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社畜たちの春、花見の場所取りで早朝から「公園出勤」…残業代請求してみては?
4月3日、午前8時すぎ(東京都港区)

社畜たちの春、花見の場所取りで早朝から「公園出勤」…残業代請求してみては?

公園でブルーシートの上に寝そべったり、スマホやPCを膝に載せて作業したりーー。2017年も社畜たちの春に変わりはなかった。東京都港区のある公園では、花見シーズンになると、そんな光景が繰り広げられる。近所の住民によれば、「例年、3月末から4月の初めの花見シーズンになると、朝8時前から、ブルーシートの陣取り合戦が始まります」。

花見の場所取りのために、早朝から「公園出勤」する社畜たち。4月3日の午前8時すぎ、その公園を訪れてみると、確かに、彼らはいた。早朝出勤をいとわない、5人の社畜だ。

気温は10度。春の陽気とはいえ、ブルーシートの座り心地は快適とは言い難いだろう。中には、楕円形のラグを敷き、その上に寝そべる人もいた。PCを膝にのせて叩く人もいれば、ただぼんやりと焦点の定まらない目で遠くをみつめる人も。大半は、今にも営業先へ向かいそうなスーツ姿だが、場所取りの後は通常の業務が待っているのだろうか。

朝早くから公園で場所をとり、夜は遅くまで花見をするのは、社畜とはいえ過酷な任務だ。残業代は出るのだろうか。大和幸四郎弁護士に疑問をぶつけた。

●お花見は「業務」なのか?

「結論からいうと、場所取りも、お花見も『業務』としての条件を満たせば、ともに残業代は出るでしょう」

どのような条件が必要なのだろうか。

「残業代は『業務』に費やした時間に対して、発生するものです。そこで『お花見の場所取りのために早朝から並んだ時間』『夜のお花見の時間』が、『労働』になるのか。法的にいえば、労働基準法が定めた『労働時間』に、これらの時間が当てはまるのかが問題となります。

そもそも、労基法上の『労働時間』とは、客観的にみて『労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間』と解します。よって、企業外で行われる研修・行事への参加については、参加が事実上強制されたり、会社業務として負荷が高ければ、研修・行事に参加した時間は労働時間に当たることになります」

●「事実上の強制」「業務性が強い」かどうか

この記事を読む人の中にも、同じ悩みを抱えている人がいそうだ。その人たちが、「お花見の場所取り」「お花見」をした時間分の残業代を請求するために、どう交渉したら良いのだろうか?

「次の2点について整理し、会社側に打診してみてはどうでしょうか。

(1)参加が事実上強制

(2)会社の業務性が強い

(1)、(2)の要件を満たしているのであれば、労働時間と認められ、両者とも残業代が出ると考えられます」

しかし、建前では「自由参加」になっているケースが多そうだ。

「『自由参加』とされていても、上司が社員に場所取りを命じたり、全員参加が暗黙の了解事項となっていることもあるでしょう。入社年数の浅い社員に場所取りを命じたり、お花見に参加することが前提で不参加をする場合には理由を述べさせたりするなど、事実上強制参加となっているケースもあると思われます。

そのような場合は、場所取りをした時間や参加時間は労働時間として算入されなければならなりません。また、時間外労働だと認められれば、その時間に応じての賃金を支払う事も必要になります。もうすぐお花見の季節、どうせ花見をやるなら、労使双方が楽しんで、やりたいものです」

お花見シーズンは花冷えの時期でもある。寒い思いをして疲れるくらいなら、せめて財布くらいは温まりたいものだ。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

大和 幸四郎
大和 幸四郎(やまと こうしろう)弁護士 武雄法律事務所
佐賀県弁護士会。2010年4月~2012年3月、佐賀県弁護士会・元消費者問題対策委員会委員長。元佐賀大学客員教授。法律研究者、人権活動家。借金問題、相続・刑事・男女問題など実績多数。

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