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「私捕まるやつ?」関空で“荷物4キロ救済”が炎上、見知らぬ外国人助けて「運び屋」に?無期刑や死刑の可能性も
関西国際空港(Graphs / PIXTA)

「私捕まるやつ?」関空で“荷物4キロ救済”が炎上、見知らぬ外国人助けて「運び屋」に?無期刑や死刑の可能性も

関西空港で、見知らぬ外国人の預け荷物の重量がオーバーしていたので、自分のバッグに入れてあげた──。ある女性がXに投稿した内容が「危険だ」として話題になっている。

7月1日の投稿によると、マレーシア人女性の預け荷物が規定から4キロ超過し、追加料金約1万2000円がかかりそうになっていた。そこで投稿者の女性は自分の「ピンクのバッグ」に4キロ分を移して「救済」したという。

女性自身も投稿に「これクスリとかもし入ってたら私捕まるやつ?!」と書き添えていたが、「典型的な危険行為」として拡散。

空港で見知らぬ人の荷物を預かることは、薬物密輸の「運び屋」に利用される危険があるとして、外務省や税関が強く注意を呼びかけていることを紹介するコミュニティノートも付いた。

女性は翌日、「私の危機管理が甘く、浅はかな行動をしてしまい申し訳ございません」と謝罪した。

今回は何事もなかったとみられるが、元警視庁刑事の経験を持つ澤井康生弁護士は「絶対にやってはいけない」と警鐘を鳴らす。

●無期刑となる可能性も

──代わりにバッグに入れた荷物に覚醒剤などの違法薬物が入っていた場合、どのような罪に問われますか。

まず、「海外から日本に入国する際に自分のバッグに覚醒剤を入れて運んだケース」から説明します。

この場合は「覚醒剤の密輸入」、すなわち覚醒剤の営利目的輸入罪(覚醒剤取締法41条)と関税法違反(同法69条の11第1項1号)に問われる可能性があります。

営利目的輸入罪の法定刑は、無期もしくは3年以上の拘禁刑という非常に重いものです。

●「中身は知らなかった」は通用するのか

──本人が「中身は知らなかった」と主張しても罪に問われますか。

本当に中身が覚醒剤だと知らずに預かったのであれば、覚醒剤であるという認識(いわゆる故意)がありません。そのため、理論上は営利目的輸入罪や関税法違反は成立せず、無罪となります。

しかし、これは裁判で「覚醒剤とは知らなかった」「故意がなかった」ことの立証に成功した場合の話です。

●「覚醒剤と知っていた」と推認されやすい

少し専門的になりますが、裁判上の経験則として「回収措置原則」と呼ばれる考え方があります(最高裁平成25年10月21日決定)。

覚醒剤の量や隠し方などから密輸組織が関与していると認められる場合、運搬者(運び屋)は、特段の事情がない限り、密輸組織から回収方法などの指示を受け、荷物の運搬を依頼されていたと認定するのが相当だとする経験則です。

つまり、大量の薬物を運んできたようなケースでは、「密輸組織から指示を受けていたはずだ」と考えられやすく、そのことが「覚醒剤だと認識していた」という判断につながります。

もちろん、これは間接事実の1つにすぎないので、これだけで直ちに有罪になるわけではありません。しかし、ほかの間接事実とあわせて判断されることで、「覚醒剤だと知っていた」と認定される可能性があります。

●防犯カメラがあっても安心できない

一方で、「見知らぬ外国人から頼まれただけで、中身は知らなかった」と弁解しても、自分が逮捕された時点では、その外国人はすでに逃げている可能性が高いでしょう。

その人物が実在したことや、荷物を預かった経緯を証明するのは簡単ではありません。

仮に防犯カメラの映像などで、その人物から荷物を受け取ったことが確認できたとしても、「その氏名不詳の人物と共謀していたのではないか」と疑われる可能性があります。

●無罪になっても長期間拘束される可能性も

そのため、本当に覚醒剤とは知らなかった場合でも、「回収措置原則」に加えて、薬物の量や隠し方、税関検査時の言動、渡航経路、渡航目的、渡航費用を誰が負担したかといった事情を総合的に判断され、「違法薬物だと認識していた」と推認される可能性は否定できません。

実際、「覚醒剤とは知らなかった」と主張して無罪判決が出たケースもあります。

しかし、最終的に無罪になったとしても、その間に逮捕・勾留・起訴され、長期間身柄を拘束される可能性があります。その負担は極めて大きいといえるでしょう。

海外から日本へ入国する際、安易に見知らぬ人の荷物を預かることは非常に危険です。

●日本から海外へ出国する場合は…死刑の可能性も

──日本から海外へ出国する際に荷物を預かって運んだ場合はどうでしょうか。

基本的な考え方は、日本へ密輸入する場合と同じです。

ただ、海外では覚醒剤などの違法薬物の密輸入に極めて重い刑罰を科す国もあります。中国などでは、死刑が適用される可能性もあります。

また、「覚醒剤とは知らなかった」と主張しても、その国の刑事法や刑事手続法のもとで、どこまで真摯に取り合ってくれるかはわかりません。

この点でも、リスクは極めて高いと言わざるを得ません。

空港で見知らぬ人から荷物を預かる行為は、違法薬物の密輸に加担したと疑われる危険があります。軽い気持ちの親切でも、取り返しのつかない結果を招きかねません。絶対にやめるべきです。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

澤井 康生
澤井 康生(さわい やすお)弁護士 秋法律事務所
警察官僚出身で警視庁刑事としての経験も有する。ファイナンスMBAを取得し、企業法務、一般民事事件、家事事件、刑事事件などを手がける傍ら東京簡易裁判所の非常勤裁判官、東京税理士会のインハウスロイヤー(非常勤)も歴任、公認不正検査士試験や金融コンプライアンスオフィサー1級試験にも合格、企業不祥事が起きた場合の第三者委員会の経験も豊富、その他各新聞での有識者コメント、テレビ・ラジオ等の出演も多く幅広い分野で活躍。陸上自衛隊予備自衛官(2等陸佐、中佐相当官)の資格も有する。現在、早稲田大学法学研究科博士後期課程在学中(刑事法専攻)。朝日新聞社ウェブサイトtelling「HELP ME 弁護士センセイ」連載。楽天証券ウェブサイト「トウシル」連載。毎月ラジオNIKKEIにもゲスト出演中。新宿区西早稲田の秋法律事務所のパートナー弁護士。代表著書「捜査本部というすごい仕組み」(マイナビ新書)など。

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