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飲食店の無断キャンセルに「一矢報いたい」 ドタキャンバスターズが裁判起こした理由
Fast&Slow / PIXTA

飲食店の無断キャンセルに「一矢報いたい」 ドタキャンバスターズが裁判起こした理由

予約を「無断キャンセル」されたとして、大阪市内の飲食店がこのほど、2組の予約客を相手取り、計2万9700円の飲食代をもとめて大阪簡裁に提訴した。

店側の代理人弁護士は、いわゆるノーショウ(キャンセルの連絡もないまま来店しない客)問題に立ち上がった「ドタキャンバスターズ」として、キャンセル費用の回収に取り組んでいる。

泣き寝入りせざるをえない状況に一矢報いたい――。実費負担で裁判を起こした背景を聞いた。

●裁判をすれば赤字

原告は、大阪市中央区にある焼き鳥店。2020年春ごろと、同年秋ごろ、それぞれ2人組と4人組から、ウェブサイトを通じて、2時間のコース予約(9900円と1万9800円)を受けた。

しかし、当日になっても来店しなかったことから、キャンセルポリシー(キャンセルに関する注意事項)にのっとった料金(当日の場合、100%)を求めている。

代理人の曾波重之弁護士の事務所では、無断キャンセルにあった飲食店などの代わりに料金の回収をするサービス「ドタキャンバスターズ」を2019年からスタートさせた。年間300件程度の依頼を受けるという。

予約時に使った電話番号やアドレスに、SMSやメールなどで督促をおこなう。弁護士の名前をみて、支払いに応じる人もいるが、対応しない人も少なくない。

「そうしたとき、裁判したいと相談も受けますが、裁判にかかる諸費用で赤字になってしまうことの説明をすると、ほとんどの店は泣き寝入りせざるをえないわけです」

ドタキャンバスターズ(公式サイトから) ドタキャンバスターズ(公式サイトから)

キャンセル料金は支払うべきものだとの意識が広まってほしい。裁判を起こして、実際に支払い命令が出れば、多少なりともインパクトはあるはず――。そんな思いから、曾波弁護士らは手弁当で裁判を起こした。

●「抜け」のあるキャンセルポリシーが多い

確実に勝てる案件で裁判を起こす必要がある。今回、ドタキャンバスターズへの依頼の中で、大阪簡裁の管轄内のものをピックアップした。

「重要になるのはキャンセルポリシーです。法律の知識に明るくない方が自分で作っているため、記載内容に矛盾など、おかしな点があることが実は多いんです」

どのようなものが”ダメなキャンセルポリシー”か一例を紹介してもらった。

「たとえばキャンセル扱いにする時期が不明確な記載になっているキャンセルポリシーがあります。そのような記載になっていると、どの時点でキャンセルになったのか、どちら側の事情で、キャンセルになったのか不明確になってしまいます」

そんな中、”勝てるキャンセルポリシー”を用意していたのが、原告の飲食店だった。店に意図を伝え、裁判を起こすことになった(提訴は2月9日)。

●ドタキャン客に「また来てね」と言わざるをえない飲食店

経産省の調査(2018年)によると、飲食店における無断キャンセル被害額は推計年間2000億円にものぼるとされている。

「キャンセル料金を請求しても、電話は着信拒否、LINEはブロックというのが多いです。また、説明をしても『キャンセル料の話は聞いていない、どういうことや!』と怒号を繰り返し、会話が成立しないケースもあるとも聞いています」

そもそも、キャンセル料金を求めず、泣き寝入りする店もある。

「請求したことで、ネットに店の悪評を書かれることを嫌う飲食店があります。キャンセルポリシーを用意している店でもそうです。いざこざで揉めるより、次の来店を期待して、キャンセルの連絡を受けても『また来てね』と言ってしまう飲食店の気持ちもわからないではありませんが、どうしても飲食店は弱い立場にあります」

ドタキャンで、食材も無駄になる。飲食店だけがバカを見る状況に「一矢報いたい」と曾波弁護士は話している。

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