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非正規格差の象徴「女性アナ」が赤裸々に語りあう「キラキラ貧困」の実態 「飲み会で頭が沸騰しました」
対談取材の様子(編集部撮影)

非正規格差の象徴「女性アナ」が赤裸々に語りあう「キラキラ貧困」の実態 「飲み会で頭が沸騰しました」

アナウンサーは今も人気の職業だ。採用はキー局から全国のローカル局へと、ポイントの高い就活生から順に決まっていく。キー局やローカル局の正社員のポストを得られなくても、どうしてもなりたければ、有期の契約アナウンサーという選択もある。

こうして、誰もがスマートな姿で画面に収まっているように見えて、同じ局内にも安定した正社員のアナウンサーもいれば、いつ仕事がなくなるか分からない非正社員のアナウンサーもいるという、格差の激しい業界にもなっている。

特に女性アナウンサーは、年齢によって仕事が減るなど、差別的な扱いを受けることがある。ハラスメント被害も多いが、相手は仕事をくれる権力者のため、被害を申告しにくい構造もあるとされる。

一般人から遠く離れた世界のようで、女性差別や正規・非正規格差、フリーランス問題などの縮図にもなっているアナウンサー業界。弁護士ドットコムニュースでは、非正社員として地方のテレビ局を渡り歩いてきた2人の女性フリーアナウンサーに対談してもらい、その厳しさを語ってもらった。初回のテーマは待遇面の格差だ。

「ボーナスはゼロでした。同期の正社員アナウンサーがもらっていて悲しかった」「年金が十分に払えず、猶予してもらっていた」などのエピソードが聞こえてきた(取材は12月上旬に実施)。

●参加者のプロフィール

ミホさん(仮名・30代):複数のローカル局の契約アナウンサー(契約社員)をへて、現在は首都圏でフリー。

エリコさん(仮名・30代):NHKの契約キャスター(業務委託)出身。その後、複数のローカル局の契約アナウンサー(契約社員)をへて、現在は首都圏でフリー。

●「年金も十分に払えない」NHK契約キャスター

ーー今日は当時の契約書を持ってきていただきました。

ミホ:仕事を始めたときの月給は30万円くらいでした。専門業務型裁量労働制だったので、残業代などは込み。ボーナスはありませんでした。

地方であっても、ある程度の防犯対策となると、意外と家賃は安くないんです。住宅手当が別途ついていたのはありがたかったですね。

エリコ:私はNHKの契約キャスターからスタートしました。当時は年俸300万円くらいです。住宅手当はありませんでした。業務委託なので、社会保険もなし。払う余裕がなかったので、年金は猶予や一部免除をしてもらっていました。

2社目は地方の民放だったんですが、私も月給は30万円くらい。社会保険に入っているだけで、なんて素晴らしいんだと思いましたね。

給料は地域や局によっても差があって、もう少し都会の局では、月給が40万円近いときもありました。ただ、それもすぐ契約満了になってしまいましたが…。

ーー局内の正社員アナウンサーとの格差を感じたことはありますか?

ミホ:金額に不満が少なかったこともあって、私がいた局ではそこまで気にはなりませんでした。正月の出勤手当が契約アナにもつく局と、正社員にしかつかない局があったくらいでしょうか。

ただ、重要な番組を担当していたのに、正社員登用されず、契約だからと在籍年数で切り捨てられてしまった。そのとき、すごい格差があったんだなと実感しました。ずっと次の職場を探し続けなくちゃいけないんだなと。

エリコ:NHKはすごく大きな差を感じました。新米なので、同期の職員(正社員)アナウンサーとやっている仕事はそんなに変わらないんです。ニュースを読むとか、取材してリポートを作るとか。

それでもボーナスの時期になると、職員には月給3カ月分出たと聞いて、頭が沸騰しそうになる。

職員のアナウンサーの子とカメラマンの子、契約の私で飲んでいたんですけど、「私、絶対今日払わないよ!」と(笑)。

●テレビに出るための出費もバカにならない

ーーボーナスの有無で金額にも大きな差が出ますよね

エリコ:NHKのときの生活は厳しかったですね。最初の年は給料の大部分が服代に消えました。衣装は基本すべて自前なんです。

ミホ:私も契約アナウンサーになったとき、「最初の1年間の給料はすべて衣装代に消えてく」と先輩に言われました。

ーー衣装ってそんなに必要なんですか?

ミホ:視聴者からの服について苦情って多いんですよ。今日の服はカジュアルすぎるとか、この前と一緒だとか。

でも、男性アナウンサーはほとんどスーツだから、苦情は「フケがついている」くらい。男女で出費の度合いは違いますね。

ーー人前に出る仕事だけに、身だしなみにはかなり気を遣いそうですね

エリコ:私は丸顔がコンプレックスなので、結構エステにお金をつぎ込んでいました(笑)。「休みの日、なにしてるの」と言われたらメンテナンスです、と。

ミホ:髪にもお金がかかる。最低でも月に1回は美容室に行かないといけない。あとは化粧品ですね。本番用のメイクは4Kやハイビジョン対応のちょっと高いファンデーションを使う。

●「契約」だけ呼ばれない飲み会

ーー正社員じゃないことで、いじわるをされたことは?

ミホ:あまりないです。ただ、ある局にいたとき、急に席替えがあって。それまでは、ごちゃ混ぜだったんですけど、契約アナウンサーだけが隅っこに固められたことはありましたね。陰湿だなあと思いました。

エリコ:年末にエリア内の全アナウンサーが集まる飲み会があるのですが、NHKの契約キャスターだけは呼ばれなかったですね。“アナウンサー”じゃなくて、地方採用の“キャスター”だから。NHKの人は、契約の人間がアナウンサーと呼ばれることを嫌う傾向がありますね。

あとは契約のアナウンサーはHPの紹介欄に載せないというローカル局もありました。

●非正社員アナが直面する「年齢制限の壁」

ーー現在はフリーをされています

ミホ:30歳を過ぎると、もう別のローカル局で採用されるのは難しいだろうなと思って。

やはり、若い人のほうがいいじゃないですか、アナウンサーは。オバさんばっかり集まってもしょうがない。若い子がやる仕事とキャリアを積んだ人がやる仕事の数が違うのは仕方がないと思っています。

でも、フリーの仕事はやはり不安定です。一時期は複数のレギュラーがあったんですけど、全部短期間で終わってしまいました。その度にオーディションを受けて。いつまで続くのだろうと思う。

現在は実家暮らし。都内は高いので将来の貯蓄のために一人暮らしはできませんね。

エリコ:私は結婚して、夫が主たる収入を稼いでくれるので、自分の好きな仕事を続けてみようと思って。

固定収入がないと不安で精神的にダメになってしまうので、まったく関係のない事務の仕事もしています。

同期はもうほとんどがアナウンサーを辞めていますね。

(つづく)

●連載一覧

【対談1/4】非正規格差の象徴「女性アナ」が赤裸々に語りあう「キラキラ貧困」の実態 「飲み会で頭が沸騰しました」←今ココ

【対談2/4】30代女性アナ「おばさんは間引かれる」 変わらぬ「若さ信仰」、技術軽視にモヤモヤ

【対談3/4】地方アナ「フジテレビ、うらやましくないです」見下してくるキー局に反発「負け惜しみじゃないです」

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