結婚式の約1年前に予約をキャンセルしたカップルに対し、式場の運営会社がキャンセル料約128万円の支払いを求めた訴訟で、東京地裁は式場側の請求を棄却した。判決は9月29日付。
契約で定められたキャンセル料のうち、挙式の364日前から181日前までの解約に適用される条項について、東京地裁は「申込金と実費」を超える部分を消費者契約法により無効と判断した。式場側は控訴する方針だ。
●宿泊付きプランを344日前にキャンセル
原告は関東地方にある式場の運営会社で、被告は東京都在住のカップル。
カップルは2023年、式場の運営会社が提供する2泊3日の宿泊付き結婚式プランを平日に挙式する日程で契約した。判決によると、申込金10万円を支払い、見積額は約428万円(税込)だった。
しかし、カップルは挙式の344日前に、電話とメールでキャンセルを伝えた。
契約では、挙式の364日前から181日前までに解約した場合のキャンセル料を「申込金と見積額(税抜)の30%」と定めていた。
式場側は約128万円の支払督促を東京簡裁に申し立てたが、カップル側が異議を申し立てたため訴訟に移行し、その後、東京地裁に移送された。
裁判の争点となったのは、このキャンセル料が、消費者契約法9条1項1号の「平均的な損害」を超えるかどうかだ。
同号は、解約の時期などに応じて定められたキャンセル料について、同種の契約の解除によって事業者に生じる「平均的な損害」の額を超える部分を無効としている。
●逸失利益は認めるも「広告費の加算」は否定
裁判所はまず、「平均的な損害」について、解約によって得られなくなった利益(逸失利益)と実費を合わせた額とした。
カップル側は、契約後に一度も打ち合わせがおこなわれていなかったことなどから、式場側に逸失利益は生じないと主張していた。
しかし、裁判所は、式場側は「本件契約を締結したという事実のみで」代金を得ることへの合理的な期待を抱く立場に立つと指摘。打ち合わせの有無といった個別の事情は、逸失利益を考慮すべきかどうかとは無関係だとして、この主張を退けた。
一方、式場側は、キャンセルされた日程を再販売するための広告費や内覧会費用も損害に加えるべきだと主張した。
これについて裁判所は、広告費などは事業を続けるうえで恒常的に支出する販管費であり、解約によって生じた損害ではないとして、加算を認めなかった。
●180日以上前なら「通常は再販売できる」
では、式場側が得られなくなった「逸失利益」はいくらになるのか。
判決は、宿泊付きプランを扱う事業者の多くが、180日前までの解約料を「申込金と実費」と定めていることなどを踏まえ、宿泊付きプランであっても、180日以上前の解約であれば、通常は別の顧客に再販売できると判断した。
式場側は、宿泊付きプランで需要が限られると主張したが、裁判所はこの推定を覆す事情は認められないとした。
その結果、この時期の解約で平均的に生じる逸失利益は0円と判断した。
この場合の「平均的な損害」は、解約時までの労務費相当額と実費の合計になるとし、労務費相当額は、同業他社の約款に照らして申込金額とするのが相当だとした。
今回のケースでは打ち合わせは実施されておらず、実費も生じていなかったと考えられ、すでに支払われた申込金10万円がキャンセル料に充当されるため、カップル側に追加で支払うべき金額はないと結論づけた。
●式場側は控訴へ
カップル側の代理人は、弁護士ドットコムニュースの取材に「逸失利益をそもそも考慮すべき事案ではないという主張が否定されたのは残念だが、結論としては妥当なものと考えている」とコメントした。
一方、式場側の代理人は「控訴する。判決に不服がある部分は、控訴審の中で主張していきたい」と話した。
(弁護士ドットコムニュース編集部・塚田賢慎)