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座るだけで「1960円」居酒屋のえげつない料金システム…全部支払わないとダメ?
話題となった伝票(「はま@hamataku4」さん提供。一部、編集部で画像加工をしています)

座るだけで「1960円」居酒屋のえげつない料金システム…全部支払わないとダメ?

飲食店などで食事する機会が増える忘年会シーズン。書き入れ時でも懸命にサービス提供している店舗も多い中、「ぼったくられちゃった」というツイートとともにアップされた居酒屋の伝票写真が話題となっている。

伝票には、2人で入店し、串料理やハイボールなどを注文した品物が記載されているが、それに加えて、お通し代1人460円、席料1人500円、週末料金1人500円、年末年始料金1人500円がお代として請求されているようだ。

その結果、小計7840円のうち、飲食代以外の料金がちょうど半分の3920円を占めることとなり、さらにサービス料10%と消費税10%が上乗せされ、支払総額は9408円となっている。

ツイートした「はま」さんは、弁護士ドットコムニュースの取材に対して、「友人と入ったお店で、料金について何も説明はありませんでした。会計をしようとした際、店員にいきなり1人辺り2ドリンク制と言われ追加注文したことを覚えています。その後あらためて会計する際、何も言われず伝票と同じ値段を請求されました」と答えた。

今回のような料金の請求は法的に問題ないのだろうか。上田孝治弁護士に聞いた。

●「合意」の成立していない部分は支払う必要がない

——「ぼったくり」だとして、支払い拒否などはできるのでしょうか。

何をいくらで売り買いするかは、契約当事者(店と客)が自由に決めることができますので、飲食の提供に関連して、お通し代、席料、サービス料などを支払う内容の合意が成立しているとすれば、その金額が高すぎるというだけでは、支払い拒否は基本的にできません。

ただし、契約した当事者にとって、まったく想定外の金額になっているというケース、たとえば週末料金1人10万円などは、そもそも、何についていくら支払うかという点に関する合意自体が成立していなかったことが考えられます。

合意自体が成立していないのであれば、当然その部分に関する料金を支払う必要はありません。

——今回のようなケースは法的に問題ないのでしょうか。

お通し代、席料、週末料金、年末年始料金、サービス料に関しては、これらの金額を含む大まかな内容について、事前に店員から客へ説明があったり、メニューなどにわかりやすく表示されたりしていれば、客がそれを踏まえつつ飲食サービスを受けたことで、これらの料金についても支払う合意が成立していたと考えられます。

この点、通常の居酒屋においては、数百円程度のお通し代が発生することはある程度一般的になっていますので、お通し代については合意の成立が認められやすくなります。

しかし、そのほかの名目の料金や、名目を問わず金額が高すぎる設定の場合は、客にとって想定外となり、不意打ち性が大きくなるため、合意の成立が認められにくくなります。

●支払い拒絶が最も有効な方法

——現実的にはどのように対応すればよいのでしょうか。

まず、事前の説明やメニューなどへの表示がないにもかかわらず、会計時にいきなり料金を請求されたような場合、それらの合意は成立していないと考えられますので、飲食そのものの代金は支払いつつ、それ以外の部分については支払わないことが重要です。

いったん支払ってしまうと、あとで客のほうからお店に対して返金を求めて行動しなければなりませんので、結局、手間や労力を考えて泣き寝入りになりがちです。

請求されると断りにくいという人もいると思いますが、合意していない料金を支払わないというのは、ごく当たり前のことですので、ひるむことなく支払いを拒絶することが最も有効な方法です。

もし、すでに支払ってしまった場合は、各地の消費者センターなども活用しながら、粘り強く返金交渉をしましょう。

——トラブルに遭わないようにするための心構えを教えてください。

飲食店では、いろいろな名目で飲食以外の料金を請求される可能性があることを想定しながら、メニューなどの表示に注意を払い、不明な点があれば、注文前に直接確認するようにしましょう。

その結果、納得いかない請求がされる可能性がある場合は、できるだけ早く支払いをしない意思を示す必要があります。場合によっては、退店することも検討しましょう。

プロフィール

上田 孝治
上田 孝治(うえだ こうじ)弁護士 神戸さきがけ法律事務所
消費者問題、金融商品取引被害、インターネット関連法務、事業主の立場に立った労働紛争の予防・解決、遺言・相続問題、不動産・マンション管理法務に特に力を入れており、全国で、消費者問題、中小企業法務などの講演、セミナー等を多数行っている。

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