政府は3月28日、繁忙月に例外として認める残業の上限を「100時間未満」とすることなどを盛り込んだ働き方改革の実行計画をまとめた。一方で、医師の残業時間の上限については猶予を設ける。
医師についても時間外労働の規制の対象とするが、特殊性を踏まえた対応が必要として、2019年度の導入開始から、医師では5年間猶予される。2年後をめどに、医師の労働時間の上限規制を規制の在り方を検討する。
そもそも医師について残業時間の規制は一般の労働者と異なるのだろうか。残業時間の規制について猶予を設けることにはどのような背景が考えられるのか。鈴木沙良夢弁護士に聞いた。
●「医療現場は、個々の医師の長時間労働によって維持されている」
「医師についても、雇用されて賃金が支払われているのであれば労働者にあたるので、労働基準法が適用されます。
労働基準法では、原則として、1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働者を働かせてはならないことになっています(法定労働時間)。
ただし、現在は労使間で労使協定を結び、行政官庁に届け出ることによって、使用者は法定労働時間を超えた時間外・休日労働を労働者にさせることができるようになっています。いわゆる『36(さぶろく)協定』とよばれるものです。
この『36協定』による時間外・休日労働に対しても、厚生労働省による「労働基準法36条1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準」という制限があるのですが、例外規定があったり、罰則がないことから基準を守らない事業所があったりするなどして長時間の残業が常態化していました。
この度の『働き方改革』はこのような時間外・休日労働に法律で制限を加えようとするものですが、医師についてはこの制限を5年間猶予することが検討されています」
医師についてなぜ別個に考える必要があるのか。
「猶予の理由としては医師に『診療に従事する医師は、診察治療の求めがあった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない』(医師法19条)という応召義務があり、これとの兼ね合いを検討する必要があるとのことです。
医療現場は、個々の医師の長時間労働によって維持されているという現状があります。
医療機関としては時間外・休日労働の制限をされたとしても、現実問題として直ちに対応できないという実情があることも影響していると考えられます」