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取引先からのパワハラ&セクハラ 上司の「見て見ぬ振り」は許されない
写真はイメージです(kou / PIXTA)

取引先からのパワハラ&セクハラ 上司の「見て見ぬ振り」は許されない

パワハラは、同じ組織内に限らず、取引先など明確な主従関係がある中で起こることもある。弁護士ドットコムに「取引先様が我々の従業員にパワハラ・セクハラまがいの発言を頻発しているようだ」と相談が寄せられた。

相談者としては、取引先とかけあって事態を改善したいと考えてはいるものの、「証拠も無く、取引先ということもあり、(話をすることは)遠回しでも難しい」と、頭を抱えている。

取引先からのパワハラ・セクハラから、従業員を守る義務が会社にはあるのだろうか。また会社が放置した場合、従業員から責任を問われる可能性もあるのだろうか。今回、会社はどう対応するべきか。加藤寛崇弁護士に聞いた。

●第三者からのパワハラも「対応する必要がある」

「同じ組織の中だけでなく、取引先など第三者からの危害であっても、安全配慮義務に基づき対応する必要があります。

安全配慮義務とは、業務の中で従業員が被る危害を防止する雇用主に課せられた義務のことです。労働者が業務の中で生命・身体等に危害を負わないように必要な措置をとる義務であり、健康面への配慮まで含みます。

今回のように、取引先からパワハラ被害を受けていれば心身に不調を来すおそれがあるので、これを防止する義務が雇用主にあります。どのような措置を講じるかは、具体的状況に応じた必要な範囲での措置になります」

●「取引維持を優先して事態を放置することは許されない」

ーー見て見ぬ振りをして放置した場合には、会社側は何らかの責任を問われる可能性もあるのでしょうか

「取引先からパワハラ被害を受けているとの情報を受けていながら、何も対策を講じないままであれば、被害を受けた従業員に対して安全配慮義務違反となることは間違いありません。

今回の相談は、具体的事情が不明瞭であるため、会社がどのように対応すべきかは一概に言えません。しかし、相談者が考えているように、事実関係の正確な把握も必要ではありますが、取引維持を優先して事態を放置することは許されません。

取引を失うおそれがあっても、担当者を交代させるなど、きちんと取引先に是正を求めるべきです」

プロフィール

加藤 寛崇
加藤 寛崇(かとう ひろたか)弁護士 みえ市民法律事務所
東大法学部卒。労働事件、家事事件など、多様な事件を扱う。労働事件は、労働事件専門の判例雑誌に掲載された裁判例も複数扱っている。

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