弁護士ドットコム ニュース
  1. 弁護士ドットコム
  2. 労働
  3. ”官製ワーキングプア”会計年度任用職員に「団体交渉権なし」は合憲 東京地裁が判断
”官製ワーキングプア”会計年度任用職員に「団体交渉権なし」は合憲 東京地裁が判断
会見する原告と弁護団(2026年1月29日、弁護士ドットコム撮影

”官製ワーキングプア”会計年度任用職員に「団体交渉権なし」は合憲 東京地裁が判断

憲法で保障されている「労働基本権」が、自治体で働く「会計年度任用職員」に及ばないのは違憲ではないか──。

そんな問いが正面から争われた裁判で、東京地裁は1月29日、「合憲」と判断した。

会計年度任用職員は、2020年4月に導入された制度で、1年契約で働く非正規の公務員だ。一般職公務員として位置づけられるため、労働組合法は適用されず、民間労働者のような団体交渉権は原則として認められていない。

近年、この制度が低賃金で不安定な非正規雇用公務員を生み出し、「官製ワーキングプア」を拡大させているとの指摘もされている。

今回の裁判では、何が、どのように争われたのか。

●外国語指導助手たちが雇い止めされた

訴えを起こしたのは、長年にわたり都立高校で働いてきた外国語指導助手(ALT)2人が所属する全国一般東京ゼネラルユニオン(東ゼン労組)だ。

制度導入にともない、2人は団体交渉が可能だった「特別職非常勤職員」から会計年度任用職員に切り替えられ、その後、雇い止めされた。東ゼン労組が東京都教育委員会に団体交渉を申し入れたが、都教委がこれを拒否した。

東ゼン労組は東京都労働委員会に不当労働行為救済を申立てたものの、会計年度任用職員には労組法が適用されないとして、申立ては却下された。

これを受け、東ゼン労組は2023年3月、都教委と都労委を相手取り、決定の取り消しを求めて東京地裁に提訴した。訴状では、会計年度任用職員に団結権や団体交渉権といった労働基本権が認められないことは、憲法に反すると主張していた。

裁判の途中からは、会計年度任用職員制度を導入した総務省も、参加行政庁として加わった。

●東京地裁「憲法には反しない」

東京地裁は、会計年度任用職員は一般職の地方公務員にあたるとしたうえで、地方公務員法58条により労組法の適用が除外されると指摘した。

そのうえで、給与や勤務条件は条例で定められていることや、職員団体による意見表明の仕組み、人事委員会への申立制度が用意されていることなどを踏まえ、これらが「地方公務員の労働基本権の制約に見合う代替措置」として機能していると判断。憲法には反しないと結論づけた。

原告側は、こうした制度が実質的に機能していないとうったえていたが、裁判所はこの主張を退けた。

●「新たな階級を生み出した」

東ゼン労組側は1月29日、東京・霞が関の厚生労働省で記者会見を開き、東京地裁の判断を批判した。

裁判のきっかけとなったALTの一人、アメリカ出身のメアリー・ハンソン・ダガティさんは、20年にわたり都立高校などで英語教育に携わってきた。判決について、次のように語った。

「会計年度任用職員制度により、私は日本社会での居場所を失いました。

この制度の目的は、法的な地位を持たない新たな階級をつくることです。これがワーキングプアを生み出しています。社会正義にも憲法にも反していると思います」

同じくアメリカ出身で、7年間、ALTとして働いてきたアンソニー・ドーランさんも、こう述べた。

「今日の判決は非常に残念ですが、失望していません。非常勤公務員の公正と正義のための第一歩に過ぎません。非常勤公務員の組合の権利が復活するまで、戦います」

●「法治国家としてありえるのか」

今回の判決では、昭和40年代や50年代の判例を踏まえて下された。この点について、原告代理人の山田省三弁護士は、次のように批判する。

「当時は非正規公務員がほとんど存在しない時代です。従来の正規雇用職員の理屈で判断したことが、この判決の問題点だと思います。

今は公務員のあり方が変わっています。公務員が安定しているというイメージは、いわゆる正規職員のものであり、非正規公務員は劣悪な状況に置かれています。

こうした中で、団体交渉をする必要があるにもかかわらず、それを与えないのは法治国家としてありえるのか。今回、初めて非正規職員の労働基本権が争われたことは、非常に意味を持っています」

また、指宿昭一弁護士も、この裁判の意義についてこう語った。

「地位も不安定で、労働状況も悪い人たちの権利をどうやって守っていくのかということに関わる大事な事件だと考えています」

原告側は控訴する方針だ。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

オススメ記事

編集部からのお知らせ

現在、編集部では協力ライターと情報提供を募集しています。詳しくは下記リンクをご確認ください。

協力ライター募集詳細 情報提供はこちら

この記事をシェアする