自宅のある地方から東京の会社までマイカーで通勤しようかと考えているーー。そんなブログ記事をめぐり、「交通費の非課税部分」に関するコメントが寄せらせた。
ブログ投稿者の勤める会社では、通勤に関する自由度が高く、補助も充実しているという。長距離の車通勤をしても補助が見込めるため、片道170キロあまりの通勤路をマイカーで通おうと計画しているそうだ。
この考えに対して、「平均時速60キロで走行したとしても、一日往復6時間かかる」と時間的な負担を気にする声がある一方、税金に関する指摘も寄せられた。会社の通勤手当は、一定額を超えると非課税対象から外れるという指摘だ。
そもそも、会社の通勤手当は非課税になる部分があるのか。その額に上限はあるのか。佐原三枝子税理士に聞いた。
●「通勤手当」は「賃金」として位置づけられている
「まず、通勤手当の性質を確認しましょう。
通勤手当は、業務遂行に直接関連するものでなく、個人的な事情によって発生するものなので、会社の賃金規定によって支給される賃金の一種と位置付けられています。
一方で、実費を弁償する性格を持つ賃金であることから、税法上は非課税の規定が設けられています」
佐原税理士はこのように述べる。交通費がどんなに高額になっても、非課税の扱いなのか。
「交通機関を使って通勤している人なら、1か月の非課税限度額は、合理的な通勤経路を使った場合に必要となる1か月の通勤定期代の額となります。ただし、上限が決まっていて、2016年1月1日から支給されるものについては15万円です。
1か月の通勤費が15万円以上かかるという方に対して、会社が通勤手当を支給するのはかまいませんが、その超える部分に対しては課税されます。
また、新幹線の利用が合理的であれば非課税の対象となりますが、たとえ非課税限度額以下であっても、グリーン料金は課税対象となります」
今回のケースで問題となっている、「マイカー通勤」の場合はどう考えればいいのか。
「マイカーや自転車などで通勤している人は、通勤距離によって非課税限度額が決まっています。片道55キロメートル以上で月3万1600円というのが最高額です。
今回のケースのように、片道170キロメートルを毎日通勤するとなると、最近のガソリンの全国平均単価が119円/L、燃費がいい車で35Km/Lで走るとすると、ガソリン代だけで2万5000円強になります。高速料金なども考えると、非課税通勤費の範囲で収めるのは難しいのではないでしょうか。
交通機関とマイカーをどちらも利用して通勤している人は、それぞれにかかった金額の合計額となりますが、15万円を限度とします」
●「社会保険料・雇用保険料は、通勤手当も含めて算出される」
「注意しておきたいのが社会保険料と雇用保険料です。
税金は通勤手当に対して非課税の規定が設けられていますが、社会保険料と雇用保険料は通勤手当も含めて計算されます。
同じ基本給や手当をもらっていても、通勤手当が高い人のほうが、お給料からこれらの保険料が多く引かれることになります。逆に、給付を受けるときは多くなります。
通勤手当も賃金の一種なのですから、社会保険や雇用保険の取り扱いのほうが原則的ともいえます」
【取材協力税理士】
佐原 三枝子(さはら・みえこ)税理士・M&Aシニアスペシャリスト
兵庫県宝塚市で開業中。工学部やメーカー研究所勤務から会計の世界へ転向した異色の経歴を持つ。「中小企業の成長を一貫してサポートする」ことを事務所理念とし、税務にとどまらず、経営改善支援、事業承継や海外事業展開の支援を手掛けている。
事務所名 : 佐原税理士事務所