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地方アナ「フジテレビ、うらやましくないです」見下してくるキー局に反発「負け惜しみじゃないです」
対談取材の様子(編集部撮影)

地方アナ「フジテレビ、うらやましくないです」見下してくるキー局に反発「負け惜しみじゃないです」

キー局のような正社員ではなく、有期での募集が多いという注釈はつくが、ローカル局はアナウンサー志望者の受け皿になっている。しかし、そうした性質上、縁もゆかりもない土地での就職となり、ミスマッチが生まれることもある。

弁護士ドットコムニュースによる、非正社員として地方テレビ局を渡り歩いてきたフリーアナ対談企画の第3回は「ローカル局とキー局」。

「踏み台」にされてきた経験などから、有期契約が多いローカル局のアナウンサー採用だが、ライバル局に移ることは難しく、地元愛が強くても、長く働けないという不幸な構造があるという。

加えて、誇りをもって働いているのに、外野からは「キー局をねたむ負け組」のように面白おかしく扱われる。「キー局がつくる系列局のアナウンサーを集めた番組が、そういう雰囲気を煽っていてヒドいと思います」ーー。

●参加者のプロフィール

ミホさん(仮名・30代):首都圏出身。契約アナウンサー(契約社員)として、いずれもゆかりのない地域のローカル局で勤務し、現在は首都圏でフリー。

エリコさん(仮名・30代):元NHKの契約キャスター(業務委託)。一度はゆかりのあるローカル局に就職したが、契約満了で他地域に。現在は首都圏でフリー。

●「華やかな世界」と地方局のギャップ

ーーアナウンサー志望者が全国のローカル局を受けるとなると、ゆかりのない地域で働く人も出てくるでしょうね

ミホ:ローカル局は3年に1回くらいしかアナウンサーの募集がないので、就活のタイミングで地元の局が出ていないと違う地方に行くしかないんです。局は募集時点でほしい性別が決まっているけど、表には出せないから、無駄足に終わることもあります。

私が働いていたローカル局も、正社員採用を続けていた時代があったそうです。ただ、入社したての若いアナウンサーの転職が続いたみたいで、有期がほとんどになったと聞きました。

エリコ:やっぱり東京から来ると田舎が肌に合わないのでは(笑)。もともと田舎出身ならともかく、遊ぶところもない、買い物もできない、知り合いもいないとかだと、キツい人もいるみたいですね。華やかな世界にあこがれて入ったものの、実は……という落差。

ミホ:ローカル局に対する誤解もあると思います。キー局なら、アナウンサーはしゃべるだけの仕事が多いのでしょうが、地方だと局にもよるけど、記者やって、ディレクターやって、番組つくってと色んな仕事をこなさないといけない。

本当にテレビに出てしゃべることを目標に入っている人たちにとっては、「なんで出られないの」ってなるんじゃないでしょうか。

ただ別にアナウンサーに限らず、社員ってみんなそういうものだと思うんで、アナウンサーだけ契約(有期)にする必要はないと思うんですが…。

●「ずっと同じ局で働きたかった」

ーーエリコさんは出身地方のテレビ局に勤めていたことがありますよね?

エリコ:もともと、学生時代の就活ではキー局は受けていないんです。アナウンサーだけでなく、記者や制作とかも含めて、出身地方の局ばかりを受けていました。だから、地元の局には長くいたかったんですよね。でも、期間満了で終わってしまった。

そのあと、県内の別の局も受けたんですけど、ライバル局のイメージがついているからということでダメでした。そうなると、有期のアナウンサーは一生地元では働けなくなってしまう。

地元だからこそ、長く追いたいと思える人やテーマもあると思うんですが、やらせてもらえない。それが残念でした。

ーーミホさんは、なじみのないエリアで仕事をされてきましたよね

ミホ:私はスポーツ選手にインタビューする仕事にあこがれていました。まずはアナウンサーにならないといけないので、正社員か契約かとか、どこの局かとかは正直関係なかったです。

私は知らない地方で働いても、特に疎外感とかは感じなかったですね。いろんな業務ができたこともプラスだったと思っています。

ただ、全然知らないところに行くと、なかなか深い関係ができず、気づいたら契約満了なので、それが残念でした。

●メディアは「中央VS地方」の構図にしたがる

ーー地方局に勤める人にも、本当は東京で働きたいのに地方に“来てしまった”人と、地方に根差していきたい人が両方いるわけですね

ミホ:東京がてっぺんのピラミッドをイメージするのかもしれませんが、正直地方で働いている人は地方で働いていることを誇りに思っているので、中央が一番とは思っていません。

でもたとえば、系列局のアナウンサーを集めたフジテレビの番組なんかでは、事前にアンケートに答えるんですけど、ディレクター的には「フジのアナウンサーVS地方局」みたいな構図を作りたいわけですよ。

なので「フジのアナウンサーのうらやましいところはなんですか」なんて質問がある。ヒエラルキーを作ろうとする意図がすごく見えますね。

エリコ:地方局を集めた番組だと、たとえば監視カメラがあって、「都会に行きたいんです」と言っているところを使われることがあります。「こんなに性格悪い」みたいなVTRを作られて、誰が得するんだろうと思います。単に消費されているだけのように見えて、それはちょっとなぁと。

ミホ:タレント性が強いタイプもいますから、中には爪あとを残して、東京でという人もいるかもしれません。フリーになったときを考えると、知名度があった方が有利ではあります。

でも、中央受けて落ちたから地方という人たちだけでなく、地方に入りたくて入っている人もいる。働いている人の中にヒエラルキーの意識はないと思いますよ。

ーーみんながみんな東京のキー局をめざしているわけではない?

ミホ:そんなこと言うとまた負け惜しみか、とか言われるんですけど(笑)。

やっている仕事がぜんぜん違う。それこそ地方は取材して、原稿を書いたり、カメラも回したりもする。逆に中央の人たちは、自分で書いた原稿ではないのに、自分が書いたかのように読めてすごい。スキルの質が違うんですよ。

エリコ:今は東京で活動していますが、所属した局には、みんな思い入れがあります。だからこそ、2~3年で契約満了の繰り返しになると疲れちゃう。

ミホ:契約アナで渡り歩いているうちに、年齢的に地方局での採用が難しくなって、東京でフリーになるしかなくなる。正社員ならずっとそこに居たいと思っている人はいっぱいいますよ。

(つづく)

●連載一覧

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【対談2/4】30代女性アナ「おばさんは間引かれる」 変わらぬ「若さ信仰」、技術軽視にモヤモヤ

【対談3/4】地方アナ「フジテレビ、うらやましくないです」見下してくるキー局に反発「負け惜しみじゃないです」←今ココ

【対談4/4】「消耗品」のフリーアナ、テレビ局に宣戦布告「次は私たちがテレビを消費する番です」

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