死亡した元兵庫県議への名誉毀損の罪で起訴され勾留中の立花孝志被告の保釈請求を神戸地裁が却下していたことが7月7日に報じられました。
共同通信によると、昨年12月にも保釈請求が却下されており、これで少なくとも2回目の却下になるそうです。
なぜ保釈が認められないのでしょうか。今後の見通しや保釈金の行方とあわせて、弁護士が解説します。
●なぜ保釈が認められないの?
保釈は、保証金を納めることを条件に、勾留された被告人の身柄の拘束を解く制度です。
刑事訴訟法では、請求があれば原則として認めなければならないとされています(89条。「権利保釈」といいます)。
しかし、「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき」(同条4号)や、「被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき」(同条5号)などには認められません。この「罪証」(証拠)隠滅のおそれには、証人らへの働きかけも含まれます。
また、権利保釈が認められる場合にあたらなくても、裁量で保釈が認められることもあります(90条)。
今回は、この権利保釈も、裁量保釈も認められなかった、ということになります。
その理由は必ずしも明らかではありませんが、今回の事件ではまだ第1回公判も開かれていないことも影響しているかもしれません。
立花氏はこの事件について、事実関係は特に争わない(「認め事件」などといいます)方針とされていますが、法廷での正式な認否は済んでいないとみられます。この段階では、裁判所は証拠隠滅のおそれがあると判断しがちです。
たとえば、今回問題となっている名誉毀損罪では、「発言に確かな根拠があった」と争うことがあります。この場合、その情報の出所となった人が、証人として出廷することもあり得ます。保釈を認めた場合に、被告人がその証人に接触し、口裏合わせをするおそれがあると裁判所が判断した可能性もあります。
また、立花氏のようにSNSで大きな発信力を持つ被告人の場合、関係者に圧力をかけることにつながらないか、慎重に判断されている可能性もあります。
このような働きかけなどの「おそれ」は、抽象的なものではたりず、具体的なおそれが認められなければ保釈を認めるべきと言われていますが、刑事裁判の実務上はなかなか保釈が通りにくいのが実情です。
●今後、保釈される可能性は?
保釈の請求に回数の制限は特にありません。
ただ、事情が変わらないのに何度保釈請求を行ってもなかなか認められないでしょう。
一般に、審理が進むと証拠隠滅のおそれは小さくなっていきます。
特に、重要な証人の尋問が終わった段階では、証人への働きかけによる裁判への悪影響を心配する必要がなくなるため、保釈が認められやすくなるでしょう。
●保釈金はどうなるの?
保釈が認められる場合、裁判所は保釈保証金の額を決めます。金額は、犯罪の性質や情状、証拠の証明力、被告人の性格や資産などを考慮して決められます(刑事訴訟法93条2項)。
保釈保証金は「逃げたり証拠を隠したりすれば没収される」という負担によって、被告人の逃亡などを防ぐ役割を果たします。そのため、資産が多い人ほど高額になり、資産が乏しい人は低くなる方向に働きます。
一般的な保釈金の金額は、私の経験上は1事件につき100万円〜200万円程度と思われますが、著名人など大きなお金を動かせると思われる人の事件では、保釈金は高額になる傾向があるようです。
立花氏は破産手続きを申し立てており、破産管財人が選任されていると伝えられています。この状況では、自らの資産から保釈保証金を納めることは難しいでしょう。このような事情が考慮されれば、一般的な保釈保証金とあまり変わらない金額が設定される可能性もあります。
他方で、破産手続中で本人が用意できない場合でも、家族や支援者など第三者が代わりに納めることが認められています(同法94条2項)。 ですから、必ずしも保釈保証金が本人の資産だけで決まるわけではありません。
立花氏は政治家としてもインフルエンサーとしても知名度が高く、支援者などから資金を集める力があると裁判所が判断すれば、保釈保証金の金額は高く設定される可能性があります。
具体的な金額は裁判所の判断次第ですので、本件のような複雑な事情が絡むケースではなんともいえません。
小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)