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職場をかけ回る「社長の犬」、動物アレルギーの社員は「咳がとまらない」と息苦しさに悲鳴
写真はイメージです(cinephoto / PIXTA)

職場をかけ回る「社長の犬」、動物アレルギーの社員は「咳がとまらない」と息苦しさに悲鳴

「社長が毎日職場に飼い犬を連れてきます。私は動物アレルギーがあるため、症状が出て困っています」。弁護士ドットコムに、このような女性からの相談が寄せられています。

相談者は、入社の面接時には職場に犬がいることを知らされていなかったそうです。入社したその日、職場に犬が連れてこられるのを見て、愕然としたといいます。

社長の犬は社長室を飛び出して事務所全体を走り回り、アレルギーがある女性のそばにも寄ってくるのだそうです。

「キャンキャン鳴かれるのも迷惑なのですが、それは100歩譲るとして、舐められたり擦り寄られたりすると、目まで痒くなってきます。フロアで走り回っているだけでも、喘息のような咳が出ます」。息苦しさがあると相談者は綴っています。

相談者は、アレルギー症状が出ることについて社長のすぐ下の役職の人に伝えたものの、「だったら近づかないでください」とけんもほろろな対応をされたとのこと。とはいえ、自分から社長に直接言うことも難しく、何とかならないものかと困惑しているようです。

アレルギー症状が出ることを理由に、社長に対して、職場に犬を連れてこないよう要求することはできるのでしょうか。土井浩之弁護士の解説をお届けします。

●診断書などを提出して、社長に要求を

ーー社長に対して、職場に犬を連れてこないよう要求することはできるのでしょうか。

原則としては、犬を会社に連れてこないでくれと要求することはできます。

アレルギーは、呼吸停止やショック症状を引き起こすなどかなり危険な場合もあります。診断書などを提出して、社長に犬を連れてこないように要請することができると思います。

なお、かなり重篤なアレルギー症状が出ているにもかかわらず、社長が犬を連れてくることをやめないならば、直ちに会社を辞めるべきです。危険状態から離脱することを最優先に考えるべきでしょう。

●労災申請はできる?

ーーでは、アレルギー症状について、労災申請はできるのでしょうか。

労働災害と認められるためには、業務をしている過程で起きたという「業務遂行性」と、業務に内在している危険性が現実化したという「業務起因性」が必要です。

今回の場合、会社施設内での仕事中にアレルギー症状を発生していますから、業務遂行性は認められるでしょう。

一方、会社に犬がいることと業務とは関係がないので、問題は業務起因性が認められるかということになるでしょう。労災申請よりはむしろ、会社に対する損害賠償請求の方が、認められる可能性が高いと思われます。

ただ、労働者と使用者の力関係に鑑みれば、ある程度は使用者の趣味趣向のもとで働くことを余儀なくされるわけです。

使用者の趣味の下で働くことの危険性が現実化したというならば、業務起因性も認められるべきです。すなわち、労働災害は認定されるべきだと思います。少なくとも、はじめから申請をあきらめるべきではないでしょう。

(弁護士ドットコムライフ)

プロフィール

土井 浩之
土井 浩之(どい ひろゆき)弁護士 土井法律事務所
過労死弁護団に所属し、過労死等労災事件に注力。現在は、さらに自死問題や、離婚に伴う子どもの権利の問題にも、裁判所の内外で取り組む。

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