夏の職場で、薄手のシャツから男性の乳首が透けて見える──。
いわゆる「透け乳首問題」が、この夏もSNS上でたびたび話題になっている。
Threadsには、こんな女性の声がある。クールビズでネクタイをしないのはいいとしても、シャツの下には肌着を着てほしいと強調する。
「おじさんの透けてる肌とか乳首とか見たくないんです」。
仕事中に目に入ることが多く、気分が悪くなるのだという。そして、こう続けていた。
「なにもされていないのにセクハラ受けてる気分になります」。
不快に感じているのは女性ばかりではない。
ある男性は「同性でも気分が悪くなる」として、上司に注意してほしいと会社に伝えた。ところが返ってきたのは「ワイシャツの本来の着方だから」という言葉で、逆に自分のほうが常識のない人間のような扱いを受けて終わったという。
男性本人は特別なことをしているわけではなく、シャツを着ているだけ。それでも、見せられる側は不快感を抱くこともある。職場で男性の乳首が透けて見えることは、ハラスメントにあたらないのか。寺林智栄弁護士に聞いた。
●直ちにセクハラとは評価されにくい
──男性の乳首が透けて見えるのはセクハラですか。本人に不快にさせる意図はなくても、「環境型」のセクハラとして問題になり得るでしょうか。
セクハラとは「触る」「誘う」といった直接的な行為に限りません。性的な言動によって職場環境が不快なものとなり、仕事に支障が生じるものを「環境型セクハラ」と呼びます。
これにあたるかどうかは、「本人に不快にさせる意図があったか」だけでは決まりません。言動の内容や頻度、職場の状況、受け止め方などを総合的に考慮して判断されます。
今回のケースのように、単に薄手のシャツを着ていて乳首が透けているというだけでは、直ちにセクハラと評価されるケースは多くないでしょう。
本人に性的なアピールや挑発の意図がなく、一般的な服装をしているだけであれば、それだけで法的な問題になる可能性は高くありません。
●指摘されても改善しなければ問題になりうる
──周囲が「不快だ」と伝えても改善しない場合はどうでしょうか。
もっとも、周囲から具体的な指摘や配慮を求められたにもかかわらず改善せず、その結果として職場環境が著しく悪化しているような事情があれば、職場環境への配慮義務の観点から問題となる余地はあります。
ただし、その場合でも直ちにセクハラと断定されるわけではなく、服装の必要性や職種、会社の服装規程なども含めて個別具体的に判断されます。
●互いに働きやすい環境を
とはいえ、職場では、お互いが快適に働ける環境を維持することが重要です。
本人に悪意がなく、またセクハラに該当しないとしても、男性の乳首透けを不快に思うかたがいることは頭においておくと、大きなトラブルに発展する前に対策がとりやすいかもしれません。