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「週休3日制」に落とし穴はないか? 3つのメリットと注意点を労働弁護士が解説 
(Fast&Slow / PIXTA)

「週休3日制」に落とし穴はないか? 3つのメリットと注意点を労働弁護士が解説 

職場でトラブルに遭遇しても、対処法がわからない人も多いでしょう。そこで、いざという時に備えて、ぜひ知って欲しい法律知識を笠置裕亮弁護士がお届けします。

連載の第16回は「話題の週休3日制、注意点は?」です。日立製作所やパナソニックホールディングスなどの大企業も、週休3日制を導入する方針を明らかにしています。休日が1日増えるというのは嬉しいものですが、導入にあたって注意すべき点はあるのでしょうか。

笠置弁護士は「労働者側としては、週休3日制導入の真の狙いがどこにあるのかを慎重に見極める必要がある」と話し、コストカットの手段として活用されていないかどうかが重要だと指摘します。

●週休3日制のメリットは?

コロナ禍における働き方の見直しをきっかけに、週休3日制がにわかに脚光を浴びています。

ヨーロッパではコロナ前の2015年以降、各国で週休3日制の導入が進められてきました。日本でも、政府が「骨太の方針」に選択的週休3日制を盛り込み、導入を呼びかけています。そのため、大企業を中心に、今年度から制度の導入を決定する企業が相次いでいます。

今回は、週休3日制が導入される場合の注意点について解説します。

週休3日制の導入のメリットとしては、以下のような点が挙げられています。

(1)休日が増えることにより従業員がリフレッシュできる   (2)所定労働時間が減ることにより無駄な業務の見直しにつながる   (3)従業員の学び直しに使える時間が増え、生産性向上・イノベーション創出につながる  

●チームのメンバー全員に一斉に導入することが望ましい

ただし、ひとくちに週休3日制といっても、企業によって制度の内容は様々です。ある大手企業では、所定労働時間を減らし、賃金を維持することを表明していますが、別の大手企業では、所定労働時間を減らすとともに、基本給を減額するとしています。

週休3日制については、労働者側から歓迎する声がある一方で、後者のような制度が導入さ れ、コストカットの道具として活用される危険性があるとして、利用を躊躇する声が根強く存在します。

確かに、法律上は「ノーワーク・ノーペイ」(働かなかった場合には賃金を支払う必要がない)の原則がありますので、所定労働時間が減った場合に、減った時間数に応じた賃下げをすることは、法律上何ら問題がありません。

他にも、週休3日制のもとで個人業績が落ちた従業員に対し、人事考課において低い査定が付けられることも予想され、これを理由に企業が堂々と減給を行い、さらなるコストカットにつなげていくという動きが出てくることも考えられます。こうなってしまっては、週休3日制を適用してほしいと考える方は誰もいなくなってしまいます。

経営者が、上記に挙げた(1)~(3)のメリットをもたらすべく、本気で週休3日制を根付かせようと考える場合には、労働者側の懸念を払しょくするため、コストカットの手段には使わないという方針を鮮明に打ち出すとともに、人事考課や賃金制度の中にそのような趣旨の規程をあわせて置くべきです。

その上で、同じチームの中に週休2日制のままの従業員と週休3日制の従業員とが混在していると、個人業績に差が出てしまう等の理由から、週休3日制の利用を躊躇するでしょう。そのため、制度を適用するときには、特定のチームのメンバー全員に一斉に導入することが望ましいと言えます。

●単にコストカットの手段として活用されていないか?

労働者側としては、週休3日制導入の真の狙いがどこにあるのかを慎重に見極める必要があります。例えば、(1)~(3)のメリットなどではなく、単にコストカットの手段として活用するというだけの場合には、導入そのものに反対するべきです。

仮に制度が入れられてしまい、適用することについて承諾を求められた場合でも、同意するかどうかは慎重に考えるべきでしょう。

制度を生かすも殺すも、その組織次第です。新しい制度を導入する意味については、労使で十分に議論を尽くすべきです。

(笠置裕亮弁護士の連載コラム「知っておいて損はない!労働豆知識」では、笠置弁護士の元に寄せられる労働相談などから、働くすべての人に知っておいてもらいたい知識、いざというときに役立つ情報をお届けします。)

プロフィール

笠置 裕亮
笠置 裕亮(かさぎ ゆうすけ)弁護士 横浜法律事務所
開成高校、東京大学法学部、東京大学法科大学院卒。日本労働弁護団本部事務局次長、同常任幹事。民事・刑事・家事事件に加え、働く人の権利を守るための取り組みを行っている。共著に「こども労働法」「就活前に知っておきたいサクッとわかる労働法」(日本法令)、「新労働相談実践マニュアル」「働く人のための労働時間マニュアルVer.2」(日本労働弁護団)などの他、単著にて多数の論文を執筆。

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