出したくないけれど、忘れてほしくない" あるご遺族が語ってくださった言葉です。19人の方々を知る人たちが語ってくださった思い出のかけらを集めて、確かに生きてきた「19のいのち」の証しを、少しずつここに刻んでいきたいと思っています。>
●放送法改正に伴って2025年9月に公開終了
だが、2025年に放送法が改正されたのに伴って、NHKは9月30日に「19のいのち」の公開を終了。その他の特集サイトも次々と閉鎖した。
当時、NHKは弁護士ドットコムニュースの取材に、「現時点で、公開を終了したコンテンツを閲覧できるようにする予定や計画はありません」と説明していた。
そんな中、事件から10年を迎える今年7月、終了したはずの特集サイトとほぼ同じ見た目のサイトが閲覧できるようになり、SNSで「残ってよかった」「復活している」といった書き込みが続いた。
新しいサイトは「19人をたどって」というタイトルが付けられているが、以前のサイトにあった文章がほぼそのまま冒頭に引用されている。19人の似顔絵や年齢・性別、遺族らの証言を紹介する構成も、旧サイトを踏襲する形になっている。
2025年9月で公開を終了したサイト「19のいのち」(アーカイブ閲覧サービス「Wayback Machine」より)
●「以前公開していたサイトの再開ではない」
NHKは、公開を終了したコンテンツを再び見られるようにする予定はないと言っていたが、復活したのか。
弁護士ドットコムニュースが取材を申し込むと、NHK広報局は7月24日付の文書で、「特集サイトは、インターネットサービスの必須業務化より前に公開していたサイトの再開ではなく、今回新たに制作しています」と回答。その上で、次のようにコメントした。
「NHKのインターネットサービスの必須業務化に関する制度『NHK 番組関連情報配信業務規程』に適合するよう精査した上で、亡くなった方々に関する情報や裁判の記録など、過去の報道内容や関連情報を有機的にまとめ、最新の情報と対照できるようにしています」
経緯はともかくとして、この特集サイトには、多くの被害者や遺族、それに取材した記者らの思いが込められており、事件を伝える貴重な記録になっているのは間違いない。