SNSで人気の子ザルの「パンチくん」で知られる市川市動植物園は6月30日から、職員に「撮影禁止」の腕章を着ける運用を始めた。園の公式Xで発表した。
腕章を着用している飼育員については撮影を禁止し、画像や動画がSNSに投稿された場合は、「違反行為」として通報などの対応をとるとしている。
同園では今年5月、アメリカ人の男性2人がサル山の展示エリアに侵入し、現行犯逮捕される事件が発生。その後、サル山の撮影を全面禁止とする案も検討していることや、YouTuberなどから寄せられていた撮影企画を当面保留にすると公表しており、今回の措置もそうした安全対策の一環とみられる。
一方、SNSではパンチくんだけでなく、飼育員を題材にしたAI画像が作成されるなど、投稿が過熱しており、「撮影禁止ルールに賛成します」といった声も上がっている。
来園者による写真や動画の撮影が一般的な動物園で、施設側はどこまで撮影を制限できるのだろうか。本間久雄弁護士に聞いた。
●動植物園側にある権限とは
──今回のように動植物園が「腕章を着けた職員は撮影禁止」といったルールを設けることは可能なのでしょうか。
動植物園の施設管理権に基づく適法な措置と考えられます。
施設の所有者には、その施設を包括的に管理する権限である「施設管理権」があります。
民法206条は「所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する」と定めています。
こうした所有権に基づく使用・収益権の一内容として、施設所有者には包括的な施設管理権が認められています。
●ルールを破ったらどうなる?
──来園者がこのルールを無視して職員を撮影し、その画像や動画をSNSに投稿した場合、施設側はどのような対応や法的措置をとることが考えられますか。
来園者がルールを無視して職員を撮影し、その画像や動画をSNSに投稿した場合、動植物園は施設管理権に基づき、その来園者を今後出入り禁止にするといった措置を取ることができます。
一方で、動植物園が施設管理権を根拠に、SNS投稿者についてプロバイダへの発信者情報開示請求をしたり、投稿された画像や動画の削除を求めたりできるかというと、管理権の効力が施設の外まで及ぶとは一般的に考えにくく、なかなか難しいでしょう。
──動植物園の職員には「肖像権」はないのでしょうか。
撮影された職員にも、みだりに容貌を撮影されない権利、いわゆる「肖像権」があります。しかし今回のケースは、市の職員と考えられますので、職務にあたっている姿を撮影する程度であれば肖像権侵害とはいいにくいでしょう。
ただし、不必要にズームアップして撮影したり、SNSに投稿する目的で無断撮影した場合、その職員の肖像権が侵害されたと評価される可能性があります。
そのため、動植物園としては、職員が発信者情報開示請求や画像・動画の削除請求、損害賠償請求をおこなう際、裁判費用を補助するなどして権利回復を支援することが考えられるでしょう。