医療法人常磐会が運営する「ときわ病院」(大阪市大正区)が看護師や事務員ら約100人の給与を支払わないとして、大阪労働局が同病院を捜索した問題で、病院の閉院が報じられた。
報道によると、ときわ病院は、従業員を全員解雇、外来診療を終了し、保健所に廃止を届け出る。労働局と大阪西労働基準監督署は7月、職員約100人に給与の未払いがあったとして、労働基準法違反などの疑いでときわ病院を捜索していた。従業員の大半が離職。外来診療を続けるために必要な人員だけが残留していたという。
病院が「倒産」するのはあまり耳にしないケースだが、一般の企業の倒産と異なる点はあるのだろうか。看護師や医師、職員の未払いの給与などはどうなるのか。医療の労働問題に詳しい鈴木沙良夢弁護士に聞いた。
●「一般の企業の倒産と同様に手続きが進む」
「病院の倒産といっても一般の企業の倒産と手続的には異なる点はありません。ただ、医療機関の傾向として、法的な整理手続である破産や民事再生を選ぶ前に、裁判所を利用しない私的な整理手続を行っている病院が多いように思われます」
鈴木弁護士はこのように述べる。医師や看護師に未払いの給料などがあった場合、どのように扱われるのか。
「基本的には一般の企業と同じように扱われます。たとえば、病院が破産という法的な整理手続をとった場合には、給与の未払部分は、他の種類の未払いの債務よりは優先的に支払いを受けられることになってはいます(条件により優先順位は異なります)。
しかし、破産した病院の財産が少ない場合等には支払われないこともあり、そのような事態になることも少なくありません。
そのような場合には、賃金の支払の確保等に関する法律に基づく、いわゆる『未払賃金立替払制度』の利用を検討することになります。
事業主が倒産をした場合、最大で未払給与の総額の8割(限度額など様々な条件があります。)を政府が立替払いするという制度です。
看護師、勤務医や職員は、他の一般の企業と同じく条件を満たしていれば立替払いを受けることができるでしょう。
ただ、未払賃金立替払制度によって立替払いを受けられるのは労働者に限りますので、医療法人の理事になっているような場合で、業務執行等に関わっているとされると、立替払いを受けられないこともあります。
医療法人の開設する医療機関の管理者(院長)は原則として理事に加えなければならないことになっていますのでその点には留意が必要です」