職場から退職するよう求められているという50代の女性ドライバーから、弁護士ドットコムニュースのLINEに情報提供がありました。
女性は2年くらい前、長距離ドライバー(正社員)として、ある運送会社に就職しました。すぐに、同僚の男性から「セックスをさせてほしい」と言われるなど、セクハラにあうようになったそうです。
繰り返し肉体関係を求められましたが、その同僚が既婚者であることなどから、きっぱりと断っていたところ、今度は、仕事のミスについて、休日深夜に電話で「みんなに迷惑をかけるな!」「責任を取れ!」と怒鳴られるようになったそうです。
そのことについて、会社の社長に相談したところ、「(この仕事は)女性には無理だから」「ほかの会社を探してほしい」と言われたそうです。相談者は、仕事はやめたくないけれど、退職するよう追い込まれていると話しています。
現在は、病院で「適応障害」の診断を受けて、休職中となっているということですが、はたして、会社側の対応に法的問題はないのでしょうか。労働問題にくわしい新村響子弁護士に聞きました。
●会社は環境を整える義務がある
――会社の対応は問題ないのでしょうか?
会社は、従業員からセクハラについて相談があった場合には、適切な対応をおこなわなければならないとされています(男女雇用機会均等法11条1項、セクハラ指針)。
セクハラ指針では、職場におけるセクハラが現実に生じている場合だけでなく、その発生のおそれがある場合や、職場におけるセクハラに該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応し、適切な対応をおこなうよう求めています。
パワハラについては、事業主の相談対応措置はまだ義務化されていませんが(労働施策総合推進法改正によって今年6月より大企業は義務化される予定)、会社は、労働契約上の環境配慮義務に基づいて、パワハラの事実関係を調査して、被害者に対する配慮をおこない、職場環境を整える義務があるといえるでしょう。
裁判例でも、労働者からセクハラ被害の相談が寄せられているにもかかわらず、相談担当者が事実調査や職場環境の改善などの必要な措置をとらなかったことについて、会社の作為義務違反を認め、セクハラの慰謝料とは別に慰謝料を認める判断が出されています。
今回のケースでも、社長は、従業員からセクハラ・パワハラの相談を受けながら、事実調査も職場環境の改善もしないどころか、「(この仕事は)女性には無理」とその発言自体がセクハラ・パワハラになりかねない言葉を述べて退職を勧奨しており、対応には問題があります。
●ハラスメントの証拠が揃っている場合は慰謝料請求も
――同僚の行為はどうでしょうか?
断っているのに繰り返し性的関係を求めることは、性的言動に間違いありません。それによって、相談者の就業環境が害されていますので、セクハラにあたります。
また、仕事のミスについての指摘とはいえ、休日深夜という就業時間外に、繰り返し怒鳴ることも、その態様や言葉の程度にもよりますが、パワハラにあたる可能性が高いと思います。
――相談者は、どのような行動をとるべきでしょうか?
被害者であるご相談者が、泣き寝入りして退職に追い込まれてしまうのは、不当です。先ほど述べたとおり、本来、会社にはハラスメント相談に応じる義務があるのですから、諦めずに、会社に対して適切な対応と職場環境の改善を求めるべきです。
1人で闘うのが難しい場合には、1人でも加入できる労働組合に加入して団体交渉を申し入れたり、都道府県労働局などがおこなう調停・あっせんを利用することも考えられます。
ハラスメントの証拠が揃っている場合には、加害者や会社を相手に、慰謝料や適応障害になったことによる休業損害等の賠償を求めて法的措置をとることも考えられます。