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保健所で「過労死ライン」超える残業、過酷な労働実態が浮き彫りに 自治労の組合員調査
会見した全日本自治団体労働組合のメンバーら(2月17日、弁護士ドットコム撮影)

保健所で「過労死ライン」超える残業、過酷な労働実態が浮き彫りに 自治労の組合員調査

自治労(全日本自治団体労働組合)は2月17日、全国の保健所などで働く組合員のうち、約23%が「過労死ライン」とされる月80時間を超える時間外労働をしているとする調査結果を発表した。自治労によると、新型コロナ感染症拡大に伴う電話対応や事務作業などによる業務増加や、人員不足が要因だと考えられるという。

●「月200時間以上」の時間外労働をしている職員も

調査は、自治労加盟の保健所、保健センターなどの保健衛生施設で、保健師や事務職員などとして働く組合員を対象に、ウェブアンケート方式(調査期間:2021年11月24日から2022月1月21日まで)でおこなわれた。40都道府県で働く1771人から回答があった。

2021年1月から12月で最も多かった月の時間外労働を尋ねたところ、回答者(1749人)の約26%が月40時間以上80時間未満、約23%が月80時間を超える時間外労働をしていることが明らかになった。月200時間以上の時間外労働をしている職員も17人いた。

2021年中、最も時間外労働が多かった月については、新型コロナウイルス感染症のピークである「第5波」を迎えた8月(470人)が最多で、「第4波」の5月(260人)、「第3波」の1月(80人)と続いた。

メンタルヘルスの不調を訴える職員もいた。たとえば、コロナに関する対応をおこなっている職員の約37%(対応がない場合は約33.4%)が、2021年中に「うつ的症状」があったと自覚しているほか、80時間以上の時間外労働をした職員の半数以上が「うつ的症状あり」と回答した。

コロナ感染拡大前後で増加した業務のうち、最も増加したのは「電話対応」(984人)、次いで「事務作業」(636人)だった(複数回答)。

●「患者の家族や近隣者から偏見を含む言動」「暴言」を受けた

自治労は2月17日、記者会見を開いて調査結果を発表した。この会見には、2021年3月まで北海道の保健所で働いていた男性職員が参加し、「時間外労働はほぼ毎日で、深夜12時ごろに帰宅していた」と長時間勤務の実態を語った。

男性の周りには、体調を壊して長期療養している人や、職場に来られなくなっている人がいるという。休みが取れず、疲弊している職員も少なくないようだ。また、電話対応では、住民から不安や怒りをぶつけられることもあったと話す。

「特に多かったのは、『なぜ、検査をしてくれないのか』『どこで(感染者が)出たのか。(感染したのは)だれなのか。なぜ、教えないのか』などの電話でした。何度もこのような電話を受けては、対応にあたっていました」

調査の自由記述欄には次のような意見が寄せられた。

「時間外労働をすることが当たり前な環境。休暇は取得できず、疲れがとれないまま出勤する」
「人員不足、夜間の電話対応、休みがとれない、日々の暴言とクレームの対応」
「コロナ患者搬送等を実施した際、患者の家族や近隣者から偏見を含む言動を受けた」
「保健所職員は医療現場に比べ、報道に取り上げられたり感謝されることが少なく、モチベーションの低下に繋がっている気がする」

自治労本部・衛生医療局長をつとめる平山春樹さんは「各自治体には職員の定数を定めた条例があるため、職員数を増やすことは難しい。まずは、定数を増やすべき」とし、労働環境の早急な改善、職場全体の人員増加が必要だと訴えた。

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