日本の国旗を傷つける行為を処罰する「国旗損壊罪」を創設する法案について、刑事法研究者たちが反対の声を上げた。
法案は衆議院を通過し、7月9日に参議院の内閣委員会で審議入りした。同じ日、刑事法を研究する学者148人が、「制定してはならない」とする声明を発表した。
呼びかけ人の大学教授らは、東京・霞が関の司法記者クラブで会見し、「本当に日本のためになるのか、時間をかけて冷静に議論してほしい」とうったえた。
●「アンバランスの是正」という立法理由は「誤解」
法案の立法目的には、外国の国旗などを損壊する行為を処罰する「外国国章損壊罪」だけが存在するという矛盾、いわゆる「アンバランス」を是正することが掲げられている。
これに対して、声明は、外国国章損壊罪について、1891年に起きたロシア皇太子襲撃事件をきっかけに「外交的危機に対して対処するために作られた『国交に関する罪』に属するもの」と説明。
そのうえで「決して、外国の国旗に対するその国の国民感情を保護するものではない」と指摘し、「アンバランスを是正すべきとの立法理由は誤解だ」と批判した。
●「感情」を理由に処罰規定を作ってはならない
声明は、法案が「不快」を処罰の根拠としている点にも強い懸念を示した。
「『不快だ』というだけで処罰することには、かなり慎重にならなければならない。それを言い出したら、多様な感情を害する罪を作り出せてしまう」と指摘した。
さらに「異論の強いものについて『感情』を理由に処罰規定を作ってはならない」として、刑罰による規制の広がりに警鐘を鳴らした。
●「日本の外交関係を危うくする」
声明は最後に、外国人排斥デモなどで「日の丸」が掲げられる現状にも言及した。
国旗損壊罪が成立すれば、そうした場面で抗議する人々を「警察官に逮捕させるという使用法」が可能になるとして濫用への危惧を示した。
声明は、次のように結んでいる。
「『日の丸』をこのようにヘイトの象徴として用いることがあれば、これを保護する『国旗損壊罪』は、外国国章損壊罪とは反対に、日本の外交関係を危うくする。そのような濫用の危険のある法律は、決して制定してはならない」
●一橋大教授「そもそも法律を作るべきか議論すべき」
声明の呼びかけ人のうち2人は7月9日、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見を開いた。
一橋大学の本庄武教授は、法案の問題点について、こう述べた。
「そもそも法律を作るべきなのかをもっと議論しなければいけません。刑事法の観点からは、この法案で何を守ろうとしているのか、処罰をしてまで守るべき価値があるのかを真剣に考えなければいけない」
立命館大学の松宮孝明・特任教授も次のようにうったえた。
「外国国章損壊罪の存在理由と、今回提案されている国旗損壊罪は、その趣旨が正反対になる危険がある。外国国章損壊罪と同列に議論していいのか、本当に日本の国のためになるのかを、時間をかけて冷静に議論していただきたい」