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母はなぜ、中1だった私の脚を撮影? “上履き販売”めぐり娘に刻まれた深い傷 「性的虐待」と専門家指摘
取材に答えた女性(本人提供)

母はなぜ、中1だった私の脚を撮影? “上履き販売”めぐり娘に刻まれた深い傷 「性的虐待」と専門家指摘

大学生の女性(21歳)には、どうしても消えない記憶がある。

中学1年生のころ、母親に「中古の上履き」を履かされ、その脚を撮影された出来事だ。写真付きの上履きはそのままフリマサイトに出品された。

わずか数千円のためにおこなわれた、たった一度のこと。しかし、実の親から性的に利用されたという事実は、女性の中にあった母親への信頼を根底から壊した。

成人した今でも、その傷は癒えず、「自分が子どもを産み育てる」という将来像を描けなくなるほど、深く刻まれている。親の行動に「性的虐待の疑いがある」と専門家は指摘した。(弁護士ドットコムニュース編集部・塚田賢慎)

●「女の子が履けば高く売れる」拒絶を押し切った母親

取材に応じた手嶋夏菜子さん(仮名)によると、高校を卒業するまで暮らしていた実家の家計は、決して裕福ではなかった。

専業主婦だった母親は、小学生の弟が履き潰した上履きを売ろうと思いつく。

「女の子が履いていたことにすれば、高く売れる」

そう言って、当時中学1年生の手嶋さんに弟の靴を履かせ、カメラを向けた。彼女は「いやだ」とはっきり拒否した。しかし、母親は聞き入れなかった。

「女の子が履いた靴を欲しがる人に気持ち悪さを感じました。そんな人に自分の脚の画像が渡ることも、『良くないことだ』と感じていました」

売買の過程で、購入者からは「発送直前まで履いてほしい」「写真の脚が綺麗だ」というメッセージが届いた。母親はそれを隠すこともなく、娘に伝えたという。

当時抱いた「良くないこと」「気持ち悪さ」の感覚が、明確な「性的搾取」への嫌悪感だったと気づいたのは、ずっと後になってからだった。

●今でも実家の玄関に立つと嫌悪感がよみがえる

母親にはっきりした悪気はなかったのかもしれない。中古の上履きが、どのような層に、どんな目的で買われるのか。そこまで想像が及んでいなかった可能性もある。

だからこそ、手嶋さんは母親を強く責めきれなかった。

「すべての原因は貧しさにある」と自分に言い聞かせ、母親の行為を理解しようと努力した。

しかし、一度植え付けられた「私は親に利用された」「愛されていない」という疑念は消えなかった。母親を信じられなくなるという葛藤が心の中に残り続けた。

撮影場所となった玄関の姿見の前に立つと、今でも強い嫌悪感がフラッシュバックする。対価として得られた約2000円は、おそらくその日の食費に消えた。

●「それは虐待だよ」凍りついた心がほどけた瞬間

この体験を、手嶋さんは長年、誰にも打ち明けられずにいた。「もし母親の行為を肯定されたら、両親を信じられなくなる」。そんな恐怖から、父親にも話せなかった。

平成の時代、「ブルセラ」が社会現象になった。女子中高生が自ら制服や下着などを売り、法規制に至った経緯がある。自分がされたことを調べるうち、この言葉にたどりついた。

親に強要され「娘の上履き」として写真を撮られ、売られる。それは、子ども自身が売る以上に深く傷つく体験だった。

高校時代、初めて恋人に打ち明けたときは「冗談でしょ」と一蹴された。母親の行為が常識から外れたものだと、さらに落ち込んだ。

しかし、現在の交際相手は違った。話を最後まで聞いたうえで、こう言った。

「(手嶋さんの)お母さんがしたことは、ありえない。正直、僕は君のお母さんのことが嫌いになった」

身近な人が、母親の行為を「異常」だと認め、自分に代わって怒ってくれた。その瞬間、「貧しさのせい」と無理やり納得させていた霧が晴れた。

「私がされていたことは、虐待だったのかもしれない」

そう思えたことで、初めて自分を被害者として受け止めることができたという。

●プラットフォームに潜む「見えない加害」

それでも、すべての傷が癒されたわけではない。

「子どもに嫌な思いをさせたくないと強く感じ、自分が子どもを産んで育てるという未来が見えない」と語る。男性とのスキンシップにも、いまなお強い抵抗感がある。

フリマサイトやフリマアプリ、SNSでは、子どもの古着や靴を、子ども自身をモデルにして出品していると疑われるようなケースが指摘されている。

運営側は「青少年保護」を理由に、使用済みのスクール水着や学生服などの出品規制を強めている。

ただ、出品者が本当に親かどうかを見分けるのは困難だ。中には、性的利用を前提としているように見える出品も存在する。

手嶋さんもプラットフォーム側の対策強化を望む一方で、「使い古したものを売るなというのは難しいと思っています」と話す。

●Xに体験を投稿すると反響

手嶋さんは、昨年12月、自分の体験をXに投稿した。

投稿を受けて、母親の行動を「おかしい」と指摘する声が相次いだほか、同じような体験をしたという声も寄せられた。

「良くないことだと自覚できていないまま、誰かに相談することは難しい。気持ち悪がられたらどうしよう、と思う人もいるはず。でも、私は、人に話して気持ちが楽になりました。誰かに打ち明けて、ひとりで抱え込まないでほしいです」

●専門家「性的虐待かつ心理的虐待にあたりうる」

子どもが着用した服や靴、さらには子どもの体の一部を撮影した写真を、性的な需要に応じて取引する。そんな親の行為は、どのように捉えられるだろうか。

「性的虐待の疑いが強いと言えます」と指摘するのは、子どもの人権の問題にくわしい飛田桂弁護士だ。

「子どもをポルノグラフィーの被写体とするのは典型的な性的虐待の一類型と言われています。

それと同じように、子どもを他者からの性的嗜好の対象として商業的な取引対象にしているとも評価できるわけですから、性的虐待の疑いがあるということになります」

それだけではとどまらない。

「子どもにとって、自分の持ち物は自分の価値を表すものでもあります。そのため、特に子どもとの物理的、精神的なつながりの高い持ち物を性的取引の対象にすることは、性的虐待だけではなく、心理的虐待とも言えます。

さらにいえば、子どもの自己決定権、子どもが安心して生活する権利をも侵害していると言えると思います」

「写真を撮らせて」という提案に悪気がなかったとしても、子どものほうは成人になっても根深い傷として残り続けることがある。「知らなかった」では済まされない。親は重大な問題として受け止めるべきだろう。

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プロフィール

飛田 桂
飛田 桂(ひだ けい)弁護士 飛田桂法律事務所
特例NPO法人子ども支援センターつなっぐ代表理事であり、司法面接者でもある。神奈川県弁護士会に所属し、児童相談所の非常勤弁護士、いじめ第三者委員会を歴任するなど、子どもに関する法律関係を専門とする。

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