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「虫歯は基本抜歯」「ムショの1日は娑婆の1週間」元受刑者が明かした“衝撃“の刑務所生活、本当に快適?
男子受刑者を収容している刑務所(本文と直接の関係はありません。弁護士ドットコムニュース撮影)

「虫歯は基本抜歯」「ムショの1日は娑婆の1週間」元受刑者が明かした“衝撃“の刑務所生活、本当に快適?

女子刑務所が快適すぎる──。そんな言説がネット上で広がる中、6月23日に配信した記事に対して、複数の元受刑者から「もっと面白い話がある」といった声が寄せられた。

今回は、その中から、2000年代に服役した経験があるという男性の証言をもとに、塀の中の暮らしの実態を紹介する。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)

●虫歯は「基本的に抜歯」、その結果「受刑者顔」に

関西在住の男性は、2000年代に加古川刑務所(兵庫県)に服役した。

加古川刑務所は、主に初めて刑務所に入る「初犯」を収容する施設だ。男性によると、収容されていた受刑者の大半は、窃盗と詐欺、覚せい剤事件で有罪判決を受けた人たちだったという。

前回の記事で触れた女子刑務所の医療体制について、男子刑務所でも事情は変わらなかったと振り返る。

「記事にあったように、医師の診察はなかなか受けさせてもらえませんでした。虫歯は基本的に抜歯です。その結果、顎のラインが歪んで、『受刑者顔』になる人もいました」

●テレビは「管理のための道具」

刑務所で受刑者がテレビを見られることについて、ネット上では「ぜいたくだ」といった批判が少なくない。

しかし男性は、テレビには「別の役割」があると話す。

「病室や懲罰房を除いて、どの居室にもテレビがありました。チャンネルを受刑者で自由に選択できる刑務所もあれば、中央でチャンネルを決めて居室に信号を送る形式のところもあります。

優良な居室(直近1カ月間に誰も違反行為をしなかった部屋)では、日曜日に映画が流されました。私がいた頃は、『パイレーツ・オブ・カリビアン』や『男たちの大和』などを視聴できました。

『受刑者にテレビなど不要』という人もいますが、刑務所にとっては管理するために必要な道具なんです。

日曜の映画は違反行為を防ぐための『アメ』ですし、普段のテレビも、『受刑者同士が目を合わせないようにするため』です。視線の先を一方向に向けておけば、けんかが起きませんから」

●食事のメニューを書き写せない受刑者たち

男性は「20年近く前の体験なので、現在と異なる部分があるかもしれませんが」と前置きしたうえで、受刑者の識字能力について語った。

「雑居房では、受刑者同士が親密にならないよう、頻繁に部屋の入れ替えがありました。どこの雑居房に行っても、一人は読み書きが怪しい人がいました。在日外国人ではなく、会話は日本語で普通にできる人たちです」

その実態を象徴する出来事があったという。

「食事は受刑者にとって最大の楽しみです。10日ごとにメニュー表が回ってきて、部屋の下っ端がノートに書き写すことがあったのですが、それができない人も珍しくありませんでした。私が手紙を代筆したこともあります。また、所内で配られる書類にはすべてルビが振られていました」

男性は、読み書きが十分にできない受刑者にとって、本当の困難は出所後に待ち受けていると指摘する。

「携帯の契約も、銀行口座の開設も、部屋を借りることもできないはずです。行政が社会的弱者に対しての施策をしても、そこにアクセスすることができません。

コロナ禍では給付金が何度か配られましたが、あれも申請しなければもらえません。生活保護も申請すれば通るはずですが、役所がどこにあるのかすら知らない人も多いと思います。なぜなら、役所と警察署、拘置所の区別がついていない人もいましたから」

画像タイトル 男性が服役中に別の受刑者から受け取ったという手紙の一部。文章のつながりに変な部分がある(男性提供)

●「日々を乗り越えるので精一杯」、「反省」よりも「後悔」

「世の中の人が求めるような『反省』を刑務所でできるか?」と尋ねると、男性は厳しい見方を示した。

「塀の中と外で、人間は変わりません。裁判にならないようなことでも、他人に迷惑をかけたり、損害を与えたりする人はいます。反省する人もいれば、相手を責めるだけの人もいます。ムショでは、後者の割合が高まります。

また、非常に人間関係が難しい場所なので、その日その日を乗り越えるだけで精一杯です。そのため、『どうしてこんなところに来るようなことをしてしまったのだろう』と後悔する人はいても、被害者に対する反省の念を持つ人は100人に1人いるかいないか、ではないでしょうか。

特に薬物事件では、被害者がいないので、『はやく出所して、またやりたい』と堂々とのたまう人も珍しくなかったです」

●刑務所は今でも「二度と戻りたくないと思わせる場所」

刑務所について、「二度と戻りたくないと思わせるような場所にすべきだ」といった意見を耳にすることがある。

これについて、男性は「現状でも、すでにそうなっています」としたうえで、次のように説明する。

「刑務所に入ると、全員に『遵守事項』という冊子が配られるのですが、そこに書かれている禁止事項の第一項が『逃走』でした。この国の刑務所は、余程のことがない限り、逃走は不可能です。

そして、第二項に書かれていたのは『自殺(企図)』です。つまり、受刑者の絶対的な義務は、『服役すること』なんです。常に刑務官の監視の下にあって、首吊りをしようとしても、舎房内はひも状のものを引っかけることができないようになっています。

自殺の是非は別として、一般社会に生きている人には最後の選択肢として残されている行為が奪われるというのは、精神的に相当にキツいです」

●「ムショの1日は娑婆の1週間」 塀の中で遅くなる時間の流れ

男性にとって、塀の中の生活はどのような経験だったのか。

「刑務所は、自分とは無縁の世界だと思っていました。例えるなら、私にとっての『ワールドカップ』みたいなものでした。私はサッカーにまったく興味がないので、試合を見て喜んでいる人たちの感覚がよくわかりません。

実際にムショに入ってからは、何もかもが初めてのことだったので、『こういうところなのか』と受け止める以外にありませんでした。私には、2年余りの刑期ですら無限に思えました。無期ともなれば、想像もつきません」

北海道の旭川市や江別市で起きた事件では、20代前半の女性たちに20年を超える長期刑が相次いで言い渡されている。

男性は最後にこう語った。

「ムショの1日は、娑婆の1週間。ムショの1週間は娑婆の1カ月。ムショの1カ月は、娑婆の1年。そのくらい、塀の中では時間の流れが遅いんです。20数年後に出所したとき、誰が彼女たちを受け入れてくれるのでしょうか?」

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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