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大手総合商社の人権方針「国際水準に照らすとまだまだ不十分」 NGOが調査報告
会見するヒューマンライツ・ナウのメンバー(2020年2月13日/弁護士ドットコム撮影)

大手総合商社の人権方針「国際水準に照らすとまだまだ不十分」 NGOが調査報告

国際人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」(HRN)は2月13日、国内の大手総合商社7社に人権方針の策定と取り組み状況を聞いたアンケート調査の結果を発表した。国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」を実現するための具体的な制度や取り組みについて、各社ともに一定の発展があったが、国際水準からすれば不十分なものも多く、改善の必要性が高い、と結論づけている。

●サプライチェーンの人権問題解決で「果たすべき役割は大きい」

国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」(指導原則)は、企業の人権尊重責任を明示したもので、2011年に承認された。

https://www.unic.or.jp/texts_audiovisual/resolutions_reports/hr_council/ga_regular_session/3404/

サプライチェーン(いくつにも重なった供給構造)の人権問題が指摘される中で、総合商社は、衣服や食材、木材など、さまざまな商材を世界中から調達しており、その解決のために「果たすべき役割は大きい」(HRN)という。

こうした考え方から、HRNは2019年夏、国内の大手総合商社7社(三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅、双日、豊田通商)に対して、書面のアンケートを実施して、全社から回答を得た。

●十分とはいえないポイント

人権方針については、住友商事以外の6社が「定めている」と回答した。住友商事は、国連グローバルコンパクト10原則(人権、労働、環境、腐敗防止について定めた原則)に署名していることから、HRNは「これを踏まえた自社としての人権への取り組みの姿勢を示す人権方針の策定・公開が早急にもとめられる」としている。

7社ともに、サプライヤー(下請会社)に対しても行動指針を通して、人権を尊重するよう求めているが、HRNは「行動指針等の共有だけでは実際に人権リスクを予防・軽減するために十分とは言えない」と指摘する。調査によると、サプライヤーに対する監査を定期的に実施しているのは、三菱商事、三井物産、伊藤忠商事だったという。

国内のサプライヤーを含むビジネスパートナーに「技能実習生」を雇用している会社はあるか、という質問に対して、「ある」と回答したのは、三菱商事、三井物産と住友商事で、残りは「把握していない」という回答だった。HRNは「商社がサプライチェーン上の対策を何ら講じていないことは極めて深刻だ」と批判している。

●総合商社に対する提言

今回の調査結果を受けて、HRNは総合商社に対して、次のような対応をもとめている。

・指導原則に沿った人権方針を策定すること

・人権方針をサプライヤーやビジネスパートナーに対話によって共有し、その実施に共に取り組むこと

・人権リスクの特定・予防・軽減のための人権デュー・ディリジェンスに速やかに着手し、そのプロセス、進捗状況と課題、特定した人権リスクを公開し、説明責任を果たすこと

・全商材のサプライチェーン全般を通して、独立かつ実効性のある定期的な監査を実施し、その結果を公開すること

・サプライチェーン上に技能実習生が関与しているかを速やかに調査し、その調査結果を公表し、人権侵害を予防・軽減・救済する仕組みを構築すること

・役員のジェンダー構成を抜本的に改善させるとともに、差別、ハラスメント、強制労働、児童労働、人身取引といった人権リスクを特定し、予防・軽減・救済するための仕組みを構築し、同時に生活賃金の実現に取り組むこと

・ステークホルダーとの継続的なダイアログを実施すること

・サプライチェーン上のステークホルダーがアクセス可能な救済制度を構築すること

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