この春、新しく社会人になった人は、はやく一人前になるため、必死に努力しているだろう。ネット上では、敬語の使い方やビジネスマナーなど、社会人なら必ず知っておくべきことをまとめたコラムが人気のようだ。
そんな新入社員が抱きがちな疑問が、「労働組合って何?」というものではないか。ネットのQ&Aサイトにも、会社の先輩から「新入社員は入りなさい」と強くすすめられて、入るべきかどうか迷っているという相談が投稿されている。
そもそも「労働組合」とはどんな組織で、そこに入るとどんなことが起きるのだろうか。労働問題にくわしい靱純也弁護士に聞いた。
●労働者一人ひとりの立場は弱いが・・・
「労働組合は、労働者の視点から、労働条件を向上させることを目的とした団体です。
従業員に代わって賃金の値上げ交渉をしたり、職場でのパワハラをやめさせるために会社と交渉するなど、労働条件や労働環境に関する幅広い問題をあつかいます」
なぜ、そんな団体があるのだろうか?
「労働者の権利は、労働基準法などで保障されています。しかし、一人ひとりの労働者は、事実上、弱い立場にたたされています。
そのため、サービス残業を強制されたり、有給休暇が取得できなかったりと、劣悪な労働条件を強いられることがあります。
労働組合は、労働者たちが協力して、そのような事態を防ぎ、使用者と交渉してよりよい労働条件等を獲得するための団体です」
●労働組合加入のメリット・デメリットは?
たとえば、新入社員が労働組合に加入すると、どんなことが起きるのだろうか?
「加入者がひとり増えれば、その分だけ労働組合の力が強くなります。
労働組合が力を持てば、会社との交渉で有利になるため、結果的に組合員の労働条件が改善されやすくなります。
また、個人にとって直接のメリットとしては、個別の問題を労働組合に相談しやすくなるといった点もあります」
入ったことで、「義務」が発生するのだろうか?
「労働組合に加入すると、組合費を支払うなどの義務などが出てきますね」
●「社外の組合」に加入することもできる
会社に労働組合がない場合はどうなる?
「労働者には『労働組合に加入する権利』が、法律で認められています。
日本では、それぞれの企業ごとに組織された『企業内労働組合』が主流ですが、近年では地域ユニオンなど、『企業をまたいだ労働組合』もみられます。
企業内に労働組合がない場合、こうした企業をまたいだ組合に加入したり、自分で労働組合を結成することもできます」
会社から「うちで働くなら、必ず組合に入ってもらう」と言われる人もあるようだが?
「労働組合に加入するかどうかは原則として自由ですが、会社によっては従業員に労働組合への加入を義務づける『ユニオン・ショップ』という制度を採用しているところもあります。
そういった会社で働く際には、労働組合に加入しなければなりません。
ただ、そうであっても、労働組合が複数あるなどの場合、どの労働組合に加入するかは、労働者が自由に選択できることになっています」