国際人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」と国際人権NGO「ビジネスと人権資料センター」は12月21日、アパレル・スポーツウェア企業に対して実施した「人権ポリシー」(人権方針)に関するアンケート調査の結果を発表した。(http://hrn.or.jp/activity/15018/)
人権ポリシーとは、企業が、基本的人権や労働における権利に対して、考え方を示したものだ。2団体は、アンケート調査を通じて、「一部のリーディングカンパニーを除いて、人権に対する取り組みが大きく立ち遅れている状況が浮き彫りになった」と指摘している。
●回答率は34%だった
この調査は、2団体が2018年7月から12月にかけて、日本国内を拠点に活動するアパレル・スポーツウェア企業62社に対して、アンケート票を発送・メールして、電話で回収した。背景には、2020年東京五輪・パラリンピックを前に、国内企業がILO(国際労働機関)条約をはじめとする国際水準の人権を守っているのか、関心が高まっていることがある。
「人権ポリシー」の開示をもとめたが、回答した企業は21社(約34%)だった。このうち、国際基準に即した人権方針・調達指針がある企業は、ファーストリテイリング、ワコールホールディングスなど12社にとどまった。人権方針がまったくない企業だけでなく、世界人権宣言やILO条約など、具体的な内容に取り込んでいない企業もあった。
サプライヤー(調達先)をどこまで把握しているか、という質問に対しては、「1次サプライヤーまで」と回答した企業が6社、「2次まで」が9社、「3次まで」が5社、無回答が1社だった。2団体は「コットン(木綿)をめぐっては、児童労働や健康被害など、深刻な問題があるにもかかわらず、原料調達まで把握している企業が少数にとどまった」と懸念を示す。
また、過酷な労働環境が社会問題となっている技能実習生制度をサプライヤーが利用しているかという質問については、「ある」と回答した企業が13社、「把握していない」が6社、「ない」は2社だった。一方で、技能実習生問題の実態に即した個別監査を実施している企業はまちまちで、十分な対策が講じられているのか懸念されるケースが多数みられたという。
●「人権に配慮していることがアピール材料になる」
ビジネスと人権資料センター日本代表の高橋宗瑠さんは「全世界の回答率は75%前後が多い。回答率が低いことは、非常に残念な結果だと思っている」「一部のリーディングカンパニーだけがどんどん先にいっていて、そのほかはもうちょっと頑張らないといけない状況にある。人権に配慮していることが、(投資も含めた)アピール材料になるということも把握していただきたい」とコメントした。