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「夢を叶えたのに…」裁判所職員から簡裁判事になった男性、オンラインカジノで転落…弾劾裁判で語った後悔
10月28日に開かれた弾劾裁判(撮影:塚田賢慎)

「夢を叶えたのに…」裁判所職員から簡裁判事になった男性、オンラインカジノで転落…弾劾裁判で語った後悔

オンラインカジノで賭博を繰り返し、国家公務員宿舎の管理組合の共益費約278万円を着服した裁判官が、自らの罷免を受け入れる言葉を口にした。

常習賭博や業務上横領などの罪で有罪判決が確定した新潟簡裁の森本暁史判事に対する弾劾裁判の初公判が10月28日、裁判官弾劾裁判所(裁判長・石井準一参院議員)で開かれた。

森本判事は弁護人を伴わず、1人で出廷。訴追事実を認め、罷免を争わない姿勢を示した。

「私のやった行為というのは、国の裁判制度の信頼を著しく失うものですから、その点について争うことはありません」

法廷では、借金を重ねて賭博から抜け出せなかった経緯や、刑事事件の判決を書きながら賭博を続けていたことへの後悔を語った。

審理はこの日で結審し、判決期日は追って指定される。(弁護士ドットコムニュース編集部・塚田賢慎)

●共益費278万円を着服、バカラ賭博を繰り返す

森本判事の刑事裁判では、秋田地裁(岡田龍太郎裁判官)が7月23日、懲役3年、執行猶予4年を言い渡し、その後、判決が確定した。

判決によると、森本判事は秋田県横手市の公務員宿舎で管理組合の共益費を管理する当番をつとめ、2023年4月から2025年5月にかけて、計278万5200円を自分の口座などに入金して着服した。

また、2023年4〜9月にはオンラインカジノでバカラ賭博を繰り返し、2025年5月には着服の発覚を免れるため、銀行の取引明細表を加工して偽造し、後任に送った。

秋田地裁は賭博の常習性が顕著だと指摘。法令の遵守を特に強く求められる立場だったとする一方、「職業上の地位や権限を悪用した要素は見出し難い」とも述べ、全額弁償などを考慮して刑の執行を猶予した。

●借金返済のためのFX、オンラインカジノにも手を出す

この日の弾劾裁判には、検察官役をつとめる裁判官訴追委員会から、上川陽子委員長(衆院議員)、古庄玄知委員(参院議員)らが出席した。

画像タイトル 弾劾裁判所

訴追委員会は、常習賭博、業務上横領、有印私文書偽造・同行使の3つの罪を挙げ、裁判官弾劾法2条2号の「職務の内外を問わず、裁判官としての威信を著しく失うべき非行」にあたると主張している。

上川委員長が訴追事由を読み上げた後、裁判長から認否を問われた森本判事は「間違っているところはありません」と答えた。

続いて、古庄委員が冒頭陳述に立ち、森本判事が裁判所職員を経て簡裁判事に任官した経緯や、賭博にのめり込んだ背景を説明した。

初めて単身赴任して以降、住宅ローンや帰省費用をクレジットカードのリボ払いで賄うようになり、支払いを滞らせないためにFX投資にのめり込んだという。

借金が増える中、さらにオンラインカジノに手を出した。

森本判事は「発覚しなければ大丈夫だろう」と考えて賭博を繰り返し、その回数は約6万回に及んだ。裁判官としての執務時間中にも賭博をしていた履歴が確認されたという。

●元妻も知らなかった賭博、今後は破産手続きも

証拠調べでは、訴追委員会が提出した捜査報告書や供述調書の要旨が読み上げられた。

森本判事は、借金の返済にあたり、両親からの援助を受けていたという。

元妻は自身名義の定期預金も取り崩していたが、捜査が始まるまでオンラインカジノのことは知らなかったといい、現在は離婚している。

森本判事は、刑事裁判の判決後に訴追委員会から受けた事情聴取において「訴追されるのも、罷免されるのも当然と思っています」と述べたという。

また、住宅ローンや学資ローン、金融機関などへの返済が残っており、今後は破産手続きをすることになるとも説明したという。

●「裁判官になる夢を叶えたのに、バカなことをした」

刑事裁判の被告人質問にあたる被訴追者への質問も、古庄委員が担当した。

オンラインカジノが違法だという認識について問われた森本判事は、始めた当時は「まだグレーゾーンと呼ばれていた。まだ罰せられるものかわからなかった」と説明した。

一方、「少なくとも令和6年(2024年)には犯罪行為にあたるだろうと思っていた」と述べた。

森本判事は司法試験に合格しないまま裁判所に入り、「裁判業務をどうしてもやりたい」という思いから簡裁判事に任官したという。

しかし、任官の時点でもオンラインカジノを続けていた。

そのことを指摘されると、「(裁判官になる)夢を叶えたのに、バカなことをした」と悔やんだ。

賭博を続けながら、刑事事件を含む判決文を書いていたことについても、「本当に申し訳なく思っている」と答えた。

●「私のような者が判決を出したら、受けた人はどう思うのか」

さらに、賭博をしながら刑事裁判を担当していたことが、裁判所への信頼にどのような影響を与えるか問われると、こう答えた。

「私のような者が刑事手続きをして判決を出したらどう思うのか。受けた人はどう思うのか。とんでもなく愚かな行為で、司法制度の信頼を損ねると思っていました」

発覚への不安は、ずっと感じていたという。それでも賭博をやめられなかった理由について、こう振り返った。

「私は立場上、破産もできません。お金を払わないといけない状況で、払わないとこのまま生きていけないと思い込んでいました」

裁判官という立場では債務整理もできないと思い込み、弁護士に相談することもなかったという。

●「人生はまだまだ続きます」訴追委員が語りかける

秋田地裁の刑事判決について問われると、森本判事は「執行猶予がもう少し長くなると思っていた」と明かした。

古庄委員が「秋田の裁判所の人々が、あなたに早く立ち直ってほしいとエールを送ったのではないか」との見方を示すと、「私も懲役3年、執行猶予4年は温情をかけていただいたと思います」と答えた。

質問の最後に、古庄委員はこう語りかけた。

「あなたは裁判官をやめないといけなくなると思いますが、人生はまだまだ続きます。何があなたの罪の償いになるかよく考えて人生を過ごしてください」

森本判事は「はい、ありがとうございます」と答えた。

裁判員からの質問はなかった。

●「罷免を受けるのは当然だと思います」

上川委員長は最終意見で、刑事裁判で犯罪が認定された裁判官の弾劾裁判は過去に4件あり、いずれも罷免判決が出ていると指摘した。

今回の事件は、法定刑の重さの点でも過去の事件を上回るなどとし、「裁判官としての威信を著しく失うべき非行に当たることは明らか」と述べ、罷免を求めた。

森本判事は最終陳述で、改めて謝罪した。

「私のしでかした愚かな行為でご迷惑をかけて、本当に申し訳ございませんでした。罷免を受けるのは当然だと思います」

今後については、社会に役立ちたいとの思いから、司法試験予備試験を経て弁護士資格を取ることも考えたという。

しかし、罷免されると弁護士になる資格を得られなくなることがわかり、「どうやって恩返しをしようかわからない。何らかの形で頑張りたい」と語った。

●罷免されれば制度創設以来9人目

裁判官は憲法78条により、原則として「公の弾劾」によらなければ罷免されない。刑事裁判で有罪判決が確定しても、それだけで職を失うわけではない。

最高裁は刑事裁判の判決に先立つ5月13日、裁判官訴追委員会に罷免の訴追を請求していた。

弾劾裁判は、衆参両院の議員10人ずつで構成する訴追委員会が検察官役として罷免を求め、両院の議員7人ずつ、計14人が裁判員として判断する。

罷免判決には、審理に関与した裁判員の3分の2以上の賛成が必要で、不服申し立ての制度はない。

罷免された裁判官は、弁護士や検察官になる資格も失い、退職金も支給されない。資格の回復を請求できるのは、罷免から5年が経過した後だ。

弾劾裁判所によると、1947年の制度創設以来、罷免の訴追を受けた裁判官は森本判事を含めて11人。これまでに8人が罷免されており、森本判事が罷免されれば9人目となる。

この日の審理には、裁判員14人のうち13人が出席。欠席した棚橋泰文衆院議員に代わり、予備員の國重徹衆院議員が加わった。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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