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「希望退職」募集が増加、コロナの影響も 勧められたら応じなければいけない?
画像はイメージです(プラナ / PIXTA)

「希望退職」募集が増加、コロナの影響も 勧められたら応じなければいけない?

新型コロナウイルスの影響が、雇用にも出始めている。東京商工リサーチ(7月3日)によると、2020年上半期に早期・希望退職者を募集した上場企業は41社で、前年同期比で2.2倍にもなっている。このうち、コロナの影響をあげた企業は、8社あった。

弁護士ドットコムにも今年に入ってから、希望退職についての相談が複数寄せられている。ある男性は、合併にともなう希望早期退職制度があるが、上司から「次の組織ではあなたのポジションはない」と言われてしまったという。

男性としては会社に残りたいと思っており、「希望早期退職と言っているが、『あなたの場所はない』と言うのは退職勧告(退職勧奨)になりませんか」と疑問に感じているようだ。

会社側から希望退職制度で退職を勧められた場合、応じなければならないのだろうか。注意すべき点を大山弘通弁護士に聞いた。

●強制的なものではない

ーー会社側から「肩たたき」をされた場合、応じなければならないのでしょうか

まず、希望退職も肩叩きも、言い方の違いはありますが退職しませんかという誘いであって、強制的なものではありません。

したがって、希望退職にしろ肩タタキにしろ、労働者がこれに応じる義務はありません。反論の必要もなく退職したくないとはっきり言えばいいです。

このような退職しませんかという誘いを一般には退職勧奨といいます。退職勧奨について、裁判では次のように説明されています。

「退職勧奨は、使用者が労働者に対し、辞職あるいは労働契約の合意解約を勧めるという事実行為であるところ、使用者が、経営判断あるいは人事労務管理として退職勧奨(退職勧奨に応じるよう説得することを含む。)を行うこと自体は自由に行うことができるものであるが、退職勧奨に応じるか否かについては、労働者がその自由な意思に基づいて判断することとなるものである。」(大阪地方裁判所平成28年4月26日判決)。

つまり、裁判所が退職に応じるかどうかは労働者の自由と言っているのです。反論の必要はないといいましたが、あえて反論するなら、退職するかどうかは労働者の自由であると裁判所も言っている、法的にはこうなっていると言うくらいでしょう。

ーー希望退職制度に際して、注意すべき点があれば教えてください

気をつけるべきは、退職しませんかという誘いが執拗にされることによって労働者にとって事実上強制されてしまうような場合です。

そのような強制された退職勧奨は違法ですから、「それは違法です」とはっきり言う必要があります。なお、先ほどあげた裁判例は、続けてこう言っています。

「そうすると、使用者が退職勧奨を行うに至る経緯や具体的な退職勧奨の方法に照らし、退職勧奨が、当該労働者に対して不当な心理的圧力を加えたりするなど、社会的相当性を逸脱した態様での半強制的ないし執拗な退職勧奨であった場合には、限度を超えた違法なものとして不法行為を構成するものと解するのが相当である。」

つまり、裁判所も、社会的相当性を逸脱した態様という限定付きですが、半強制的な退職勧奨や執拗な退職勧奨は違法であって、不法行為になると言っているのです。

プロフィール

大山 弘通
大山 弘通(おおやま ひろみつ)弁護士 大山・中島法律事務所
労働者側の労働事件を特に重点的に取り扱っている。労働組合を通じての依頼も、個人からの相談も多い。労働事件は、早期の処理が大事であり、早い段階からの相談が特に望まれる。大阪労働者弁護団に所属。

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