お笑い芸人のやす子さんが運営する子ども食堂が、一部の利用者による自転車での来店に頭を悩ませている。
東京都葛飾区にある子ども食堂「やすまったり」では、自転車で来店しないよう求めている。しかし、ルールを知りながら自転車で訪れ、近隣に駐輪する人がいるという。
やすまったりの公式Xは10月22日、「次回以降見かけたらやすまったり出禁とさせていただきます」と警告した。
子どもたちに無料で食事を提供する取り組みだが、近隣住民とのトラブルを避けるため、厳しい対応を打ち出したかたちだ。
そもそも、無料の子ども食堂でも、ルールを守らない利用者の入店を断ることはできるのだろうか。また、子どもが自転車で来店した場合、どのような対応が望ましいのだろうか。
●「見つけ次第、帰宅していただきます」と警告
「やすまったり」は、やす子さんが代表をつとめる会社が運営する子ども食堂だ。
今夏にオープンし、高校生までの子どもを対象に、週1回を基本として不定期に開催し、食事を無料で提供している。
公式サイトでは、専用の駐車場や駐輪場がないことが案内されている。
ところが、ルールを守らずに自転車で訪れる利用者がいるようだ。
公式Xは10月22日、次のように投稿した。
「自転車での来店は禁止です 知っているのに自転車で来て やすまったりの近くに停める方がいます。 近隣の方の迷惑になっています。
次回以降見かけたら やすまったり出禁とさせていただきます」
さらに、スタッフが周辺を巡回し、自転車で来店した人を見つけた場合には、帰宅してもらう方針も明らかにした。
●無料の子ども食堂でも「出禁」にできる?
では、法律上、子ども食堂の運営者は利用者を「出禁」にできるのだろうか。
結論からいえば、民間の子ども食堂でも、合理的な理由があれば、特定の利用者の入店を断ることは原則として可能だ。
そもそも、子ども食堂が無料で食事を提供しているからといって、誰もが無条件に利用できる権利を持つわけではない。
民間施設の所有者や管理者には、施設の安全や秩序を守るため、利用上のルールを定め、必要に応じて立ち入りを制限する権限がある。
今回のケースでは、自転車での来店を禁止しているにもかかわらず、近隣に駐輪する人がいるというものだ。
こうした状況が続けば、近隣住民との関係が悪化し、子ども食堂の運営そのものに影響が及ぶおそれもある。
そのため、周辺環境への配慮から自転車での来店を禁止し、ルールを守ってもらえない場合に利用を制限することには、一定の合理性があると考えられる。
ただし、ここで忘れてはならないのは、子ども食堂の利用者は、基本的に子どもたちだということだ。
ルールを守らなかったからといって、「出禁」にすることが適切とは限らない。
●「出禁」の前にできることは?
たとえば、ルールを知らずに初めて自転車で訪れた子どもと、禁止されていることを知りながら何度も自転車で来店する子どもとでは、事情が異なる。
子どもの年齢によっても、ルールへの理解度や、自分で移動手段を選べるかどうかは違うだろう。
そのため、まずは自転車で来店してはいけない理由を説明し、理解を求めることが大切だ。必要に応じて保護者に協力を求めるなど、段階的な対応も考えられる。
また、子ども食堂には、単に無料で食事を提供するだけでなく、子どもたちの居場所としての役割もある。
家庭の事情などによって、食事や居場所を必要としている子どももいるかもしれない。
そうした子どもにとって、利用できなくなることの影響は小さくない。
もちろん、運営者が近隣住民への配慮を求めたり、必要なルールを設けたりすること自体に問題があるわけではない。
ただ、利用を制限する場合にも、違反の内容や程度、子ども自身の事情などを踏まえ、できるだけ慎重に判断することが望ましいだろう。
●近隣への駐輪、法律上の問題は?
一方、自転車を近隣に停める行為についても、場所や方法によっては法的な問題が生じる可能性がある。
自転車は道路交通法上の「軽車両」にあたり、駐車に関する規制の対象にもなる。
たとえば、駐停車が禁止されている場所に自転車を停めたり、道路上でほかの交通の妨げになるような停め方をしたりすれば、道路交通法に抵触する可能性がある。
また、自治体の条例に基づく自転車の放置禁止区域では、放置自転車が撤去されることもある。
他人の私有地に無断で自転車を停めれば、土地の所有者や管理者との間でトラブルになるおそれもある。
ただし今回、具体的にどのような場所に自転車が停められていたのかは明らかになっていない。
したがって、実際の駐輪行為が法律違反にあたるかどうかは判断できない。
また、利用者が子どもであることも踏まえれば、法律違反になるかどうかを問題にするよりも、なぜその場所に自転車を停めてはいけないのかを理解してもらうことが重要だろう。
法律上は問題のない駐輪でも、近隣住民の通行を妨げたり、生活に支障を与えたりすることはあり得る。
子どもたちにも、そうした事情を知ってもらう必要がある。
●子どもたちの居場所を守るためにも
利用者にとっては「少しの間、自転車を停めるだけ」という感覚かもしれない。
しかし、そうした行為が重なれば、周辺住民の負担となり、子ども食堂の運営にも支障をきたしかねない。
子どもたちに無料で食事を提供する取り組みも、地域住民の理解や協力があってこそ成り立つ。
一方で、子ども食堂は、子どもたちが安心して食事をとり、過ごせる場所でもある。ルールを守らない子どもを遠ざけるだけでは、問題の解決につながらない場合もあるだろう。
大切なのは、子どもたちにルールの意味を理解してもらい、地域との良好な関係を保ちながら、活動を続けていくことではないだろうか。
子どもたちの居場所を守るためにも、利用する側と運営する側の双方に、理解と協力が求められる。